第3話 救世主

 突然、女がこちらに向かって声をかけてきた。


 ――助けてほしいかだって? 


 俺は気を取り戻した。

 そういえば、この姿になってから初めて普通の人間に会ったな。


「そこにいると危ないわよ! 後ろの荷台に乗って!」


 女が〝異形の者たち〟に襲われている俺に助け舟を差し出す。

 てか、あいつ俺の姿を見てなんとも思わないのか? なんで俺のことは撃たないんだ? 

 女があまりにも自然に話しかけてくるので、一瞬疑心暗鬼になる。


 ――そもそも、あいつ何者なんだ?


 と、色々考えている間にも、〝異形の者たち〟が津波の如く押し寄せてくる。

 どうする? 他の〈CSF〉のみんなを見つけたいが、このままだとキリがないし、『クルシュット』まで辿り着けるかどうか分からない状況だ。ここは一旦退いた方がいいのかもしれない――。

 足元の動かなくなってしまったベクターに視線を落とす。


「すまない……ベクター……」


 意を決した俺は、軍用トラックに向かって走った。

 あっという間に俺が軍用トラックの近くに来たことで、その速さに女は少し驚いた様子である。近くで見ると、女は吸い込まれそうなほど鮮やかな琥珀色こはくいろの目と綺麗な顔立ちが、冷静沈着な印象を与える。運転席の方には、女と同じ髪色でツンツン頭の男が乗っていた。男も琥珀色の目で、鋭い目つきが熱血漢な雰囲気を出している。二人とも二十代後半から三十代前半くらいといったところで、おそらくシネスタ人だろう。


「いいのか? 乗せてもらうぞ」


 俺は二人に念のため確認する。


「ええ、早く乗って」


 少しうわずった声で、女が答えた。


「あんたら、俺を見てなんとも思わないのか?」


 どうも違和感が拭えなかった俺は、さらにいてみた。


「話は後よ。急いで!」


 そう言われて、状況も状況なだけに、俺は慌てて荷台の上に飛び乗った。荷台には何かの物資が積まれている。もともとゴツいものを載せる軍用トラックの荷台なだけあって、今の俺が乗ってもなんともないようだ。

 俺が荷台に乗ると、軍用トラックは急発進した。

 男の運転はなかなかのもので、〝異形の者たち〟をうまくかわしながら、時には軍用トラックでき倒していく。女も的確に〝異形の者たち〟をライフルで撃ち、軍用トラックに近づけないようにする。俺も身を乗り出し、近づいてきた〝異形の者たち〟をぶん殴ったりして引きがしていった。気付いた時には、敷地を抜けて検問所を突破し、軍事基地を後にしていた。


「みんな……すまない……どうか無事でいてくれ」


 遠ざかる『クルシュット』の方を見ながら、俺は一人呟いた。

 そして、敬礼をしながらベクターに哀悼の意をささげる。

 俺たち〈CSF〉でハラスを暗殺し、独裁政権を終わらせる、というはずであった任務は、こうして思いもよらぬ形で幕を下ろしたのであった。


 軍用トラックが軍事基地から先に広がる街の中を走っていく。驚くべきことに、街の中にも〝異形の者たち〟の姿があった。見た目は軍事基地にいた奴らと同じような感じである。しかも、見かけるのは〝異形の者たち〟ばかりで、普通の人間が全然見当たらない。シネスタの経済発展の象徴とも呼べるような街は荒れ果て、閑散としており、所々緑化していた。


――どうなってやがるんだ? 


 二人は何か今の状況について知っているのか? それに、この軍用トラックはどこへ向かっているんだ?


