第15話 好きすぎる
先日、母さんに付き添ってもらって開設した俺の口座。
ちょっぴり、大人になれた気がして、嬉しかった。
「おっ、おおぉ……」
そして、そこにお金が振り込まれると、なおのこと興奮した。
給料と示されている。
「こんな大金、家の手伝いじゃ絶対にもらえない……やっぱり、バイトってすげえ」
これなら、夏休みが終わっても続けたいくらいだ。
いや、でもそうなると、学校の許可取りが大変だ。
ちなみに、今回はちゃんと、許可をもらった。
俺は家庭が
社会経験を積みたいと言ったら、オーケーしてもらえた。
バイト先が健全なスーパーであり、また近所の母親みたいな存在の人が働いていることもプラスに動いたのだろう。
ただ、後者にかんしては、若干、いやそれなりに、ギルティー路線に入りつつあるけど……
いやいや、俺と悠奈さんの恋人関係(仮)は、この夏限定だから。
そう、だから……
「……あの、これ下さい」
初めてのプレゼントを買った。
母親以外の、女の人に。
美帆にもプレゼントはしたことあるけど。
それは誕生会で義務的だったり、あとはワガママにせがまれるようにして、仕方なく買ってやったりと。
けど、今回は自分の意志で、プレゼントを買っている。
それなりに苦労して得た大切なお金。
きっと、他の同級生たちなら、自分の遊びに使うだろう。
けど、俺は……
ピンポーン。
少し待って、玄関ドアが開く。
「いっくん、いらっしゃい」
「悠奈さん、こんにちは」
「どうぞ、上がって」
「あの……」
「んっ?」
小首をかしげると、結んだ髪が揺れる。
そのいちいちに、俺はドキドキしてしまう。
あと、やっぱり胸デカいし……
ちょっと前かがみになるだけで、こぼれそうに……
って、言っている場合か!
「これ……どうぞ」
俺が渡したのは……
「……これは、日傘?」
「はい、その……この夏は暑さが厳しいから、日避けの意味もそうだけど……」
「うん」
「あとは……男除けもかねて……です」
自分で言っておいて、すごく頬が熱い。
気持ち悪い、独占欲が丸出しじゃないか。
悠奈さんと俺の関係は、この夏限定。
それが解消されれば、悠奈さんは俺なんかよりももっと、素敵なオトナの男と……
「……っ!?」
ふいに、抱き締められた。
巨大な柔らかみに驚くけど。
不思議と、股間に意識は向かなかった。
ただ、胸がトクン、トクンと弾んで……
「……いっくん、好きよ」
「は、悠奈さん……」
俺もです、とその背中に手を回して、抱き締めてやりたい。
けど、俺にはその自信も甲斐性もない。
だから、ただ不格好に、抱き締められるだけ。
結局は、母親みたいな存在と、子供みたいな存在。
それは変わらない。
未来永劫、変わらないのかもしれない。
でも、俺は……
「……ねえ、デートしよっか」
「えっ?」
「お外、暑いけど……ダメ?」
間近で照れたように微笑む悠奈さん。
その頬が、赤く染まっていた。
俺はしばし、見惚れてしまう。
そんなトロけた俺の返事を、悠奈さんは急かすことなく、待ってくれた。
「……行きたいです」
「ありがとう。じゃあ、ちょっとだけ、待ってもらえる? 急いで、支度をするから」
「ど、どうぞ、ごゆっくり」
「いっくんも、暑かったでしょ? しばらく、涼んでちょうだい」
「は、はい。ありがとうございます」
「冷蔵庫のジュース、好きに飲んで。私はちょっと……シャワーを浴びるから」
「シャ、シャワー」
ゴクリ、と息を呑んでしまう。
「いやね、これからまたどうせ、汗をかくのに」
「また、汗を……」
って、何でか知らんけど、股間に血流が……!?
『ああああああああぁん! いっくん、こんな真夏のお外でぇ!』
セミの鳴き声が、彼女の喘ぎ声をかき消して……って、バカ!
俺のエロ助!
「じゃあ、ちょっと待っていてね」
「は、はい……」
慌ただしく風呂場に消えた悠奈さん。
俺はスッとキッチンに入り、冷蔵庫を開く。
キョロキョロと周りを確認してから、思い切り頭を突っ込んだ。
「……
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