第13話 陽キャ陰キャ

 学校からの帰り道、今まではワクワクしていた。


 だって、大好きな女性ひとに会えるから。


 けど、もうその楽しみは終わった。


 俺はこれから、何を生きがいにして行けば良いのか……


『辛いこと、ぜんぶ忘れて……これから、2人で幸せになろ? ねっ?』


 ……美帆、か。


 まさか、あいつが俺のことを……好きだったなんて。


 実際問題、俺もあいつのことが……好きだった。


 けれども、今はもう……


「……良い機会なのかな?」


 いくら、お互いに想い合っていても、俺と悠奈はるなさんは、だいぶ歳が離れている。


 しかも、俺は高校生だから。


 もし、2人の関係がバレたら、世間の目は厳しいだろう。


 俺はともかく、悠奈さんがそんな辛い目に遭うなんて……嫌だ。


 だから、別れたのは正解だったのかもしれない。


 そして、同年代の美帆と恋愛をすることが、真っ当な道なんだと思う。


 美帆は性格こそワガママだけど、見た目はとても可愛らしい。


 男子からもモテて、何度か告白されているみたいだし。


 幼なじみとはいえ、俺にはもったいない、女の子。


 そんな彼女が、実は前から俺のことを好きで、付き合いたいだなんて、こんな良い話はないのかもしれない。


 けれども……


「……ただいま」


 この時間、まだ誰もいないけど……


「おかえり」


「えっ、母さん?」


 スーツ姿の母がいた。


 グイ、と缶ビールを煽っている。


「どうしたの? いつも、帰りが遅いのに」


「今日はたまたま、明るい内から宅飲みしたかったの……ぷはっ、サイコ~♪」


「あっ、そうっすか……」


 我が母親はシゴデキの陽キャさんだから。


 はぁ、羨ましい……


「どした? 辛気臭い顔して。酒がまずくなるよ」


「それは悪かったね……」


「てかさ、さっき、美帆ちゃんの……元カレに会ったわ」


「美帆の元カレって……野中のこと?」


「ああ、そうそう。イケメンくんだったわね~」


「ああ、そうだね」


「でも、アレはあんまり大きくなさそうだわ(笑)」


「ちょい、母さん? もう酔いが回っているんじゃないの?」


「いやー、メンゴ、メンゴ。あんたも飲む?」


「バカじゃないの?」


 ぶっちゃけ、ちょっと興味あるし、いっそアルコールで嫌なことぜんぶ忘れたいと思ったけど……何とか理性が踏みとどまる。


「そうだ、1人で飲んでもつまんないし~……ハルちゃんとこ行こうかな」


「えっ……」


「雄二さんは相変わらずの社畜で帰りが遅いから……あんたも来る?」


「いや、俺は……」


「んっ?」


「……遠慮しておく」


「何で? 前まで散々、白井家にお邪魔していたじゃん」


「そうだけど……だから、かな」


「なるほどね~……じゃあ、夕飯はお互いに適当に済ませるこっとで、オーケー?」


「うん、良いよ」


「よーし、今日はマジメなハルちゃんをトコトン飲ませて、丸ハダカにしちゃおうかな~♪」


「なっ……」


 瞬間、俺の脳内で、あられもない姿の悠奈さんが……


 ギンッ!


 やべッ。


「……か、母さん、俺ちょっとトイレに行くから」


「んっ? じゃあ、あたしもう行くから」


「わ、分かった」


「ふんふふ~ん♪」


 悩み知らずの母親は、軽い足取りで家から出て行く。


 一方、俺は急激に服らんだ股間を押さえながら、トイレに入った。







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