第11話 きれいで可愛い

 秋は学校行事が目白押し。


 球技大会、文化祭、修学旅行。


 盛り上がり、活気あふれるこの時期。


 生徒たちはみんな、想いを馳せて、ワクワクしている頃合い。


 けれども、俺は正直、そこまで興味が湧かない。


 今はもう、悠奈はるなさんのことで、頭がいっぱいだから。


「ヘイヘーイ!」


 ダムッ、ダムッ、と弾むバスケボール。


 俺はそれがもう、ずっと、悠奈さんの爆乳に見えて仕方がない。


 いよいよもって、末期症状かもしれない。


柴田しばた!」


 あ、悠奈さんの爆乳が……じゃなくて。


 バシッ、と何とか受け取り、パスを回そうとするけど……


 俺はそのまま、ドリブルで敵陣に切り込む。


 だって、悠奈さんのおっぱい、誰にも渡したくないし。


 ああ、我ながら、キモすぎる。


 そして、俺は悠奈さんのおっぱ……ボールを上手いこと放ち、ゴールを決めた。


「ナイス、柴田ぁ!」


 チームメイトが褒めてくれるけど、いたたまれない。


 本当ならパスを回すべきところを、俺のしょうもない独占欲で……




      ◇




「ただいま~」


 家に帰ると、


「あら、おかえりなさい」


 女神がいた。


 まあ、悠奈さんだけど。


「あ、悠奈さん……今日も家事代行ですか?」


「うん。ちょうどいま、お掃除が終わったところなの」


「じゃあ、一緒におやつでも食べませんか?」


「良いの? 嬉しいわ。それなら、お茶を入れるわね」


「ありがとうございます」


 悠奈さんがお茶を入れてくれる間、俺はお菓子を用意する。


 リビングのテーブルに並べた。


「いっくん、学校の方はどう?」


「ああ、これからイベントが多くて忙しいですね。球技大会、文化祭、修学旅行と」


「そう、楽しそうね」


「でも、その分、悠奈さんと過ごす時間が減りそうで……寂しいです」


「いっくん……」


「ぶっちゃけ、今日も球技大会の練習でバスケしたんですけど、その……ボールがもうずっと……悠奈さんのおっぱいに見えちゃって」


「へっ?」


「悠奈さんのおっぱい、他の誰にも渡したくなくて、パスせずに1人で強引にドリブル突破しちゃいました」


 って、俺は一体、何を言っているんだろうな?


「もう、いっくんってば、変態くんね」


「ごめんなさい……幻滅しましたか?」


「ううん……ちょっと恥ずかしいけど、嬉しいなって」


「本当ですか?」


「だって、それくらい、私のことを想ってくれている証拠だから……」


「悠奈さん……」


 お互いに見つめ合う。


 きれいな悠奈さんの瞳から、スッとまたきれいな唇に目が行く。


 悠奈さんは、どこもかしこも、きれいだ。


 キス、したいなぁ……


 俺がジッと見つめていると、悠奈さんがスッ、と目を閉じる。


 きれいから一転、何てかわいらしい……


 ちゅっ、と唇を重ねる。


 相変わらず、とても柔らかくて、こちらを包み込む母性を感じる。


 いやいや、俺は悠奈さんの彼氏なんだから、そんな甘えてばかりではいけない。


 ここは、男として、きちんとリードしなければ。


 まだ明るい時間だけど、俺は少し大胆に、攻めてみる。


「はッ……んッ……」


 悠奈さんの吐息が乱れる。


 それが俺の興奮度合いを煽る。


 調子に乗った俺は、悠奈さんの大きな胸に軽く触れた。


「あッ……いっくん、これ以上は……」


「……ダメ、ですよね。ごめんなさい」


「……ベッドに行きましょう」


「……へっ?」


「今日は美帆がまた遊んで帰るらしいし、彩乃さんたちも帰りが遅くなるみたいだから……少しだけ、ゆっくり出来るわよ?」


「マ、マジっすか?」


「その代わり、ここでしっかりと発散して……もう、バスケをやっている最中に、集中力を切らさないこと。ケガをしたら、危ないから」


「ですね……じゃあ、俺の部屋に行きますか?」


「……うん」


 悠奈さんは照れたように頷く。


 そのまま、2人して手を繋いで、リビングを後にした。







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