第13話 過去の話 2

 翌日、同じ喫茶店に夕方来るように言われ別れた。何をするのか聞いたが、明日のお楽しみと言って答えもしない。言わないと来ないぞと言っても、

「あんたは来るだろう。ここまで聞いて無視はできないから」

と、見透かすようなことを言われた。意地になって行かないという手もあるが、うちの学校のやつがこんな下衆なことをしていることに憤りを感じていて、自らの手で制裁を与えたいという気にはなっている。それ以上に、このガキに興味を持ってしまった。何をやるのかを見てみたいと。


 そして、翌日。

 店を出ると、繁華街から少し奥まった通り、クラブとかライブハウスが集う一角に連れて行かれた。この時間帯では営業はしていないし、準備している人間すら見られない。

「ここで何をする気だ」

「ほら、あすこ見て。人が立っているでしょ。見張りだよ」

よく見ると、見覚えのある男が立っていた。おそらくやめ組だろう。

「で、どうするんだ」

「お兄さん、顔見知りでしょ、中に入れてもらおうよ」

 そう言うと、すたすた歩いて男に近づいた。

 そこは小さな箱のライブハウス。経営不振でほぼ空いてなく、不良のたまり場になっていると聞いたことがある。もちろん俺は言ったことは無いが。

「誰だお前は」

「ここで面白いことやっているんでしょ。中に入れてよ」

「なんだ、このガキは帰れ」

と言って男は殴りかかろうとした。

「乱暴だな」

と言うと、ようやく俺の存在に気が付いたようだ。

「何だ、あんた。あんたの様な人が来るところじゃないだろう。このガキの保護者か」

向こうは俺の事を知っているようだ。まあ、そうだろうが。粋がってこないところは賢明だ。

「なんか、お兄さん、学校の人に呼ばれてここに来たんだよ。僕は荷物持ちさ」

「聞いてないけどな」

「まあ、良いけど。お兄さん帰ろうか。この人怖いし。まあ、僕らには関係ないけど、勝手に帰して怒られるのこの人だし」

「聞いてないけど、あんたなら良いだろう。でも、あんたみたいな優等生がここに来るなんてな。マサキならタダで遊ばしてくれるだろうよ」

「有難う。あと、この通りの奥に怪しいオヤジがいたんだけど大丈夫」

「ああ、分かった」

そう言うとすぐに電話をかけ、切る頃には数人が通りの奥に走って行った。

俺たちはそれをしり目に、階段を下りて、ライブハウスの中に入った。

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