第6話 暗闇

 どうして、こんなことになったのだろう。空き巣に入られて稼ぎは全部奪われ、仲間たちは取り分が無いと知ると、いきなり殴りかかって財布から金を抜いて去って行った。今までさんざん面倒を見てやったのにふざけた奴らだ。いきなりの事に唖然としていたが、段々と怒りが込みあがり、勢いで部屋を出た瞬間に黒ずくめの男達に拉致されここにいる。これまで上手く行っていたのに。なんでこんなことになったんだ。切っ掛けは、いつも行っていたドラッグバーだった。その日は一人で軽くキメていたら、黒に包まれた長身の男が隣に座り話しかけてきた。鬱陶しいがダウナー系の倦怠感で断るのも面倒だったので話を聞くことにした。始めは怪しいバイトの話だった。ヤバい事をしてまでは金に困ってないから断ろうとしたら、ヤバいことをするのでは無く、ヤバいことをさせる側だとやつは言った。実家からの仕送りは仲間としょっちゅうバカ騒ぎできるほどはあったが、父親からは学業不振を理由に仕送りの額を減らすと言われていて、手軽に稼げる上にバカを騙すと言う自尊心を満たす行為に興味を惹かれた。その後はタマネギのチャットサイトを紹介され、チャット内でやり方を教わった。ギャラ、男へのギャラか。それは成功報酬で利益の1割。後払いの上、情報屋への支払いや買取屋とのつなぎもしてくれた。レクチャーを受けた通りに情報屋からターゲットの店を選び、計画を立て、闇バイトのサイトから強盗の実行犯を集め、実行させるだけ。取り巻きにブツを回収させて、買取屋に運ぶ。商品は現金取引。あとは仮想通貨で報酬を払えば、次のネタが手に入る。ただそれだけの単純な仕事だったのに。

 

 例の喫茶店に呼び出されたと思うと、ノートパソコンの画面をみせられ、

「面白いだろう?」

 と聞かれた。

「なんでタタキの首謀者拉致してんですか?」

「おいおい物騒なことを言うなよ。お友達に悪い子の住所教えただけだぞ。で、そいつから動画が送られてきただけ」

「え、ああ、あの日の追跡部隊は昌さんところの人たちだったんですか」

「そうそう、ボランティアで集めてくれてな。で、代りに倉庫の中身とこいつの身柄は好き勝手して良いとな。あと、鍵の110番もお願いしたけど」

「どうなるんですか、こいつは?」

 画面に指さして聞いてみた。

「まあ、それなりの大学行っているから、その肩書使っていろいろ悪ささせるんじゃないかな。それで絞りつくしたら親から金を引っ張るだろうな、結構な金持ちだから。あとはこいつに悪さやらせた黒幕も探させる。昌も素人がこの界隈に土足で踏み入るのを怒ってるからな」

 そういうと、ノートパソコンのマイクをオンにして

「黒服の男のいそうな場所と特徴を聞いてみて」

 と問いかけた。

「これライブですか」

「そうだ、なんなら殴る場所リクエストしようか?」

「いや、いいですよ」

 そういっている間に尋問は進んでいた。

「あったのは一度だけ。あとはチャットとかでしか連絡を取ってない。一度しかあってないから顔も良く覚えてないが、長身で長髪、細目で目つきが鋭かったくらい。そうだ、後左手の小指が変な方向に曲がっていて、この指はもう動かないとか言っていた」

 対した情報は無いなと思ったが、先輩の顔に不気味な笑顔が浮かんでいた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る