第5話 起
あっぶねぇ!黒ひげならぬレナちゃん危機一髪ってか?あと5秒遅かったらミンチになったレナちゃんと感動のご対面する所だったぜ。要救助者をギリギリのタイミングで助ける事が出来た俺は、結果オーライと一息ついた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
毎日がホリデーな俺にとって睡眠は立派な娯楽である。好きな時に寝て好きな時に起きる。いつ寝てもいいのだから昼夜の概念などあってないようなもの。となれば当然健全な人たちと生活リズムが合うわけもなく、俺に用事がある=俺の睡眠の邪魔をするという図式が成り立つのである。
電話という発明を、人類の三大害悪発明の一つに数える俺にとって、睡眠を邪魔する着信音に殺意を滲ませるのは仕方のない事であった。とはいえこのスマホの番号を知っているのは極一部であり、着信音で掛けてきた相手を察すると出ないわけにはいかない為、仕方なく通話ボタンを押す。
『早く早く…!お願い出てぇ!…あ、繋がった!おはようれーくん!ごめんねこんな時間に!!でも大事な話があって!!』
『…ぉはようあーちゃん…あーちゃんなら変な電話してこないから良いけどさ…で、こんな時間に何の用?』
『寝てるの起こしちゃった?ごめんね朝早くから!でもでも大事なお話があって!あ、このアドレスの配信今見れるかな?』
『なにこれ…登録10万人記念ダンジョン配信?レナちゃんねる?…なんなのこれ、俺こんなの興味ないんだけど』
『おねがい!ちょっとでいいから見てくれないかな?とにかく大変なの!』
『まあいいけど…うわ、コメントで何も見えないんだけど…なにこれ、ダンジョンでマラソンでもしてんの?』
『違うの!えっとね、最初は普通に配信してたんだけどね。急にでっかいゴーレムが現れて、今逃げてる最中なの!』
『ふーん、ランダムエンカウントにでも遭遇したのか?まあでもPTメンバー居るならどうにかなるんじゃね』
『レナちゃんはソロでダンジョン潜ってるから、仲間はいないんだよぉ!』
『ソロで潜ってるなら仕方なくね?ダンジョン探索は何があっても自己責任、危険を減らしたいならPTを組んで探索しましょうってあーちゃんも学校で習ったでしょ』
『うぅ…そうだけど、そうだけどぉ!レナちゃんは私の友達なんだよぉ』
『…まあ大丈夫じゃない?記念配信か何か知らんけど、自分のランクより上のダンジョン潜ってるわけじゃないでしょ?ソロで潜ってるならそれなりに出来るだろうし、逃げきれると思うけど』
『それが変なの!レナちゃん草原のCランクダンジョンに潜ってたのに、変なゴーレムが出てきたらいきなりお城の中みたいに変化しちゃったの!』
『…まじで?』
『まじで!何かやばい事が起きてるんじゃないかって思って!迷惑かもって思ったけど、れーくんに電話したの!』
『その変なゴーレムが出てきたのはいつ?何時何分?分かる?』
『えっとね…8時半くらいかな?』
『8時半…てことは後50分てとこか。詳しい場所は分かる?流石に圏外だったらどうしようもないよ』
『場所はね、第3探索者協会のCランク草原ダンジョンで、16階層だよ』
『探三C草16ね。急いでも30分かかるな…あーちゃんには悪いけど、レナちゃんだっけ?諦める覚悟はしといてね』
『うぅ…れーくんでも無理なの?』
『俺が間に合うより殺される方が先なんじゃないかな』
『それでも!見てるだけしか出来ないけど…友達がただ死んでいくところを指を咥えて見てるだけは嫌だよぉ…』
『あーちゃんがそれでいいなら別にいいけどさ。レナちゃんだっけ?助かるかどうかは知らないけど現場には今から行くよ』
『ほんと!?ありがとれーくん!今度お礼になんでもしてあげるね!』
『ありがとうはこっちの台詞だよ。それじゃもう行くから電話切るよ』
『うん。ん?れーくんにとっては面倒事押し付けられただけじゃない?』
『あーちゃんが電話してくれなきゃ、こんな美味しいイベントを逃してたって思うと感謝の一つも言わなきゃってね。ワンダラーを狩れる機会なんて中々巡ってこないからさ』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます