第9話 狩り

 大学に行きながら、闇バイトの応募して、先輩に報告する。そんな日々が数か月ほど経った。俺が応募した仕事は、タタキもあったが、運び屋、オレオレ詐欺やそれに準ずるもの。

 タタキや運び屋は容易に金につながるが、オレオレ詐欺とかは金にならないのではと思い、先輩に聞いてみたが、当然のように教えてもらえなかった。

 俺たちのせいか分からないが、この町での闇バイトの募集は激減した。その分、数件の大がかりな案件が計画された。俺も応募したが、偽装のIDだと見抜かれて、一つの身分証明書とスマホを破棄することになってしまった。可能性として想定されていたので、しっぽを掴まれることは無かったが警戒はされたようだ。結果として、これらの闇バイトにつながる大きな事件が発生した。一つは某国人の誘拐事件。セキュリティの厳しいタワマンにも拘わらず、食品などの輸入会社を営む経営者が誘拐された。この経営者は外国籍で且つ党の幹部の子息であることから、スパイではないかと疑われていたが、ヤクなどの密輸で金稼ぎしているだけだったようだ。もう一軒は、新聞にも出なかったが、闇金強盗。独立系のハングレ組織だが、手広くやって、かなりの現金を持っていたらしい。もちろんこれらは先輩から聞いた話ではあるが。追い詰めたせいでかなりヤバいことまでやり始めた感があるが、やはりこれら一連の動きには黒幕がいるのだろうか。

 そんな中、新聞でとある銀行員による顧客情報漏洩の記事が出ていた。発覚したのではなく、銀行員自ら警察に自首したようだ。彼は脅されて個人情報を漏洩したが、さらに漏洩したことで脅迫を受けたため、警察に出頭して全てを話したとのことだった。これは、昌さんの仕業と直感した。そう考えるとオレオレ詐欺から、どうやって金を生むかも分かった。単純なことだ。リストの出先から取れば良いのだ。今回は個人の動きであったが、組織的にリストを漏洩しているところもあるだろう。それらを喰い物にすればそれなりの金になるだろう。答え合わせに先輩のところに行くことにした。

 いつもの喫茶店で会うことになった。時間よりかなり早く行ったが、先輩は先にきて、クリームソーダーを飲んでいた。クリームソーダーを飲むには寒い季節になっていると思うのだが。

「すいません、お待たせしました」

「ああ、お前が来る前にゆっくり飲みたかったからな。逆に早すぎるくらいだ」

「すいません」

「そう謝ることは無い。で何の用だ」

 俺は、新聞記事の話をして、推論したことを語った。

「お!バカ、やるじゃないか。よく分かったな」

 珍しく褒めて貰えた。そして、現状、闇バイトの募集が減って、容易に採用されない現状、でかい案件が出てきていると言うことは、黒幕がいればこの町を去る前の大仕事ではないかと言ってみた。

「そうだな。そろそろ狩りのタイミングだ。お前のおかげで狐の巣穴も押さえている。小汚い狐を退治するぞ」

 何故か、俺も参加することになっているらしい。

「明後日、正午にここで待ち合わせだ。昼めし食ったら狩りの開始だ」

 急な展開だが、ここまで来たらしょうがない。というより、俺もこの結末を見なくてはならないような気がする。

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