第39話
そうか......。結局90階でも真相は分からずじまいか。
でも、情報があっただけマシかな。地下77階の地下トーナメント、そこで運営開催のイベントがある。勇者の剣さえ抜ければ、運営と話ができるかもしれない。そうとなれば、善は急げだ。
『帰ろっか......』
「そうですね。......すみません、もっと情報が得られると思ったんですけど」
『いいよ、仕方ないよ。こういう時もある』
【シーランド】『姐さん......』
【ころころころね】『イケメン......ちゅき......』
【袋】『ここまで頑張ってなにもなしかぁ......。残念』
【ジョニー・チップ】『まあ、面白いダンジョン見れたしOKかな?』
私たちはそのまま配信した状態で地下77階に降りていった。
『......にしても、地下77階の配信者同士のトーナメント、ちょっと楽しそうじゃない?』
「そうかもしれませんけど、目的は運営との接触。もとい、ダンジョンの闇を暴くことです! 集中して下さい」
このダンジョンにそんな陰謀めいた闇なんてあるんだろうか。確かに、それは気になるしここまで来たなら答えじゃなくても答えに近いものは欲しい。
ただ、私も配信を観てくれている人たちも正直真相がどうこうというより、この先にどんな結末が待っているのかが気になってる節がある。さて、この旅はどう転ぶのやら......。
そう思いはせていると、エレベーターが目的地に到着した合図が聞こえた。
『やっと地下77階か』
エレベーターから降りた途端、歓声が聞こえ始めた。それは、ダンジョンにいくつも併設してあるリング上で戦う戦士たちに向けてだった。
「うおおおおお!!!」
「やれえ!! お前にいくら賭けてると思ってんだ!」
「勇者候補が聞いて呆れるぜ!!」
『すごい熱気ね』
【袋】『治安悪くて草』
【シーランド】『倫理のかけらもねえ』
【ジョニー・チップ】『ちょっと楽しそう』
私たちはダンジョンに設置されたリングの方へ向かった。
すると、そこに受付の人が立っていた。
「地下77階イベントダンジョン、地下トーナメントへようこそ! ご参加される方ですか?」
『はい。あの、ここの様子って』
「もちろん、配信OKです。配信は魔力の元ですから! それでは、お二人とも探索許可証の提示をお願いいたします。また、こちらの用紙に記入してお待ちください」
受付の人から渡された紙に私たちがそそくさと自分の名前を書いていると、わりとすぐに受付の人が戻って来て探索許可証を返してきた。
「登録が完了しました。
受付の人が、新たに数字の書かれたバッジを渡してきた。
「本大会中は、番号でお呼びしますのでそれまでは待機願います」
『おっけー。じゃ、ちょっと待ちますか。一緒に頑張ろうね』
そう言うと、彼は何も言わず私に背を向けた。
「僕は周りを探索してきます。あと、これは共闘じゃなく競争です。どちらかが勇者の剣に辿りつく。それで恨みっこなしです」
『やっぱりこのイベント楽しみなんじゃん』
「違います。より効率的な手段ですよ。それに、僕たち同士が当たる可能性だってあるし......」
そう言って、キルトはどこかへ去ってしまった。
まあ、追う義理もないし、ここで待つしかないか......。
【バッジ番号55番と61番の方はリングAエリアへお越し下さい】
『61番、私だ......。じゃあ、行ってくるねぇ~』
ドローンのカメラに手を振り、呼ばれたリングの元へと向かった。
すると、そこにはとてつもなく図体のでかい男が立っていた。
「あいつ、50人の探索者を病院送りにした頭蓋砕きのゴーズ・ジョーじゃね?」
「やべーよ。あの嬢ちゃん勝ち目ねえじゃん......。俺、ゴーズに賭けるわ」
外野から対戦相手の悪評が聞こえてくる。
ひどい言われようだな......。
『中々にやばそうなのが出てきたわね......』
リングに上がり、近くで対面するとより彼の図体のデカさが浮き彫りになる。
彼は目を血走らせながら、こちらに荒息を立てる。
「フゥ......フゥ......!フゥ!!」
『な、なによ......』
気味が悪いと思いつつも、闘いのゴングが鳴った。
すると、いきなりゴーズが重そうな巨躯からは考えられない跳躍力を見せてこちらに襲って来た。
『うわっ!?』
【ジョニー・チップ】『こっわ!!』
【ころころころね】『ヤバい奴すぎwww』
なんとか回避したものの、彼が着地したところはヘコみやヒビが入っていった。あんなのマトモに食らったら死ぬじゃない。それに、あの手に持ってるこん棒みたいなの......。あれで人の頭をカチ割ってるっていうの? とにかく、回避しながら遠距離攻撃で攻めていくしかないか......。
『アイヴィ・バインド!』
ゴーズの足元にツタを走らせようとするも、彼はその卓越した身体能力で飛び上がりこん棒をその落下速度で加速させながら振り下ろしてくる。
「フ”ゥ”ッ”!! フ”ゥ”ッ”!!!! フ”ゥ”ッ”」
『ゲッ......。なんか、怒らせちゃった?』
ゴーズの怒りの地団駄にあっけに取られていると、彼はドスドスと走りだしてこん棒を横に振りかぶる。私はそのこん棒を防御魔法で受けきり、近づいた隙に電撃を浴びせる。
『ボルテックス・ショック!!!』
電撃が直にゴーズ・ジョーへ向かい、彼の身体が光で覆われて明滅していく。
魔法を止めると、焼け焦げた彼の肌が露出してそのまま倒れていく。
『大丈夫? リタイアする?』
ゴーズの反応はなかった。それと共に会場から歓声が沸き起こり、私に注目が集まっていった。
『おおっとこれは予想外! 誰もが頭蓋砕きの勝利を予想する中、大穴をついてきた!! 勝者、ダンジョンビキニアーマー配信無双!!』
どこからか、リングの勝敗を見ていた司会が私の勝利を祝って来た。
これで、勇者の剣に一歩近づいたわけね。よし、次も頑張ろっと!
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