第4話 クリスマス

今日は12月25日、クリスマスだ。

今までの人生ではクリスマスだからといって、何かプレゼントを貰ったり、家族みんなで贅沢な食事をするなどはしてこなかった。

だけど、今年からはそうもいかない。

なんてったって、今年からは陽葵ちゃんがいるからだ。

父さんと自分の2人とは違って、陽葵ちゃんの家はこういうイベント事が大好きらしい。

それを聞いた父さんが仕事の帰りにクリスマスツリーを買って帰ってきたのは正直驚いた。


今はまだ朝の6時、陽葵ちゃんが起きるにはまだ少し早い時間だ。

ベット周りを見るが、いつもと変わらない風景であった。


「いつもと違うクリスマスだったから、少し期待したんだけどな」


高校生になった僕にはサンタさんからのプレゼントは無いらしい。

サンタさんからのプレゼントは諦めて、階段を降りて、リビングに移る。


思っていた通り、陽葵ちゃんはまだ起きておらず、父さんがテレビを見ていた。


「おはよう、健太」


「おはよう、父さん」


「陽葵はまだ起きてこないのか?」


明らかにウキウキしている。早くサンタさんからのプレゼントを受け取って喜ぶ姿が見たいんだろうな。


そして、そこから1時間ほどが経ち、陽葵ちゃんが起きてリビングに降りてきた。

降りてきて早々に向かった先は、クリスマスツリーだった。

クリスマスツリーの下にはプレゼントが置いてあるのだ。


「サンタさんからのプレゼントだ!」


キラキラした目でプレゼントの封を開けると、

その中には…


「ワンワンだ!」


プレゼントの中身は犬のぬいぐるみだった。


「ワンワンだ! ワンワンだー!」


近所のおばさんのワンワンを見てからというものの、ずっとワンワンが欲しいって言っていたので、その願いが叶い、陽葵ちゃんのテンションは最高潮に達していた。


「陽葵ちゃん、そのワンワンに名前つけてあげないとね」


「なまえ?」


「うん、名前。陽葵ちゃんみたいな、可愛い名前付けてあげよ?」


そのワンワンの性別が何かは知らないけど…


「んーっとね、えーっと…」


「ワン!」


「ワ、ワン?」


「うん、このワンワンの名前はワン! ワンワンだからワン!」


「良い名前付けてもらって、ワンも嬉しいね!」


「うん! 陽葵もうれしい!」


僕がクリスマスを楽しみになったのは、この年からだった。




***




「にいに、サンタさんは?」


「ん? にいには大きいから、もうサンタさん来ないんだよ」


犬のワン、で陽葵ちゃんがひとしきり興奮した後、そんな質問が飛んできた。


「にいに、かわいそう…」


どうやら、陽葵ちゃんは僕にサンタさんからのプレゼントが無い事で悲しんでくれたらしい。優しすぎないか!?!?!?


「ひまりー、今から作るんだよね?」


「うん! つくる!」


「え? あれって何? 陽葵ちゃん」


「ダメ! にいに、には、ナイショ!」


どうやら今から何かを作るらしいが、僕には何を作るか教えてくれないらしい。

一体何を作るんだ?

その答え合わせは数時間後だった。




***




「にいに、プレゼント!」


陽葵ちゃんからプレゼントとして渡されたのは…


「これ…ケーキ?」


「うん! クリスマスケーキ!」


僕に内緒で作っていたのはクリスマスケーキだったらしい。


「にいに、サンタさんからのプレゼント無かったから…」


ヤバい、泣きそう。

無いと思っていたプレゼントが陽葵ちゃんから貰えるなんて!

凄く心配してくれてるし…


その後、一緒に食べたクリスマスケーキは生まれてきた中で一番美味しいケーキだった。

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