第25話

 この間のダンジョンの報酬で、錬成魔法が使えるようになった。

ただ、どうやってやればいいんだろう......。ここは、初見配信するしかないな?

私はまた大阪のダンジョンに潜り込んだ。いつものごとく、シャトルから出るとそこは海辺のようだ。というか、これって日本じゃね......? よく知っている高層マンションはいつになく小さいし、東京タワーはデカいけどいつもよりこじんまりしている。もしかしなくても私、デカくなってる?


「なんか、ジオラマの世界に来たみたいね......」


足元の車や民家を気にしながら歩くと、対照的にお構いなくドシドシとあるくものが見えた。黒い表皮に二足歩行の爬虫類のようなみためのモンスターがそこにいた。多分、怪獣って言われる部類のやつだ。


「あれって、名前とかわかんないっけ?」


そう言えば錬成魔法で、モンスターが落とすアイテムだとか個体名称を判別できるって聞いたことあるような気がする。いっちょやってみるか!


「ステータス・オープン!」


目の前の怪獣を指さすと、右手の大きな魔法石が光りだした。瞬間、自分の脳内に情報が入ってきた。怪獣の名前は、ザドン。体長は40mってことは、体格差は無さそうね。ドロップアイテムは大きな鈎爪、大きな角、排熱ヒレ......。排熱ヒレってなに? まあいいや、こいつ狩ってみるか!!


「先手必勝! サンダー・クラッシュ!」


電撃が走り、ザドンの表皮を傷つけていく。ザドンは、悲鳴を上げてこちらに気付き始めた。ザドンはのしのしとこちらに近づき、そのするどい鈎爪でこちらへ殴りかかろうとする。だけど、私は華麗にバク転を決めて回避した。すると、ザドンは急に口を開き始めた。その口の中に炎のようなものが見える。もしかして......。


「やべぇ!!」


ザドンの口から炎が舞い上がり、そこからどんどんと火力をあげていき体中から常軌を発しながら一本の光線へと練り上げていった。なんとかよけきったものの、光線は海面を蒸発させ、着弾とともに大きな水柱をあげていった。


「まじかよ......。他のモンスターよりやべえじゃん!! 待てよ、相手が炎系の攻撃を使ってくるとしたら、きっと表皮は耐熱、排熱用に分厚い。炎系魔法も、斬撃も効かないでしょうね。だとしたら、氷結魔法に弱い?」


ザドンは、こちらを敵とみなしたのか獲物を狙う目でこちらにしっぽを振りかざしてきた。私はそれを両手で受け止めそのまま氷結魔法を打ち込む。


「フローズン・クワイエット。 これで、動きを鈍らせる......」


しっぽから足の先まで、凍り付きザドンは動きを鈍らせた。さらに、ザドンはさっきより元気がなくなっている気がする。やっぱり寒いのに弱いんだ、コイツ。


「内部から凍らせてやる!! フローズン・クワイエット=インパクト!!」


ザドンの口元へ向かい、私はその口内に腕を突っ込んでザドンの内部を凍らせていった。その影響か、ザドンの表皮は凍り付いていった。さらに魔力を高めて、私は一気に放出。それにより、氷がザドン内部からつらら状に貫通していく。見事、ザドンは消失しアイテムがドロップしてきた。爪が3つに角が1つか......。まあまあかな。


「豊作、豊作っと」


ドロップアイテムを回収しニヤニヤしていると、また大きな影が私を覆った。空を見上げると、ドラゴンのようなものが東京上空を悠々と旋回していた。そして、東京タワーをぶち壊しながらドランゴンが降り立った。そのドラゴンは銀色の鱗を持った身体と、三つ首を有していた。


「ちょっと面白そうじゃん......」


私はすぐにドローンを配備して、配信準備を始める。銀色のドラゴン、錬成魔法の情報によるとトライゴンというらしいが、その怪獣は私の頭に向かって頭の一つを伸ばしてきた。


