第7話 笑顔

 直観は正しかった。これだけで終わるはずも無かった。

 映像を見終えると、分厚い封筒を渡された。中には札束。少なくとも三十万円は入ってそうだ。

「こんなに貰っていいですか」

「まあ、予定より実入りが良かったからな。ボランティアの人のおかげで出費も少なかったし」

「良いのですか、あの人たちただ働きさせて」

「それは俺の知ったことではない。まあ、現金以外でもかなりの金になったし、あいつらの情報でかなり金を引っ張ってこれるだろう」

 少なくとも犯罪にかかわった脅迫、下手すれば傘下の兵隊としてこき使われるだろう。主犯は御曹司だから会社からも金引っ張ってくる絵も描いているかも、とそんなことを匂わせるような言いっぷりだ。

 助けて貰った恩はあるが、やることが危険すぎる。早々に手を引こうとお礼を言って立ち去ろうとすると、

「スマホまだ持っているよな」

「あ、すいません返します」

「いいよ、まだ使えるだろう。それでこういう関係のサイトにアクセスして闇バイトに応募してきて」

「え、」

「まあ、前のマイナンバーカード使えば良いが、反応が悪くなればこれを使え」

と新しい身分証明書も渡された。

「そんなに頑張る必要も無いぞ、週に2、3件くらい応募で良いよ。一件2万かな」

「いや」

「2万じゃ不満か?」

「いえ、多すぎるくらいです。ですが、ちょっと」

「大丈夫だ。この後にも大きい仕事もあるからな。つまんない仕事だが、しばらく馬鹿大学留年しない様に勉強しながら、暇な時間でやってくれれば良いよ」

うーん、多分分かってて言ってるんだろうな。拒否権は無いしか。

「分かりました、内容は今回と同じタタキ系が良いですか」

「いや、運びや受け子とかでも良いぞ、なるべくバラエティに富んだ仕事を選んできて」

 意図は分からないが、やることは分かった。

「応募出来たら連絡します」

「ああ、連絡は前と一緒な」

 某国を経由したデータ通信方法だ。

「楽しいだろう」

 笑顔で問いかける先輩に、俺は、どんな顔で返事したのだろうか。



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