「おい、ちょっといいか?」


 俺は運転席と荷台の間のスモークガラスをコンコンと叩いた。


「何?」


 すると、女が少し開けたガラス越しに答える。


「あんたらどこへ向かっているんだ?」


 俺はすかさずたずねた。


「軍事基地から北の方にある、私たちのコミュニティよ。あなたをそこに連れてってあげるわ」

「コミュニティだぁ?」

「そうよ。私たちみたいな生存者が集まって作り上げた居住地があるの」


 生存者? 作り上げた居住地? ますますわけが分からなくなる。


「てかよ、ここら一帯で何が起きてるんだ? この化物どもは何なんだよ?」

「……今さら何を言ってるの? というか、こっちもちょうど聞きたかったんだけど、あなた一体何なの? クワイドとは違うみたいね。顔は獰猛な獣のようだけど、まるで人間みたい。私たち、基地の軍需物資を狙ってあそこに潜入してたの。そしたらあなたを見かけたのよ。なんだかクワイドと戦っている時に色々言葉をしゃべっているみたいだったから、意思疎通ができるのかと思ってちょっと声をかけてみたのよ。クワイドは言葉をしゃべったりなんかしないわ」

「クワイド?」

「あの化物のことよ。私たちの間ではそう呼んでいる。あいつらは人間を襲い、殺してみつくの。噛みつかれたその人間の死体は、体のどこかが変異して、すぐにクワイドとして活動し始めるのよ。まるで、感染して広がっていくウィルスみたいな奴らだわ」


――なんだって……?


「今分かっていることは、変異していない部分、つまり人間に近い状態に留まっている部分があいつらの弱点よ。特に頭部がね。そこを攻撃し続ければ、なんとか殺せるわ。数日てば、あいつらの死体も灰みたいになるから、処分にはそれほど困らない。てか、あなた本当に何も知らないの?」

「……ああ。今日目が覚めたら、いつの間にか自分の姿がこんな風になってて、外に出たらそのクワイドとやらがウジャウジャいてよ」

「『今日目が覚めたら』って、クワイドが現れ始めてからもうだいぶ経つわよ。あなた今まで何してたの?」


 もうだいぶ経ってる? どういうことだ?


「ちょっと待て、あいつらが現れてだいぶ経ってるって、どれくらいだよ?」

「えっ? そうね……もう、だいたい八年くらいにはなるわよ」


 ――は!? 八年!?


「おい、嘘だろ!? じゃあ、俺はその間ずっと意識を失ってたってことか?」


 そんなことってありうるのか……?

 女から告げられた衝撃の事実に俺が動揺していると、


「なぁ、あんたもう一度聞くけど一体何なんだよ? 目が覚めたら姿がそんな風になってたって、もともとは人間だったってことか?」


 今度は男が俺に訊ねてきた。


「ああ、そうだよ。俺は……」


 カーミア特殊部隊〈CSF〉の隊長アルフという名で、シネスタの独裁者ハラスを暗殺する任務であそこにいた――と言いたいのだが、ちょっと待てよ。

 この二人シネスタ人だよな。二人ともハラスの支持者かもしれない、というよりむしろ作戦前の情報では、今のシネスタ人でハラスの政権に反対するような人間は少ないと聞いていた。しかも、ハラスによるプロパガンダの影響もあって、カーミアは敵国だという認識がシネスタ中に広まっていたようである。

 もしこいつらがハラスの支持者で、カーミアを敵国と見ている奴らだったとしよう。「俺はお前らが支持する独裁者を暗殺しに来たカーミア人だ」なんてことを言おうものなら、こいつらに何されるか分からない。まぁ、今の俺だったらこいつらを軽くひねり潰すことくらい訳無いのだが。

 ただ、今は〈CSF〉のみんなとはぐれてしまって身を寄せる所もないし、周りは化物だらけだ。それに現在のこの状況について、こいつらからもっと情報収集した方がいいのかもしれない。

 とりあえず、コミュニティとやらに連れてってもらうためにも、何か適当なウソでもついておくことにしよう。


「俺の名はアルフ。シネスタ軍の兵士だった。みんなからは名前が噛みやすくて言いづらいってことで、アルフって呼ばれてる」


 我ながら絶妙なウソである。シネスタ人の男の名前は語尾が〝ス〟で終わる。あえて噛みやすいような適当な名前にしておき、愛称として俺の本名アルフで呼ばせようという魂胆だ。シネスタ軍の兵士だということにしておけば、軍事基地にいた理由にもなるだろう。


