43話 アリアさんと散歩

その後、ハクのおかげで機嫌?を直したアリアさんと散歩をすることに。


これもハクがアリアさん抱っこされてご機嫌をとったからである。


……決して羨ましいなどと思ってはいない。


「それで、ハクがどうしたのだ?」


「なんか、ゴブリン退治に不満があるみたいで」


「ワフッ!」


「なるほど……成長の証というか、物足りないのではないか?」


「ああ……そういうことか」


確かに、ゴブリンでは相手にならない。

だが、慢心するのは良くないし……難しいところだ。


「まあ、カレンに聞けばわかるだろう。それに、丁度良かった。そろそろ、お主のところに行くつもりだったのでな」


「そうなんですか? ……ということは、もしかして見つかりました?」


「ああ、店の候補が見つかった」


「おおっ! ありがとうございます!」


この二週間、その連絡を心待ちにしていた。

アリアさんには、スラム街で飲食店が開けそうな店を探してもらっていた。


「だが、本当にいいのか? お主には借りがあるし、もっと良いところでも……」


「いえ、あそこがいいんです。俺が異世界で料理屋を始めるなら、あそこ以外にはないかと」


「そうか……私としては、正直に言えば助かる」


「それなら、尚更のことですよ。俺はアリアさんに感謝してますから」


俺がこの世界に飛ばされた理由があるのかはわからない。

一つだけ言えるのは、俺はこの世界と人々に救われた。

だったら恩返しをするのが筋ってものだ。


「私は大したことしてないさ。そもそも、先に命を救われたのは私なのだぞ?」


「そういえば、そんなこともありましたね。もう、随分と前のような気がします。あの時はアリアさんが……」


「タツマ? 今、何を思い浮かべたのかな?」


「い、いえ! 何もないです! アイタタッ……」


怖い顔をしたアリアさんに、思い切りほっぺをつねられる。

ただ、あの下着姿を思い出すのは仕方ないかと。

……めちゃくちゃ綺麗だったよなぁ。


「まったく、男というのはどいつもこいつも……タツマだからいいが」


「はは……すみません。ただ、話を振ったのはアリアさんですよ?」


「くっ……それは確かに。それについては謝っておこう」


ほっ、どうやら許されたらしい。

せっかくいい感じなのに、好感度は下げたくないし。


「それで、いつぐらいから出来る感じですかね?」


「今、その準備を進めているところだが……早くて、あと一ヶ月というとこか。スラム街の改善と並行してやっているでな」


「俺に出来ることがあったら言ってくださいね」


「それは心強い……だが、出来る限り私達でやらせてくれ。我々とて、お主に頼ってばかりではいけないからな」


「俺、アリアさんのそういうところ素敵だと思います」


「ふふ、褒めても何も出ないぞ」


そんな会話していると、ハクが静かなことに気づく。

ふと辺りを見回してみると……人々に囲まれてるハクがいた。


「やれやれ、また囲まれてるし」


「ふふ、相変わらずの人気ぶりだな。うちの兵士達の中にもファンがいるくらいだ。そのうち、フアンクラブでも出来るかもしれん」


「えっ? そうなんです?」


「ああ、あれだけ人懐こい魔獣もそうはいない。何より賢くて可愛いからな。それと、あれだけふわふわの毛を持つ魔獣もいないしな」


「あぁー、本来なら極寒の地に住んでるんでしたね」


話に聞くと、この国は俺の住んでいた日本に近いらしい。

春、夏、冬を繰り返すイメージかもしれない。

冬も寒いとは言え、人が死ぬような寒さではないとか。

ただ国によっては、一年を通して極寒だったり暑かったりするとか。

ここに転移したことは、ある意味で運が良かった。


「そうだ。それ故に耐えられるようにふわふわなのだろう。そもそも、伝説の魔獣だしな」


「なるほど……あれが伝説の魔獣ですか」


俺とアリアさんは、住民達に構われているハクを眺める。

そこには、お腹を出して無防備な状態のハクがいた。


「ハクちゃん〜!」


「お腹もふわふわ〜!」


「ハフハフ」


「「………ふふ」」


その情けない姿に、俺達は顔を見合わせて微笑むのだった。









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