第2話 犬

「あっ! ワンワン!」


ひまりちゃんとスーパーに買い物に行った帰り道、近所のおばさんが犬を連れて散歩していた。


「おや、可愛らしい子だねぇ、こんにちは」


「こんにちは!」


「ん? うちの犬が気になるのかい? 触ってみる?」


「うん!」


少し怖いのかひまりちゃんがそーっと犬を撫でる。

撫でられた犬は気持ちよさそうに尻尾を振っている、


「すみません。散歩中に」


「いいんだよ、こんな可愛らしい子に撫でられるなんてうちの犬も喜んでるよ」


「ひまりちゃん、知ってる? 犬ってね、尻尾振ってると喜んでるんだよ」


「そうなの?」


ひまりちゃんが犬の尻尾を確認する。


「しっぽふってる! ワンワン喜んでる!」


『あぁ、可愛い…』


日々の疲れが癒やされる。

けど、そろそろ帰らないと買ったものがダメになってしまう。


「そろそろ帰るよ、ひまりちゃん」


「まだワンワンと遊びたい!」


『うーん、そうだよねぇー、できればずっとひまりちゃんが遊んでるのを見ていたいんだけどねぇー、買ったものがダメになっちゃうんだよー』


「買ったものが食べられなくなっちゃうから帰ろう」


「たべられなくなっちゃうのはやだ!」


その一言が聞いたのか、すんなりとおばさんと犬にバイバイをし、帰路についた。


「にいに…」


「ん? どうしたの? ひまりちゃん」


「あのね…ワンワンほしい」


「えっ!?」


ワンワン? ワンワンって犬のことだよな? 流石にそれは僕が決めていいことじゃない。犬にも命があるし、飼うことは一種の経験としては大事かもしれないけど、始まりがあれば終わりがある。ひまりちゃんには泣いてほしくないからなぁ。


「それはにいにが決められないから、帰ってからパパとママに聞いてみようか」


「うん!」


そこから家に着くまでずっと『ワンワン、ワンワン』と言っていた。


『やっぱり、犬を飼うんだったら、チワワとか可愛い犬にするのかな? でも、ひまりちゃんが心配だから守ってくれるような大きな犬でもいいよなー。うーん、悩むなぁ。どんな犬がいいかなー」


ここにまだ飼うことが許可もされてないのに、義妹よりもはしゃぐ高校生が1人。





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