「ところでお前らよ、クワイドがいるのはここら一帯だけなんだよな? 他の都市の警察や軍に頼んで、あいつらを一匹残らず排除してもらったらどうなんだ?」


 俺が素朴な疑問をぶつけると、女の大きなため息が聞こえた。


「ホントに何も知らないのね。クワイドの脅威はもうシネスタ中どころか、世界中にまで広がってしまったのよ。助けなんてどこからも来やしないわ」


 ――なんだと……? 


 一瞬その言葉の意味が理解できなかった。クワイドの脅威が――世界中にまで広がっている?


「奴らはあの軍事基地から発生したっていう噂らしいんだが、あまりにも突然の出来事だったとはいえ、政府もその事態をなんとか隠そうとしたんだろう。情報を市民に全然発信しなかったから、気付いた時には――あれよあれよという間に街まで侵攻されて、みんな大パニック。初期対応の遅れってやつ? それが国境まで越えてこのザマさ。恐ろしい増殖力だよ」


 男からの補足が入る。

 あの軍事基地から発生した? だとすると――やはり原因は【ニトロ】なのか? そういえば、クワイドの変異した部分、俺の体と似たような特徴があったな。俺も化物になったとはいえ、クワイドにはならなかった。が、ベクターはクワイド化していた。他の【ニトロ】を打った部下たちはどうなったんだろうか……ベクターと同じようにクワイド化して、他の人間たちを襲い、この事態を広めていった……? 


 ――つまり、全ての始まりは俺たち〈CSF〉のせい……?


 考えただけでゾッとする。

 いや、そんなはずはない。――そう信じたい。


「それにしても、アルフ? 変な名前だなぁ。お前の親どういうネーミングセンスだよ。そりゃアルフって呼んだ方がいいわな」


 男が怪訝けげんな声で言う。そして、


「どうしてそんな姿になったのか、本当に分かんないのか? 何かクワイドが出現した理由について知ってるんじゃないのか?」


 動揺する俺に再び質問を投げかけてきた。

 確かにクワイドとは違うが、こいつらにとって今の俺は同じような〝異形の存在〟であることに変わりない。ましてやそいつが言葉をしゃべれるというのなら、この事態について何か知っているのでは? と聞きたくなるのもうなずける。俺に心当たりがあるとすれば【ニトロ】しかない。だが、そのことについて迂闊うかつに話すわけにもいかない。


「そういえば、さっきのネエちゃんの話で少し思い出したんだけどよ、軍事基地で突然あの化物、クワイドに襲われたんだよ。たぶんその後のことは推測だが、襲われて殺された後、クワイドに噛まれたんだ。それでクワイドとして生まれ変わるはずが、俺の場合は運良くこんなイケメンの超マッチョな化物になっちゃったってワケ。たぶん間違いねぇさ」


 ユーモアを交えて言ったつもりだった。が、


「要するに分からないと」


 女が呆れたように言う。


「そういうこった。すまねぇ」


 とりあえず、なんとか適当にごまかすことはできたようだ。


「まぁいいわ。それはともかく、私は〝ネエちゃん〟じゃない。ライアっていうの、よろしくね」

「俺はブラス。よろしくなアルフ」


 女が名乗ると、男もそれに続くかのように名乗った。


「ちなみに俺も別の基地にいた、元シネスタ軍の兵士だぜ。なぁ、あんた所属はどこだったんだ?」


 ブラスがまた俺に質問を投げかける。所属か……どう言おうか……一応俺はカーミアの特殊部隊にいた、ということは事実なわけだしな。


「俺か? こう見えてもラジュラにいたんだぜ」


 と少し自慢げに言ってみる。

 ラジュラ――シネスタの昔の言葉で〝神の使い〟を意味する、ハラス政権下で立ち上げられた、シネスタ軍のエリート中のエリートしかなれない特殊部隊のことである。俺たち〈CSF〉も相当だが、死者が出ることもざらにあるという尋常じゃない訓練を受けている連中だ。実際、俺たちも奴らと相まみえた時は【ニトロ】を注入していた時でさえ、かなりの苦戦を強いられていた。


