第6話 承

 さて。とりあえずさっさと出かけよう。レナちゃんとやらが死ぬのはどうでもいいけど、急ぐに越したことはない。奇跡が起きて助かる可能性も微レ存してるからな。あーちゃんの友達なら死ぬよりは助かった方が良いし。どうせそのまま配信見続けてるだろうからな。わざわざグロ画像を見せたいわけでもなし、結果として死ぬのは仕方ないとしても、俺も頑張りましたアピールはしといた方が良いだろう。


 第3探索者協会まではここから凡そ15分。ダンジョンに入って16層まで15分。俺が到着するまで格上のワンダラー相手に30分間逃げ続ける、か。まあ普通に考えて無理だな。ゴーレムタイプなのが不幸中の幸いだが、それでも絶望的だ。ワンダラーエンカウントは階層内の探索者を皆殺しにする前提のトラップみたいなもんだし。


 どんなに強くて優秀な探索者だろうと、その場に居合わせなければ対処のしようがない。そしてそんな探索者が居る場合は決して起きない。ダンジョンの悪意と殺意を煮詰めたような災厄。それがワンダラーエンカウントだ。違う視点で見れば、そんな状況を突破するような規格外たれと望まれているとも言えるわけだが。その点で言えばレナちゃんとやらは将来有望なのかもな。15歳でC級ダンジョンをソロで潜れるくらいだし。


 よし行くか。顔を洗って多少さっぱりした後、壁に引っ掛けている放浪者の仮面を手に取り、着ける。


「闇の衣・暁闇」


 呟くと同時、どこぞの厨二刀剣士を彷彿とさせる真っ黒なコートが体を包み込む。うーむ、やはりこの恰好をするなら剣があった方が見栄えがいいな。でも使えないのにあっても邪魔だからなぁ。


 さぁ、とっとと片付けて二度寝の時間だ。

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