第27話

 東京ダンジョン復活をアピールするかのように、ダンジョンのモンスターたちが地上で暴れだした。大阪でも、その影響で上空はドラゴンがいるし地上はゾンビがいるわで大混乱。剣と魔法の使用許可をもらったものの、私達だけじゃ到底無理......。


「あんた、探索者やろ! ほんなら、外に出て戦ってくれや!!」


私の他の探索者が、そうでない人に詰められている。見れたもんじゃない。でも、大声だからここでも聞こえるから見たくなくても目はそっちに吸い寄せられる。

それのせいで、私の方にも批判の目が向けられる......。


「あんた、いつもこんな風に危険な遊びしてるんやろ? なあ、もうちょっと頑張ってくれへん?」


「頑張ってって......。どう頑張るっていうのよ」


こんなんじゃ、配信とかそういう次元じゃないな。

ドローンホテルに置きっぱなしだし。一旦、自分の荷物取ってくるか。


「ちょっと、私ら置いてどこ行くん?」


「荷物! 装備整えるの!!」


戦えない人を置いて行くのは申し訳ないけど、それでもあの弓矢を持っていくべきだと私の勘が囁いている。私は、梅田駅の8番入口にあるダンジョンホテルに戻ってきた。自分の荷物をすべて持ってきてチェックアウトを済ませた。キャリーケースを盾のように見立てながら、弓を構えながら戻っていく。矢の数は少ない。慎重に使わないと......。


「ぐああああああ......」


「ゾンビ......。だるいわね」


襲われそうになりながらも、手に持っていた矢でそのままゾンビの頭に突き刺していきながら戦えない人たちをとりあえずダンジョンホテルの方へ移動させていった。

多分、他の場所にバラバラで行かれるより一つにまとまってくれた方が都合がいい。

他の人も示し合わせていないのに、同じことを考えていたのか避難民が続々とホテルに集合していく。私の問題は、どうやって東京に戻るかだ......。少しでいいから東京に戻りたい。土地勘のないところよりかは、きっと戦えるし東京ダンジョンに潜り込めばこのゾンビたちを何とかする方法もわかるかもしれない。


『なんだか、僕たちヒーローみたいですね!』


1人の探索者が私に話しかけてきた。しかも、ドローンを録画状態にして......。

この子、ダンジョンに脳が支配されすぎでは?


「あんた、こんなときに配信なんかしてんの?」


『だって、僕の雄姿見てほしいじゃないですか! それに、みんな楽しんでますよ!? ほら』


探索者の男は、腕に着いた液晶画面に映った配信画面を見せた。

ホントに配信してる。しかも、盛り上がってるし......。自分の街が襲われてんのよ?


【ふらふら】『配信見るのやめられないんだけどw』

【じょー】『あれ? ビキニアーマーの人?』

【江島こおり】『ビキニ姐さん、おつでーす』


「あんたらねぇ......。どうでもいいけど、今のうちに安全なとこに避難しときなさい。いつモンスターに襲われるかわかんないんだから」


コメントに𠮟りつけながら、私は男と別れた。東京へ、戻らなきゃ。

ゾンビを蹴散らしながら私は新幹線を目指した。だが、どの電車も延々運転見合わせだ。


「やっぱ無理なのかな......」


立ち往生していると、またニュースが流れて来た。今度もネクロマンサーの表明みたいだ。


『どうやら、苦戦しているようですね。探索者の皆様。ま、どうせ無駄なこと。皆、滅びる運命。死ぬと決まっているのに、どうして抗う。死に触れる私にはわかる。君たちはただ死を先延ばしにしているだけだ。いや、探索者たちは死に急いでいるのかもしれないな。それもまた、一興だろう。では、君たちに救いの手をやろう! 救いの道は一つ! この惨状から人類を救いたくば、この東京ダンジョンにたどり着き、私を倒してみせろ!! それが、君たちの為すべきことだ! さて、君はダンジョンにたどり着けるか?』


またプツリと消えると、新幹線で戻ろうとしていた探索者であろう人達が一斉に踵を返していった。そして、気でも狂ったかのようにゾンビや他のモンスターを討伐していく。自分が勇者になれると信じて疑っていないようだ。しかも、何人かはその雄姿を見せびらかすようにドローンを飛ばしている。


「こんなことして、意味があるの? でも、どうせ世界が終わるなら......。配信して、自分を好きでいてくれる人と過ごすのもわかるかな......」


私は立ち止まったままでいた。私はなにがしたいのか、どうすれば正解なのかわからないでいた。対抗手段はあるものの、戦い続けられるの? もし、死んだらどうなるの? ......いろいろネガティブな思いが巡り巡ってくる。それでも、自分の中で決めていることがある。


「あいつだけは......。ネクロマンサーだけは私がぶっ潰す!!」


私は、なんとか運転を始めた新幹線に乗りあわせて最速で東京を目指した。

待っていろ、ネクロマンサー!!

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