「マジかよ、すげぇなあんた! ラジュラにいたのか! 道理であれだけの大量のクワイドとも戦えてたわけだ!」


 俺の虚言を聞いたブラスの声が、いつもテレビで見る憧れのヒーローに会った子供のように弾む。


「まぁな」


 またしてもお茶を濁すことには成功したものの、ラジュラと交えた時の苦い記憶が呼び起こされ、俺は顔をしかめた。


「そうなの!? ほら、やっぱり私の提案は間違ってなかったじゃないブラス! 彼は私たちの救世主よ!」

「ああ、そのようだな。大英断だよ、ライア!」


 そんな俺をよそに、何やら突拍子もないことを二人が言い出した。


「どういうことだよ?」


 わけが分からず、俺は二人に問いかける。


「後で説明する。もうすぐ着くわよ」


 ライアとブラスと色々話しているうちに軍用トラックは街の中心を抜け、住宅街のような所にやってきた。

 辺りには立派な庭やプールの付いた邸宅があちこちに建てられており、緑が豊富で、結構良さげな雰囲気である。かつては高級住宅街だったのであろう。

 敷地内の道路を走り始めて少し経つと、何やら木製のゲートのようなものが正面に現れた。


「ちょっとゲートの中に入る前に、あなたのことを門番に説明しないといけなさそうね」


 軍用トラックがゲートの五十メートルほど手前で停まる。

 ゲートはなかなかの大きさで、七メートルくらいの高さはあるだろうか。その上には積み重なるように大量の葉っぱが生い茂っている。さらに、ゲートの左右には隙間なく横いっぱいに同じくらいの高さの丸太が並べられ、丸太のフェンスとなっていた。中の様子はゲートを通らないと分からない。

 ライアとブラスが軍用トラックから降りた。


「ねぇ、そこにいるんでしょう。ちょっと荷台に乗っている彼のことで話があるの」


 ライアがゲートの方に声をかける。ぱっと見た感じでは誰も見当たらない。


「ちょっとそこで待っててね」


 俺に向かって手を広げ、ライアが荷台に乗ったままで待つよう指示する。


「分かった。確かに俺のことはあんたらがこの中の奴に説明しておいてくれないと、中でハチの巣にされかねないからな」


 と、冗談交じりで答えたと同時に、俺は何やら自分の身に迫る危機を察した――だが、油断していたせいで反応が遅れてしまったようだ。鋭い爆発音がしたかと思うと、左胸の辺りにやや強い衝撃が走った。

 音からして、おそらくスナイパーライフルだろう。すぐに撃たれたのだと分かり、俺は一瞬青ざめた。ライアとブラスの表情も固まる。しかし、なぜかそれほど痛みを感じない。撃たれた箇所を見てみると、弾丸が潰れて筋肉に浅く食い込んでいた。

