第14話 元カノ、これからかの?

 昨日はフラれた元カノのことを想いしこたまヌいていたのだけど、酔って帰宅した我が家のハイスペ性欲モンスターが疲れ切って帰宅した社畜を食らっていたので萎えました。


 おはよう、今日も冴えない朝です。


「はあああぁ~……」


「うわ、朝からおっも。ハルちゃんのおっぱいに並みに」


 またこのクソ母は……


 ギン!


 うっ、朝だちが今さら……


「ト、トイレ」


「じゃ、あたしは行くわ~」


 最高に陽キャな母はゆるっと出社して行く。


 クソ、マジで人生勝ち組め。


 自分の母親にひどく嫉妬しつつ、俺はトイレで元カノの悠奈はるなさんを想って抜きまくった。




      ◇




「ねぇ、最近の柴田くん、しぼんでない?」


「ちょっと、良いなって思っていたんだけどね~」


「見込み違いか」


 女子ってホント残酷……


「よっ」


「んっ?……って、野中のなか?」


 俺は1組で、こいつは3組。


 クラスが違うのに、どうしてわざわざ……


「元気ないな。さては、女にフラれたか?」


「うぐっ……」


「ハハ、図星かよ」


 この、爽やかな笑顔スマイルで……


「しゃーねえから、オレが慰めてやるよ」


「えっ?」


「今日、お前ん家に行っても良い?」


「野中が、1人で?」


「んっ? 女連れが良いなら、適当に見繕って行くけど?」


「……いや、遠慮しておく」


「だよな~。失恋して、すぐ次の女に行くのも良いけど……ここはあえて、男だけで楽しんだ方がメンタル復活するかもだぜ~?」


「……まあ、一理あるな」


「だろ~? じゃあ、決定な」


「分かった」


 野中はご機嫌な様子で去って行く。


 あいつも、悩みが無さそうでうらやましいなぁ。


「よっ、一平」


 と、またしても、悩みのない陽キャちゃんが……


「……美帆」


「あんた、今日の放課後、ヒマしているでしょ? あたし様の買い物に付き合いなさいよ」


「いや、たった今、予定が入った」


「はぁ? まさか、他の女?」


「ううん、野中が俺の家に来るって」


「の……秀太しゅうたくんが?」


「あっ……悪い」


「いや、別に良いけど……」


 美帆は少し険しい顔になった。


 無理もない、元カレだからな。


 本当は、そんな好きじゃなかった、かりそめの恋だったとしても……


「じゃあ、予約して良い?」


「予約?」


「今度の週末、あたしとデートしなさい」


「デート……」


「何よ、嫌なの?」


「嫌ってことは……」


「じゃあ、決定ね。拒否権はナシだから」


「……強引だな」


 本当に、悠奈さんと大違い……


 ああ、ダメだろ、それは。


「あんたがヘタレなのがいけないんだから」


 美帆がキッと睨んで言う。


 確かに、その通りだな。


「分かったよ」


「よし。プランはあたしが練ってあげるから」


「ほどほどにしてくれよ。俺、元陰キャだからさ」


「今もでしょうが、バーカ」


 最後、美帆は少しだけ、笑ってくれた。




      ◇




「うぃ~、お邪魔しまーす」


 コンビニの買い物袋をひっさげた野中が言う。


「さてと……あれ、柴田」


「何だ?」


彩乃あやのさんは?」


「あやのさん?」


「お前の母ちゃんだろ」


「いや、急に名前呼びとか……」


「で、まだ帰らないのか? この前は、これくらいの時間に会ったんだけど」


「ああ、その日はたまたまだよ。基本、あの人は夜遊びして帰って来るから」


「マジで? じゃあ、もう帰ろうかな」


「はっ? いや、お前……」


「……なーんて、うっそ~」


「どういうことだよ……」


「てか、柴田のカーチャン、めっちゃ美人だけど。父ちゃんはどんな感じ?」


「えっ? まあ、何ていうか……社畜」


「ああ、くたびれたおっさんね。じゃあ、余裕だわwww」


「何が?」


「いや、別に~?」


 野中はプシュッ、と炭酸のボトルを開ける。


「柴田、コップくれ。氷入れてな」


「はいはい」


 案の定、こいつ初めて来る他人ん家でも遠慮がないな。


 まあ、所詮は俺がコイツよりも格下の陰キャだからかもしれないけど……


「……そうだ、野中」


「何だ?」


「こんなこと、聞くのは失礼というか、申し訳ないんだけど……」


「良いよ、言ってみ」


 俺は言われた通り、氷の入ったコップを持って行く。


「美帆と……どんな感じでデートしていた?」


「んッ?」


「いや、その……」


「もしかして、美帆にデートに誘われたか?」


「まあ……そんな感じ」


「へぇ~、あいつは順調というか、ちゃんとブレないんだな」


「えっ?」


「いや、こっちの話だよ」


 笑う野中は、悠々と炭酸ジュースをコップに注ぐ。


「じゃあ、2人の新たな門出を祝って、KPぃ~♪」


「け、けーぴー……陽キャすぎだろ」


「いや、普通だろ」


 野中、悪いやつじゃないけど……


「っしゃ、パーティー開けしちゃうか~♪」


 ぶっちゃけ、親友にはなれそうにない。







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