第40話
地下77階で行われていた地下トーナメント。私は、その配信に困らなそうなイベントに沸き立って参加し、もうこれで4回ほど戦っている。
『なんという快進撃!! またもビキニアーマー選手が瞬殺!! 俺達は今、なにを見せられていたんだ! まったく見えなかったぞ!! とにかくすごい! すごいぞぉ!!』
ま、どれも言うまでもなく勝ちを治めてきたんだけど......。
\6,000【ころころころね】『おつかれー! やっぱ姐さんは強ええ!!』
\5,000【袋】『正直、めっちゃかっこいい』
【酒バンバスピス】『酒のつまみになる』
【ほろほろ】『強いのもそうだけど、動きが、その、えっちです』
\10,000【ビキニアーマーを愛すもの】『こぼれそうなのです! それがビキニの良さ!』
『みんな、スパチャありがとね~。いやー、なんか楽勝? って感じ?』
私は自分でも引くくらい調子に乗っていた。まあ、こんなに快勝が続いていたら多少調子に乗っていいよね? 少しリングの外で休んでいると、アナウンスの声が聞こえた。
【バッジ番号61番、106番の方はリング会場Cへお越しください】
『おっ、また私が呼ばれた。ひっぱりだこじゃん! じゃあ、みんな! また応援よろしくねぇ~』
そう言って私は呼びだされたリングに向かった。それは今までの四角いリングではなく丸い形のリングとなっていた。そのマット上では凛とした女性が、コーナーポストからピンと張られたロープに腕を回して待っていた。
「あなたがビキニアーマーの子?」
『しおりで大丈夫です。対戦よろしくお願いします』
「あたしはレイ。ダンジョン評議会公式探索者の一人『
運営公認の探索者......。βテスターとも呼ばれるけど、こんなところでなにしてるんだろう......。まあ、いいや。最前線で探索してる人と対峙できるなんて中々ないから楽しみ! そう考えていると、闘いのゴングが鳴った。
「来なよ。
相手の余裕が癪に障るけど、私はそのまま飛びかかって近場で魔法を放った。
『ハイドロ・キャノン!!』
この一撃は、近距離であればあるほど威力の増す水の魔法だ。
大概の相手はこれで場外に吹っ飛ぶか、失神する。彼女にも申し訳ないけど、寝てもらうわ!
「......。中々、いい魔法を持ってるね。じゃあ、こっちも楽しもうかな」
そう言うと彼女は、両手から爆破魔法を後ろに連続で放った。その威力で彼女は加速していく。
『な、なにあれっ! ぐはっ!!』
見惚れているのがやっとで、レイが走り去った後の私はいつの間か床に寝転がっていた。
「どう? 私のブースト零は。爆破魔法を小刻みに発動させて加速する。その威力は、自身を音速に近づける。もっと堪能させて、じっくりいたぶってあげる」
『そんなこと、させるわけないでっ ぎゃぁ!!』
「ほら。私の事なんてまるで見えないくせに......」
確かに、どこから攻撃してくるのかまるで読めない......。回避する前に、攻撃が次々と繰り出される......。手も足も出ない!!
『それでも!』
私はボロボロになりながらも魔法の力で一気に高く飛び上がり、彼女がまっすぐこちらに近づくのを見つめた。
『光の速度についてこれるわけがない! ライトニング・ボルテージ!!』
雷が下へ向かい、その攻撃は音速に近いレイを捉え鈍らせた。
「くっ! 身体が、しびれて......」
彼女がリングへ落ちていくその隙に、私はレイに近づくため飛び込みのように頭を地面に向けた。
『珍しく副作用の麻痺が出たみたいね。このまま一気に決める! フレア・インパクト=ナックル!』
炎を纏った拳が、レイの腹部に当たりそのままの落下の勢いでリングのマットにのめり込む。マットはなんとか衝撃を緩和したものの、破けて綿が飛び散っていく。
「がぁっ!? 私が、負け......た......」
『試合終了!! 相手のレイ選手が負けを認めたぁああ~!! よって勝者! ダンジョンビキニアーマー配信無双!!』
司会の言葉で、私は膝から崩れ落ちた。
思ったより苦戦した......。でも、楽しかった!
『ありがとう。いい試合だったわ』
「いい闘いだったわ。でも、あなたに勇者の剣そ抜く資格は永遠に来ない。それだけは、忘れないで......」
『あれれ~? 負け惜しみかな?』
さすがに調子に乗りすぎたかな?
でも、これくらいしないと配信バズらないし......。
【ころころころね】『ぐぬぬ......』
【ビキニアーマーを愛すもの】『このッ!!』
【袋】『その年齢でメスガキはしんどいって』
『なによ! もういいもん! みんななんて知らない! 配信終わる! じゃあまたね!!』
キレたフリをして、私はそのまま配信を停止した。
配信にはみんなの謝罪の言葉が並んでくる。言えたじゃねえか......。
「お疲れ様、姐さん。配信、大変そうだね」
リングから下りて休憩しようとしたら、トーナメントで一緒に参加してたキルトに出会った。彼も勝ち負けを繰り返しつつも勇者の剣の切符へと近づけて行ってるようだった。その身体の汚れ具合でわかる。
「久しぶりね、キルト。順調?」
「......とまでは行きませんが、着実に勇者への道が近づいてます。にしても、さすがですね。連戦連勝だなんて」
「そうかな? ......そうかも」
「でも僕、リング上で姐さんとは戦いたくないです......」
「どうしてよ。負けても終わりってわけじゃないんだしさ? 私はキルトと戦ってみたいよ? 一緒に探索してる仲だしさ」
そういうと、彼はため息をついた。
「そんなに戦いたくないの?」
「いえ、そうではなく......。姐さんはお気楽すぎます。でも、それが勝利につながってるのかも。じゃあ、引き続き僕は運営の動向を探ります」
そう言うと、キルトは去っていった。
そう言えば、この会場に来たのって私たちの変な記憶についての情報を知るためだったっけ。楽しくてつい忘れてた......。でも、ほんとにあるのかな。誰かが記憶を消しただなんて。
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