 そして、被弾した箇所の確認をしている俺に、間を置くことなく次の弾丸が浴びせられた。今度は額の所である。

 さすがにヤバイ、と思ったのだが、強いデコピンを食らった程度の衝撃しかなかった。


 ――今の俺は銃の弾丸も通さないほどの体なのか。


 ある意味、驚喜する出来事であった。だがそれどころではない。どうやら俺は完全に敵だと思われているようである。まぁ、無理もないか……。

 一旦俺は荷台の上で身を低くし、両手を前にしてとりあえず顔だけ防いでおいた。


「おい、ちょっと待て! 撃つな!」


 慌てた様子でブラスが叫ぶ。


「やめて、撃たないで! 彼はクワイドじゃないの!」


 ライアも同じように叫んだ。

 すると少し間をおいて、ゲートの方から男の声がした。


「正気かお前ら、なんで化物なんか運んできたんだよ!? クワイドじゃない? じゃ一体何なんだよ、そいつ」


 男の声からは、戸惑いの色が強くにじみ出ている。


「軍事基地でクワイドに襲われていたところを助けたの。どういう理由でこういう姿をしてるのか、本人も分からないみたいだけど、彼は元ラジュラの隊員で、言葉をしゃべれて意思疎通ができるわ。大量のクワイドを相手に戦ってやっつけてたし、きっと私たちの力になってくれるはずよ!」

「元ラジュラの隊員!? ホントに!?」


 もう一人、別の男の声がする。


「アルフっていう変な名前の奴なんだが、言いづらいからアルフって呼んでほしいそうだ。クワイドと戦ってる時の身のこなしを見たぜ。こいつは間違いなくホンモノのラジュラだ!」


 まるで新車を自慢するかのようにブラスが言う。


「……お前らがそう言うなら、とりあえずは信じるぜ」


 ゲートの門番と思われる男たちと一旦話が付いたようである。


「ごめんなさいアルフ。大丈夫?」


 ライアが心配そうに俺の様子を見に来た。撃たれた左胸の方を見てみると、食い込んでいた弾丸がポトリと落ち、傷口があっという間にふさがっていった。

 この体には傷をすぐ再生させる能力もあるのか。そういえば、クワイド化したベクターに引っ掻かれた傷も、いつの間にかなくなっている。額の部分はどうだろうか?


「撃たれた額の所、どうなってる?」


 俺は頭を前に出し、ライアに見てもらった。


すごいわ……なんともないみたいよ」


 この世のものとは思えない、といった表情でライアが俺の額を見つめる。

 そうだ、額の所にはツノが生えていた。かなり丈夫なツノのようである。


「ホントか? そりゃよかった」


 俺は自身の無事を確認したところで、両手を上げて敵意がないことを示しておいた。

 すると、ゲートの大量に生い茂った葉っぱの所から、スナイパーライフルを持ったキツそうな顔立ちのスキンヘッドの男と、迷彩の鉢巻きを頭に巻いた男が現れた。

 なるほど。姿は見えなかったが、大量の葉っぱに隠れて、その隙間から俺を狙って撃っていたのか。


「ねぇ、みんなにも説明したいから、ゲートの前に集めてきて」


 ライアがそう言うと、スキンヘッドの男が首をゲートの中の方へ振って促し、迷彩の鉢巻き男がその場からいなくなった。


「分かった。みんなを呼んでくるまで、ゲートの前にめて待ってろ」

「ありがとう、クレス」


 スキンヘッドの男はクレスというらしい。ライアとブラスは軍用トラックに乗り込み、指示通りにゲートの前で停めた。クレスが俺を不審げに見下ろしている。


「ワリぃな、行く当てがなくてよ。軍事基地でライアとブラスに助けられて、ここに連れてきてもらったんだ」


 警戒心を解いてもらおうと、俺はクレスにここまでの経緯を話してみた。


「本当にしゃべれるんだな」


 クレスは言葉を話す俺に驚いた様子である。


「勘違いするなよ化物。完全にお前を信用したわけじゃないからな。ここで妙なマネしたら、タダじゃおかないからな」


 そしてすぐ俺に釘を刺してきた。こちらとしては弾丸を浴びせてくれたことをびてほしいものだったが、こんな姿で急に現れたら無理もない。それに、ライアとブラスをうまくごまかしてここまで連れてきてもらったのだから、まぁよしとしよう。

 しばらくして、ゲートの奥の方からガヤガヤと多数の人間の話し声が聞こえてきた。


「よし、開けろ」


 クレスがゲートの中に向かって声を上げると、ゲートがゆっくり開き始めた。

 ライアが俺の方を見る。


「ようこそ私たちの町、セラームへ」

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