第5話 バレンタイン

2月14日、高校ではバレンタイン一色で、いろんな場所でチョコの交換や、本命チョコをあげたりと、賑わっていた。だけど、そんなものに縁もゆかりもない僕は、誰かに呼び止められる事も、下駄箱にチョコが入ってることもなく、帰路についた。



***



「はっぴ〜ばりぇんたいん〜!」


家に帰ると、なんとひまりちゃんが、板チョコを僕に渡してくれた。

学校では惨敗だっため、貰えるとは思ってなかったので、


「えっ!? ひまりちゃん、僕にチョコくれるの!?」


「うん! ママがあげてって!」


ママ…ママっていう事は、陽葵ちゃんからのチョコでは無い…

出来れば陽葵ちゃんからのチョコが欲しかった…

既製品じゃなく手作りがいいとかいう図々しい輩がたまに居るが、手作りでも既製品でも良いじゃないかと思ってたりはする。

手作りは勿論、心を込めて作ってくれていると思うし、既製品でも自分の事を思って選んでくれた物なら、手作りでも既製品でもそこに差はないと思っている。


「あれ? ひまりちゃん、口元にホイップクリームが付いてるよ?」


陽葵ちゃんの口元にホイップクリームが付いていたのでテイッシュで拭き取ってあげたが、普段陽葵ちゃんが食べるおやつはお煎餅やポテトチップスなど、塩っこい物が好きなので、あまり甘い物、ましてやホイップクリームなんてほとんど食べている所を見た事が無いのだが、その理由はすぐに分かった。


「ひまり〜、イチゴ、ケーキに乗せるんでしょ〜?」


「うん!」


何かを思い出したように、陽葵ちゃんは立ち上がりキッチンに走り去っていった。



***



「ご馳走様でした」


先程、陽葵ちゃんから貰ったチョコでもデザートに食べようと思っていたのだが、


「ちょっと健太君待ってくれる?」


「えっ? あっ、はい」


突然呼び止められ驚いたが、何かあるのだろうと一回立った席にもう一度座る。

すると、出てきたのはイチゴがたっぷりと乗ったチョコケーキだった。


「今日、バレンタインでしょ? 陽葵が健太君に作りたいって言って聞かないから、少し頑張ってみたのよ」


「えっ、そうなの!? ひまりちゃん!」


「うん! にいににあげる」


「陽葵、そういう時、何て言うんだっけ?」


「えっと…」


「はっぴ〜ばれんたいん〜!」

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最近できた義妹に男の影があるんですが、まだ3歳だし結婚の約束とか冗談だよね!? マキマキ @makimaki0318

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