第49話
『戻ってきた......』
ドラゴニアの景色は、始めに来たときよりも少し空が暗い印象だった。
この間まで小さかった瘴域が、広がっている気がする......。
『みんな、大丈夫かな......』
【ころころころね】『なんか、暗いね』
【ドエロ将校】『結局城がどこにあるかわかんないよな......』
【元冒険者】『瘴気の濃いところじゃね?』
『そうだね。そっちに行ってみるか......』
そう簡単に言いつつも、自分の身体がなんだか重く感じて風邪を引いた時くらいのだるさが肩にのしかかっているみたいで気色が悪かった。
『たしか、あの森の方角......だった気がする』
黒い葉が生い茂る森を進むと、遠くから光るものが走ってきた。
じっと見つめていると、それがこちらに向かって地面に落ちて来た。
『これ、勇者の剣? ちょっとボロボロだけど......』
どうやら、勇者の剣は私の元へ戻ってくる仕様らしい。
私はその剣を取り、背中に帯刀するとさっきまでの身体のイヤな重みが消えて剣だけの重みへと変化した。
『あれ? なんか、身体のだるいのないなった......』
【ジョニー・チップ】『それ、怖くね? 大丈夫?』
【元冒険者】『勇者の剣のおかげかな? 神聖の加護的な?』
『よくわかんないけど、そういうことにしとこ』
森の中を進んでいくと、一つの池があった。その池は淀んで底が見えない。しかも、魚の骨のようなものがぷかぷかと浮かんでる......。気色悪......。
『あんな汚い池見てたら、こっちも気分が悪くなる。ドローンちゃんも、そんなの映さずにさっさと行くよ』
さてと、かなり歩いてきたけどどれくらい城に近づいただろうか。いや、城はこっちの方向かなんてわからないんだけど......。しばらく歩くと、変な違和感を感じた。
『この道、さっきも通ったような......』
【ジョニー・チップ】『まさかな......』
【ころころころね】『か、勘違いでは?』
【元冒険者】『ダンジョンっぽくなってまいりました......』
『あ、これ! さっき見た汚え池! 死んだ魚もいる......。間違いなく迷ってるじゃん......』
【酒バンバスピス】『来た道もどる?』
【ジョニー・チップ】『それ、あまり意味ないのでは?』
【元冒険者】『なしよりのありではある。問題は、スタート位置まで戻れるかというもの。街に戻れなかったらまじで詰み』
『そうよね......。ここは、自分を信じて進む!』
その言葉に反応したのか、勇者の剣が光りだした。
その瞬間、光につられてゾンビのように這いよるドラゴンの姿が見えた。
『なにこの子たち!? 急にどうした!?』
【酒バンバスピス】『ゾンビドラゴン?』
【飛んでええねん】『勇者の剣を奪おうとしている!?』
そのゾンビドラゴンたちは、たしかに私の背中に携えた勇者の剣を取りだそうとしていた。私はそいつらをはねのけ、勇者の剣を取りだしてそのまま横に薙ぎ払った。
『どりゃあああああ!』
「ぐううううう!」
ドラゴンたちは勇者の剣の描く光の軌跡に導かれ、消滅していく。
ただ、その親玉と思われる竜がこちらを恨めしそうにこちらを向いてきた。
「おまエ、なぜ戻っテきた! 勇者の凱旋なら、他所デやってロ!」
『あ、あなたは?』
「オレを、忘れたとハ言わせないゾ! オレは、ネグロニカ! 地獄から舞い戻った冥黒竜ダ! ここで会ったが300年、お前のせいで、オレハ!」
ネグロニカと名乗るゾンビドラゴンは、漆黒の瘴気を体中に滾らせ放出していく。
それに大地が呼応して、骨だけで構成された竜=スカルドラゴンを召喚した。
スカルドラゴンたちは、ネグロニカの指先一つで隊列を組み私へ攻撃してきた。
『そんなもの! 焼き尽くしてくれるわ! フレア・スラッシュ!』
勇者の剣の斬撃が炎を纏ってネグロニカとスカルドラゴンを攻撃した。
スカルドラゴンは、炎で焼却され跡形もなくなるも、ネグロニカは切られて苦しむも私に攻撃を仕掛けていく。
「オレは、死ななイ......。ウオオオオ!!」
『き、気色悪っ! 私が引導を渡すしかないのかっ! サンダー・スラッシュ!!』
斬撃と雷撃が一度にネグロニカへ打ち込まれていく。だが、彼はそれをマトモに食らうもこちらへ向かい、反撃する。
「効かないゾ! オレは、不死身ダ!」
【ジョニー・チップ】『痛々しい』
【元冒険者】『終わらせて、やってくれ......』
『こいつ、どんだけタフなのよ! いい加減、帰りさないよ! 地獄に帰れ!』
「生憎、地獄の切符を失くしてしまってな。どこにも行く場所はないんだよ!」
『そう......。 なら、私が再発行してあげる! インフェルノ・スラッシュ! 十字聖斬!』
ネグロニカの身体を縦に、横に切り裂きその切り傷から炎が立ちこめる。
「うわああああああ!」
『やったか......!?』
ネグロニカの身体が石化し、ボロボロと崩れていく。
そして、彼のアイテムがぽろぽろと地面に落ちていく。
その中の一つに、私は目をやった。
『なにこれ、指輪?』
「それは、冥竜召喚の指輪だ。いつでも、オレを呼び出せる」
『へぇ。って、うわああ!?』
横に目をやると、さっき倒したはずのネグロニカがいた。
彼は少し不思議そうな顔をして私を見つめていた。
いや、不思議なのはこっちだが?
『なんで生きてんのよ!』
「私は不死の冥竜という称号を得た邪龍ダ。無限の再蘇生能力があるので、うかつには死なン。と言うわけで、よろしくナ。ビキニアーマーの少女」
私は左の人差し指に付けてしまったその指輪を外そうとした。だが、それはびくともせずに指から離れない。むしろ、指の皮にひっついて痛い!
『いたたたた!!!』
「やめとけやめとけ。その指輪はそうそう外せない。貴様が聖女であってもな。諦めろ」
『嫌だあああああ!!!! フレイム・スラッシュ!』
「ぎゃああああ! って、やめろ! いきなりなにすんだ!」
『あんたを殺したら、この指輪外れるかなって』
「サイコパスな発想だな。だが無意味だ。魔力の無駄だ」
はああ......。こんなやつ、無視すればよかった......。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます