第2話 初めて
「ふふ、驚いた。私以外に人がいたなんて。」
初めて出会った人。
「君は…誰?」
考えるより先に言葉が出ていた。
「誰…か。難しい質問をするね。私も私のことに関しては詳しくないの。20年間本を読み続けても全くわからない。」
透き通るような声が館内にこだまする。
「20年、君は一人で本を?」
「ええ、この世界ではそれしかないから。
インターネットと呼ばれるものがあればもう少したくさんのことをされたんでしょうけど、いつまで経ってもそれは創れないの。」
「ふっ!そりゃあ作れないでしょ。あんなもの。それなら僕だってエアコンが欲しいよ。
でも、夢物語だ。」
20年本を読んだと言っていたけど嘘じゃないのか?
ありえないでしょ。
少し本を読めば、人がそんなものを作れるわけがないことぐらいわかる。
「あなた、生まれて何年?」
「少なくとも7年は。それまでは毎日、ボーっとしてたからわからない。」
「7年か…。私が気づいたのは5年目だったから、わからなくても不思議じゃないか。」
何を言っているんだ、さっきから。
「君、まだ『創った』こと、ないでしょ。」
彼女はそう尋ねた。
「何いってるか全然…」
「みてて。」
彼女が僕の言葉を遮り、本棚から本を取りだした。
「これかな。エアコンについて書かれた本は。見せてあげるよ。これが『創る』ってこと。」
取り出された一冊の本が輝くと僕が羨望していた機械らしきものが目の前にあった。
「エッ、エアコン?」
「私、いや私たちはね、一冊の本と引き換えにその本に書かれた物を創れるの。まぁそのためには仕組みを完全に理解する必要があるんだけどね。ちなみにそのエアコンは小型の電池式だから。普通のやつより効果は劣るかもしれないけどないよりマシでしょ。」
今起きた現象に驚きが隠せないまま、立ち尽くしていた。
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