第6話
――タッタッタッタ
軽快な足音を立てて現れたのは、白地に黒の縞のある…サバトラ柄の猫だった。
いや、坊太郎から見れば少し大きい程度の猫に見えるが、10cmほどの体躯しかない小人たちにとってみれば、頭だけで自らの背丈ほどもある文字通り
どうやら、小人たちにじゃれついて遊ぼうとしているようだが、遊ばれる側はたまったものではない。へたりこんでいる小人に前足を伸ばそうとしたところで、坊太郎は思わず「こら!」と声を上げてしまった。
その声に、初めて存在に気づいたのか、サバトラ猫が坊太郎を見る。
見た瞬間、そのしっぽはブラシのように膨らみ、座った坊太郎の頭をはるかに超えるジャンプをして、サバトラ猫は飛び退った。
後ろに細長いものをそっと置いて猫を驚かす、所謂“きゅうりドッキリ”の成功を思わせる跳躍だ。ちなみに坊太郎は猫が可哀想なので、
着地をした後は身体を弓のように山なりに曲げ、斜めに坊太郎を見据えている。
瞳孔は開いて黒目がちになり、口からは「シャー!」と威嚇する声も出しているが、下がった髭やイカ耳がおびえや不安を隠しきれていない。
「お、おまえはだれだ!どこから来た!」
キョロキョロと声の主を探すが、それらしき人物は見当たらない。するとまた、声がどこからが聞こえてくる。
「おいおまえ、どこを見てる!このタイビョウたるおれさまをバカにするつもりか!」
(…たいびょう、タイビョウ…、大病…大猫かな?)
一生懸命こちらを威嚇している猫を改めて見ると、その上目遣いの瞳に明確な意思と感情が込められていることに気が付いた。
「ひょっとして、今話しかけてるのは君かい?」
「さっきからそう言ってるだろうが!おまえはなんなんだ、おまえのようなヒトは見たことがないぞ。なんでそんなにでかいんだ!!」
坊太郎は驚いた。さすが夢の中だ、猫がしゃべることもあるんだなぁと感心をしたところで、小人がいる時点で今更かと思い直し納得する。
(それにしてもこのサバトラ猫、どこかあいつに似ているなぁ)
坊太郎の頭によぎったのは、共に暮らした1匹の猫、タマ。気まぐれ屋でやんちゃな性格だったが、いつの間にかそばに寄ってきて膝の上で丸くなる甘えん坊なところもあった。
愛猫のことを思い出し、坊太郎は慈愛顔になって思い出に浸る。
そんな、自分を無視して泰然自若の大男に我慢の限界が来たのか、自称大猫様は攻撃を仕掛けてきた。
「なめるなよ、くらえ!」
風を切って目に留まらぬ速度で飛びかかり、まともに当たれば小人の家を破壊するほどの威力を秘めた剛腕での一撃!
それはそれは見事な…猫パンチだった。
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