ねこのお葬式
蒲生 竜哉
ねこのお葬式
キキ姉さんが死んじゃった。
具合が悪くて死んじゃった。
キキ姉さんはふとんの上。曜くんがキキ姉さんに毛布をかけた。
去年の秋頃からかなあ、綺麗好きなキキ姉さんがお漏らしをするようになった。
それでもキキ姉さんは元気そう。
きっと虚勢を張っていたんだと思う。
それでもどんどん具合は悪くなって、徐々にキキ姉さんはあどけなくなっていった。
最後の頃はほとんどお散歩もしなかった。
みんなに抱っこされて、ただただおそとを眺めるだけ。
最後の日はママの胸で亡くなった。
なんでか息をしていない。眠っているように見えたけど、きっと心はもう虹の橋を渡っちゃってた。
ぼくはとってもとっても悲しくて、ずっとキキ姉さんの枕元に座ってた。
キキ姉さん、また起きて?
また僕を冒険に連れて行って?
https://kakuyomu.jp/my/news/16817330661196242136
でも願いはキキ姉さんに届かない。
どこが悪かったのかなあ。何がダメだったのかなあ。
キキ姉さんは十三歳。キキ姉さんが死ぬにはまだ早い。
その夜僕はキキ姉さんの横に寝た。だって、誰かが寄り添わないとかわいそうだもん。
翌日、ねこの火葬屋さんがやってきた。
小さなトラック。荷台の上には大きな火葬機が乗っかってる。
キキ姉さんは火葬屋さんのお棺に寝かせられると、火葬機の中に滑り込んで行った。
あっと言うまにキキ姉さんは灰になった。
火葬屋さんがキキ姉さんの灰を小さな骨壷に収めてくれる。
骨壷はママが選んだの。青くて小さな、小さな骨壷。
あんなに毛が綺麗で大きかったのにな。あんなに立派な猫だったのにな。
でも、キキ姉さんのお骨はとってもとっても少なかった。
トラックの前で曜くんが俯いている。
倫ちゃんは涙を流してた。
でもね、悪いことばかりじゃない。
きっとキキ姉さんはおばあさんのところに行ったんだ。
最初にキキ姉さんを引き取ってくれたおばあさん。
おばあさんはキキ姉さんよりも早く天国に行っちゃった。
きっとキキ姉さんは寂しかったんだろう。
キキ姉さんはいつもおばあさんと一緒にご飯を食べたと言っていた。
おばあさんがお刺身を作って、そのおこぼれをもらってたんだって。
食卓も一緒。時間も一緒。おばあさんがお刺身をお皿を盛りつけて、そこから一緒に食べてたんだって。
でもね、今ではねこ用ご飯しかもらえない。お刺身なんてとんでもない。
倫ちゃんや曜くんも食べないご飯はもらえない。
いつもカラカラ。ときどき缶詰。
キキ姉さんはそれでも嬉しそうにしていたけど、きっとおばあさんのほうが好きだったんだろうと思う。
キキ姉さん。
きっともう虹の橋を渡って、きっともう星になっちゃったけど、でもぼくたちを見ていてね。
ぼく、もっと頑張るから。
いつかキキ姉さんみたいなねこになるから。
おばあさんには会えたかな?
きっと今度はずっと一緒。おばあさんにたくさん背中を撫でてもらってね。頭も撫でてもらってね。
だって、もうずっと一緒にいられるんだから。
いつまでも。
ルーちゃんより。
ねこのお葬式 蒲生 竜哉 @tatsuya_gamo
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