第37話 ハク視点
この子達は、僕とおんなじだ。
だれかに捨てられて、お腹が空いて死にそうになってる。
弱くて、誰かの手がなければ死んでしまう存在。
それは、生まれ変わる前の僕の姿だった。
会ったばかりだけど、他人事とは思えなくて放って置けないや。
「あ、あの人、本当に来るかな?」
「ワフッ!(来るよっ!)」
僕はエルルを励ますように身を寄せる。
僕も当時は不安だった。
拾ってくれたこの人は、帰ってくるのとかと。
また捨てられるんじゃないかって。
でも、お父さんは帰ってきてくれた。
「ほんと? ……ワンちゃんが言うなら信じようかなぁ」
「ワフッ!(ハクっていうよ!)」
「うん! ハクちゃんだねっ!」
すると、小屋にカイル君が戻ってくる。
「妹を見てくれてありがと……とりあえず、他の孤児にも伝えてきた」
「みんななんだって?」
「そんなの信じられない、裏切られるだけだって……」
「ガウッ!(そんなことないよっ! お父さんは約束守るもん!)」
僕を拾った時だって、最後まで一生懸命にお世話してくれた。
自分が稼いだお金で、病院に連れて行ったり。
結局死んでしまったけど、最後にお父さんの腕の中で……だから、僕は幸せだった。
「わ、わかってるよ! でも、わかんないじゃん……お前だって、置いていかれたかもしれないし」
「そ、そうなの?」
「ワフッ!(そんなことない! あとできちんと来るから!)」
「そ、そっか……うん、約束したもんな」
「が、頑張って待つね……」
僕の役目は、お父さんが来るまでこの子達を守ること。
まだまだ弱くて頼りにされなかったけど、今回は初めて任せてくれた。
それが、ものすごく嬉しかった……まだ、何も返せてないから。
「ん? 誰か来たみたい」
「あっ、もうきたのかな!」
「ワフッ!(まずは僕が!)
「待て! すぐに出るんじゃない!」
僕たちの制止も聞かず、エルルが扉を開けて飛び出す!
「きゃっ!?」
「あぁ? ヒック……なんだぁ?」
エルルが体当たりしてしまったのは、パパじゃなかった。
淀んだ目をした男の人だ。
確か、ローレンスとか言ってた気がする。
なんだか表情が違うし、変な匂いがしていた。
「ご、ごめんなさい!」
「よく見れば貴様は獣人……獣人ごときが俺様に何しやがる!」
「いやぁぁぁ!?」
「や、やめろっ!」
男がエルルの髪を引っ張る!
それを見て、カイルが男の足にしがみつく!
「うるせぇ!! 都市のゴミどもが!」
「うわぁぁ!?」
カイル君が吹き飛ばされ、地面を転がる。
……ぼ、僕は何をぼんやりと見ているんだろう。
助けなきゃ……僕が任されたんだから。
「……アオーン!(震えてる場合じゃない!)」
「っ!? う、うるせえな」
その隙にエルルがカイルの元に駆け寄る。
僕は勇気を出して、男の前に立つ。
「ガウッ!(僕が相手になる!)」
「貴様は……あの男の従魔か……あの男のせいで、俺の計画は台無しだ……ひひひ……ちょうどいい、獣人で憂さ晴らしをしようと思っていたが貴様にしよう……ファイアーボール!」
そう言い、男が手をかざすと……火の玉が飛んでくる!
「グルァ!(えいっ!)」
「ほほう? 氷の玉で相殺したか……いいぞ、少しは楽しませてくれ」
すると、次々と火の玉が飛んでくる。
その数は多くて、僕では捌き切れない。
このままだとまずい……。
「ガウッ!(二人とも逃げて! こいつの狙いは僕になった!)」
「で、でも!」
「ハクちゃんが!」
「ガウッ!(良いから! 僕はもう……あの頃の僕じゃない!)」
二人が頷き、その場から走り去る。
これで良いんだ。
僕は二人をパパに頼まれた。
僕は……何も返せてないパパの役に立ちたいんだ!
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