「そのまま来い! 返り討ちにしてやる!」


トライゴンの伸ばしてきた頭を私は両手でつかみ、そのまま引っ張って喉元に肘打ちをしてみせた。すると、トライゴンはひるんで3つの頭を揺らして後ずさりをする。


【袋】『もう始まってる??』

【酒バンバスピス】『なにがどうなってんの?』

【ドエロ将軍】『てか、街並み小さくね?』

【シーランド】『一体何が起きてるんだ』


『お疲れ~。今、怪獣倒してるとこ! ちょっと待ってて! エアロ・カッター=ストーム!!』


台風のような風が吹き荒れ、その威力は羽ばたいて宙に浮こうとするトライゴンをも巻き込み、その羽を傷つけていった。


『やったぜ! そのまま倒れてろ! アクア・スラッシュ!!』


右手にかなり大きな円盤状の水の膜を高速回転させて、そのまま円盤状を保ったまま発射させた。それは円盤ノコギリのようにトライゴンの頭をすべて落としていった。見事、トライゴンを撃破して、アイテムをゲットできた。


『ごめんね~。お待たせ。こんダンジョ~ン。ダンジョンビキニアーマー配信無双だよ。今日は、錬成魔法が使えるようになったので、みんなと楽しく作って遊んでいきたいと思いまーす!!』


【シーランド】『待ってました!』

【ぽっぽ】『おっおっおっ!?』

【袋】『楽しみ!!』


『とりあえず、今持ってるアイテムはこちらになりまーす。三つ首怪獣ちゃんの骨が10本と、銀の鱗5枚、ドラゴンのむね肉3枚。それと、その子の前に倒しておいたトカゲ怪獣の爪と角でーす。じゃあ、早速錬成魔法使ってみるね! クラフト!』


呪文を唱えると、素材からどんなものが作れるかが見れる。あと、足らない素材を教えてくれる。教えてもらうまでもなく便利な魔法じゃない......。


『うお、こういう風に見れるんだ。なんか、みんなに教えてもらいながらやろっかなって思ってたのに。ま、いっか! とりあえず、一個作れそうなのあるな』


素材同士を選択し、私はドローンのカメラの前で合成してみせた。すると、数個の素材は一つのアイテムとなった。それは、弓だった。


『大神龍の弓ゲット~! まだベースだけだけどどう? かっこいいでしょ!?』


¥40,000【元冒険者】『大神龍の弓というと、冒険者でも有数しか持ってないチートアイテム【三種の神器】の一つ。これを簡単に錬成してしまうとは。姐さん、あんたはやっぱすげーよ。』


¥3,000【シーランド】『あの怪獣からドロップしたアイテム、かなり有能素材では?』


【倉宮祝詞】『けど、矢も作らないと意味なくね?』


『多分、矢も作れそう! ちょっと待ってて。少し木切ってくる!!』


私は、ミニチュアな日本を横断して木をなぎ倒していった。異界でも、自分の知ってる街並みが自分の一挙手一投足で潰れていく様は寂しくもあり、爽快だ。少し昂りながら私はかなりの木材を集めた。あとは銀の鱗と組み合わせたら出来上がりだ。


『お、矢できた! でも5本じゃなぁ。あと、何体か出てこないかな......』


少し残念がっていると、今度は蝶型の巨大な怪獣が現れた。お、糸のドロップアイテムが出てきそうな虫型じゃない。おし、あいつ討伐するか!!


『あの子の名前、パピオーネっていうの? めっちゃ可愛いじゃん』


【袋】『気を付けろよ~』

【酒バンバスピス】『いけいけ~』


『よっしゃ! 赤スパもあるところだし! 魔法全振りで行くぜ! ファイア・クラッシュ!!』


炎の柱がパピオーネにダメージを与えていく。今までの怪獣とは相まって、すごく弱く炎の攻撃をずっと浴びせまくっただけで一瞬で素材を落としてきた。アイテムは、毒鱗粉と糸袋が一つ。糸袋があれば、糸を生成できるな。すぐに糸を作ってやっと弓と矢が完成した。


『やったぜ!! これからは、弓矢も使ってダンジョンできるぜ!!』



私は高らかに掲げて、配信を終わらせた。少し短いが、みんなも大満足のようだし今日は帰ろう。最近ダンジョンに潜りすぎたし、明日はちょっと大阪観光でもしようかな......。なんてね。

私は気分上々でダンジョンを後にした。





















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