第10話 出会い

「ゴブ~ゴブ~」


森の中を軽快に歩く。

低ステータスなのに危なくないかと心配している優しき諸君。

問題ないのであります!!

聖魔法レベル2 強化 でステータスアップを常時発動させているのだ。


ちなみにレベル1は 回復 

この世界での魔法は長々しい呪文などは不要でレベルに応じて発現する効果を

思い浮かべて発音するぐらいで発動する。

「回復」と発音してもいいし、「ヒール」と唱えてもいいしカッコつけて「癒しよ・・」などとつぶやいても同じように発動するのだ。


なので日本人であるオレは単純に「強化」と唱えているのだ。

聖魔法は魔物に有害なので強い日光に当たっているようにチリチリするけどな!


こちらに興味をしめしてくる魔物もいたが遠距離からヒールをかけてやるとイヤそうに体をくねらせて去っていく。

効果はバツグンだ!!  ・・・オレにもな。


川を発見したので川沿いを下流を目指し歩いていく。

少し崖上に街道があるが冒険者に発見されて襲われても困るしな。

川の近くの開けた平野には人の集落や町がある、これ常識。


町から近いところに隠れ住んで上手く道具や食料を手に入れ文化的な生活をするのだ


うん?何か血の匂いがするぞ?

少し川から離れた崖下に壊れた馬車が横転している。

もう少し近づいてみるか。


コボルトが5、6匹ぐらい馬車を囲って襲っているな。

崖から転落したのか馬2頭がうずくまっている。

馬車の前で10歳ぐらいの上品な女の子が棒を振り回して抵抗している。


「ワウワウ!」

「#$%!!」

「キャウン!」


う~ん。やっぱり何を言っているのかよく分からないな・・・確か言語理解などというスキルももらっていたはずだが。


女の子が激しく抵抗しているためコボルトたちは馬を手に入れることにしたようだ。

2頭の馬がとどめをさされ運ばれていった。


コボルトは追い払えたが女の子はお腹から血をながしてその場で倒れている。

なかなか衝撃的な光景だが森の掟は弱肉強食。そんな軽装で一人で森に居た時点で

生存率はかなり低くなるのだ。


「ゴブ」(さて馬車から使えそうなものをもらっていきますか)


だってゴブリンだし。魔物だし。


オレは馬車に近づき物色を始めた。


ふと背後に気配を感じると女の子が立ち上がって棒を振りかぶっている。


「ゴブッ?」


とっさに両腕を強化し棒を受け止めた。

あぶねぇ。まだ生きてらっしゃった。

棒を受け止めはしたが体重差もあり尻もちをついてしまう。

しかし女の子もそれが最後の力だったらしく覆いかぶさるように力なく倒れてきた。

口から溢れた血が顔にかかる。


「ゴブ」(うわっ汚なっ。しかし意識もとんでるしもう瀕死だな)


〈スキル[吸収]により[翻訳]を手に入れました〉


なんですと~!!


ふとスキル[吸収]の条件を思い出した。

[吸収]瀕死の対象を取込むと能力を得る


瀕死の相手が近くに居るという条件自体があまりないし取り込むの条件がどこまでか

分からなくてほぼあきらめていた[吸収]が発動したよ。


「ううっお母様。ごめんなさい・・・私はここまでようです」


言葉が理解できるようになってるし。






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