51話 ダンジョンへ

 ……おいおい、洞窟の中に草原って。


 しかも、見上げると青空が広がっていた。


 いや、異次元だって言うのは聞いてたけど。


 そのあまりの非現実的な光景に、思わず言葉を失う。


「……はは」


「フフフ……アハハ! 面白い顔!」


「ちょっと、笑いすぎじゃないか?」


「ハァ……ゴメンなさい、つい楽しくて。どうなっているんだ?って顔するから」


「いいよ。別に。確かにそう思ったし」


「お詫びに説明するわ。ここは草原だけど、階によっては洞窟だったり砂漠だったりするのただ、浅い階層は広さは大したことない。下に行くにつれ広さも変わるし、魔物も強くなるから気をつけて」


 言葉通り、異次元ってことか。

 そうなると、多種多様な生き物がいそうだ。

 ……未知なる美味いものもあるかも。


「なるほど。では、どうやって下に?」


「どこかに、下に降りる階段があるわ。そして地下十階に行けるワープゾーンが、入り口付近にあるわ」


「それには、どういう意味があるんだ?」


「仮説だけど……次来るときに始めからやっていたんじゃ、いつまでたっても奥には行けないわ。なので十階まで行けた者は、そこまではショートカットできるようにしたのだと思う」


 なるほど、セーブポイントみたいなものか。


「それの判別は、どうなっているんだ?」


「良い質問ね。原理はわからないけど、一度ボス部屋前のワープゾーンに入った者はダンジョンに登録されるらしいわ」


「つまり、地下十階に行ったことない人が一緒にワープゾーンに入っても、その人はいけないということか」


「そういうことね。ほら、さっさといきましょ。ハクも退屈で寝ちゃってるわ」


 ハクを見ると、草原で寝転がっていた。

 本当に、よく寝る子だこと。


「ハク、起きなさい」


「ワフッ? ……キャン!」


「はいはい、退屈だったな。それじゃ、よろしくお願いします」


 「ええ、任せてちょうだい。それじゃ……レッツゴー!」


「アオーン!」


 そうして、俺達は草原を歩き出すのだった。







 ……といっても、特には何もない。


 出てくる魔物もゴブリンだけなので、ハクの敵ではない。


 ほとんど一撃で仕留めていく。


「ワフッ!」


「よしよし、良いぞ」


「ゴブリン程度なら問題なさそうね。幼体とはいえ、さすがはフェンリルだわ。ちなみに、魔物だろうが魔獣だろうが放置するとダンジョンが吸収するから」


「それじゃ、無理に拾ったり処理しなくて良いってことか」


「ええ、大丈夫よ。無論、人も吸収されるから」


「あぁー……気をつける」


 なるほど、文字通り吸収されるってことだ。

 死体を発見しなくて良いのは助かるけど。


「貴方は心配ないけど、本当に気をつけないといけないわ。ダンジョンで殺し目的や暴行をする者もいるから」


「そうか、証拠が残らないからか」


「ええ、そういうことよ。ギルドカードだけは特殊で、ダンジョンが吸収しないから残るけど。逆にそれがない状態で、ダンジョン内で行方不明になったら怪しいわ」


「誰かが何かしらして、カードを持っていったってことだ」


「そういうこと。だから、結構入るにもチェックがあるのよ。今回は、私がA級で信頼度の高いハンターだからあっさり通されたけどね」


 そんな会話をしていると、下り階段を発見する。

 俺は今のところ、何もしていない。


「……こんなんで良いのか?」


「まあ、一階だから。罠もなければ、宝箱ないし。ただ、そういう油断をしたハンターが調子に乗って死んだりするのよ?」


「うっ……肝に銘じとく。いや、カルラのいう通りだ」


「さあ、行くわよ。ちなみに、地下一階もここと変わらないから。だから、ハクに任せて平気よ」


「わかった。ハク、引き続きお前に任せるぞ?」


「キャン!」


 今のところ難易度が低いが、これはこれでありかもしれない。


 ハクが自尊心というか、自分にも出来るだって思える。


 よし……出来る限り、ハクに任せるようにするか。


 やれやれ、子育ては大変だ。

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