第28話
新幹線は、動いたものの名古屋で緊急停止した。
またも運転見合わせとなった。私は仕方なく電車から降りていった。
ここもやはりゾンビがあふれていた。ただ、東京が近くなったからか、スライムやゴブリンと言った弱小モンスターがちらほら見えるようになった。
「ここもひどいわね。新幹線が動けるくらいには、モンスター討伐しないとって感じか......」
新幹線の線路にどうやら大きなオークが寝転がっていて立ち往生しているとのことだそうだ。ただ、それも1体とかじゃなくて10体らしい。どんだけいんだよ。
「まずはオークの討伐かしらね......」
新幹線内で錬成しておいた、背中の弓矢ホルダーにそれぞれ弓と矢を格納してしばらくは短剣と単発魔法で切り抜けていった。
「ゾンビは映り悪いしなぁ......。外に出るより線路に出ていった方がよかったかな......。まあいっか。とりあえずスライム討伐といきますか」
東京の高層ビル街のような名古屋駅を背に、私はスライムやゴブリンを潰していきながらドローンを起動していく。どうせ世界が終わるなら、配信者らしく配信してかっこつけたいからね。
『みんな、大丈夫!? ちゃんと避難してるんでしょうね!』
【酒バンバスピス】『家が一番安全』
【シーランド】『そーでもないゾ。俺はやばくなったからダンジョン運営の避難所から応援してる。早くネクロマンサー倒してくれ』
【袋】『配信してるやつ、頭悪いとか不謹慎とか言われてるけど、配信してる場所=危険な場所って認識が高まるから避難できる。もっと各地域でやってほしい』
【agp@+666e4iai】『あたまわるいだけだろ。わきまえろくず。めいわく』
【ドエロ将軍】が【agp@+666e4iai】を報告しました
【桜川湊】『ナイス』
【ふれあいパンダ】『名古屋駅の新幹線の遅延どうにかしてくれー』
『私も困ってるし、とにかく線路の方へ向かってみるわ。みんなありがとう!』
私は、駅を右手にゴブリンの群れを蹴散らしながらまっすぐ進んでいく。
『ファイア! ファイア! エアロ・カッター!』
ようやく線路が見えたかと思うと、線路上で寝転ぶオークに数人の探索者が苦戦していた。にしても、でけえな。かるく10mくらいはあるんじゃね?
『どんだけ体力バカなんだよ。とりあえず、あの集団に参加してみるか』
私は、一番目につく桜色の肌をしたオークを討伐しようとする探索者集団に混じった。まずはみんなが攻撃している背面じゃなくて正面に回り、ぐっすり眠っている目に標準を合わせて矢を放つ。
『エフェクト・バーン!』
矢じりにエンチャントして、爆発魔法を付与したものを解き放つと矢じりが目じりに刺さったと同時に爆発が起きる。さすがのオークも爆炎で目が覚めてむくりと起き上がる。
『寝坊助なやつね。でも、さすがにダメージかなり積めてるでしょ......』
オークは起き上がったとともに、蓄積されたダメージでふらついてしまう。
かんがえていた通り、体力はかなり削られていそうだ。私は、さらに魔法を打ち出した。
『ブリザード!!』
私の魔法攻撃に合わせて、他の探索者も協力し始めていく。ただ、強力と言っても特に示し合わせたりはしていない。一人一人が自己判断の上で積み重ねられた沈黙の協力プレイだ。素人が入ればフレンドリーファイア間違いなしのすれすれの攻撃だ。
『ラストスパートだ! 一気に畳み込め!! ロック・デスブラスト!!』
地面を踏み鳴らすと、瓦礫が飛び散ってその瓦礫がオークに向かってミサイルのように貫いていく。さらに他の探索者の雷、炎の攻撃がトドメとなりオークは消滅した。ただ、それをまだいくつか繰り返さないといけない。面倒だ。矢を使った最強魔法を使うしかない。全部の魔力使い果たすことになるけど......。
『速攻で終わらせてやる!! 最速爆殺魔法をくらえ!! シューティング・メテオ=スパイラル!!』
全部の魔力を一つの魔法石に集めて、その力を弓を引く力と矢じりに集中させた後一気に放出させる。すると、矢は音を捨てて8体ほどのオークの頭を貫通させていった。破裂音が鳴り響く中、私達は残りのオークへと走り出す。すると、一人の男が先頭を走りだした。そして、その大きな斧を振りかざしてオークの首をもぎ取っていった。
『おー......。すげー......。てか、初めからそれやってよ』
その男の人は、煙の中堂々とこちらへ歩いてきていた。余裕かましてきやがって......。
「それは、お互いさまってやつでは? ダンジョンビキニアーマー配信無双さん」
ヘトヘトになって息を整えているところに、斧の青年が冬なのに冷たいお茶を差し出してきた。顔をあげると、なんと爽やかな青年だろうか。
『あ、ありがとう......。あなたは?』
「あ、オフでは初めてですよね? 俺、いつも配信で見てる【元冒険者】って者です。こんなとこで会えるなんて光栄です!」
『あー。はいはい。知ってる! あなたの情報通ぶりにはかなり助かってるわ。あなた、この辺なの?』
「配信上で、実家バレしたくないんでそこは深くまでは言わないですけど......」
あ、そうだった。私、配信中だった。
『ご、ごめんね。こんな時に配信しちゃって』
「いえいえ。いつも、姐さんの配信には勇気づけられてますから。じゃあ、僕はこれで。道中お気をつけて」
『ありがとう。こっちのことは任せた』
元冒険者くんとの別れの後、線路を降りて駅の方へ戻っていった。その最中、新幹線が徐々に動き出したことを風の噂で聞きつけた。よかった......。私たちの活動が功を奏したみたいで。
『新幹線動いたみたい!! じゃあ、私はまた東京に向かっていきます! 東京に着いたらまた配信するね~。じゃ、またね~!!』
ドローンに手を振り、私は配信を切った。
さて、再び東京を目指しますか......。
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