第30話 お互いを知る

 森に抜けて走り、どうにか日が暮れた頃に帰ってきた。


 カルラが持っている時計で確認してくれたが、時刻は夜の七時を過ぎた辺りだ。


 行きと帰りで三時間、森の中に三時間いた計算になる。


「つ、着くとは思ってなかったわ。普通なら、泊りがけで依頼をする位置よ。最低でも、往復で半日が過ぎるはず。そもそも、森の中の探索にも一日はかかるのに……ほんと、貴方は規格外だわ」


「まあ、俺の足だと馬より圧倒的に速いからな。もちろん、カルラも。あと、森の中は慣れてるし」


「わ、私は風に愛されたエルフよ? 体力ならともかく、速さまで一緒くらいあるなんて……」


「あっ、それがあったな。とりあえず、ステータスを見せようか?」


「……そうね、それが手っ取り早いわ」


 都市に入ったら、すぐ近くにある以前借りた部屋に行く。

 幸い、Aランクハンターがいるので問題なく借りられた。

 誰もいないことを確認し、テーブルの上に水晶を置く。


「それじゃあ、まずは私から見せるわ」


「ん? 良いのか?」


「それはそうよ。私が知りたいって言ったんだから、私から見せるのが礼儀じゃない」


「……」


「な、なによ?」


「いや、なんでもないよ」


 どちらにしろ見せるから、細かいことかもしれない。

 ただ、そういう考え方をする人は好ましいと思った。

 そして、そういう人とは仲良くしていきたい。


「そう? ……変な人ね、とりあえず私から見せるから」


「ああ、どれどれ……」


 ◇


 カルラ-ハート ハイエルフ


 体力 C+ 魔力 A


 筋力 C 知力 B


 速力 B 技力 B+


 ギフト 不老長寿 風の精霊の祝福 世界樹の守り人


 ◇


 これは……高いのだろうな。

 種類こそ違えど、俺に近いステータスだ。

 不老長寿は、ある意味イメージ通りか。

 風とか世界樹とかも、エルフっぽいし。


「はい、おしまい。他の人に見られたら面倒だし。ちなみに、これは内緒だからね?」


「ああ、もちろんだ。それでは、俺の方も見せるとしよう」


 俺もステータスを見せるとカルラの顔が強張る。

 一度見たことあるので、そのまま待つことにした。

 ……数十秒後、カルラが俺に視線を向ける。


「へっ? 何、このステータス……S級ランクじゃない。道理で、コカトリスを相手に余裕を持って戦えるわけだわ。でも、それもそうね……まさか、神に呼ばれた迷い人なんて」


「アリアさんにも言われたが、やはり俺のステータスは高いのか」


「高いなんてもんじゃない、ほとんど最強クラスに近いわね。私の知る限りだと、この国では五本の指に入ると思うわ。全く、私が負けるわけよ」


「……全然実感がわかない」


 そういや、普通の冒険者の強さとか知らない。

 アリアさんですら、強い方だとは聞いてはいるが。

 そういう普通の冒険者と稽古でもすればわかるか。


「まあ、無理もないわね。大体、送られる時に生きていけるように特別な力を授かるから。むしろ、よく増長しないわね……ほんと、面白い人間」


「増長は身を滅ぼすと育ての親に教わったからな。それより、随分と詳しい気がするが?」


「そりゃそうよ、ハイエルフは長生きなんだから。私はまだ若いけど、長老クラスは五百年生きてる方もいるし。迷い人に会ったことある人が何人か生き残ってるから」


「な、なるほど……アリアさんにも聞いたが、何か目的があって呼ばれたのか?」


「うーん、そういうわけではないみたいね。あえて言うなら、世界のバランスを保つためとか聞いたことはあるけど。あちらとこちらは繋がっていて、どちらが消えても両方消えるとか。詳しいことは、長老クラスじゃないとわからないわ」


 世界のバランス……繋がってる……さっぱりわからん。

 多分、考えたらダメなやつだと思う。

 そもそも、そんなに頭は良くない。


「……聞いたところでわからなそうだから良いや。変に気になって困りそうだ」


「ふふ、それが正解ね。それより、貴方がいた世界はどんなところなの?」


「うーん、そうだなぁ……」


 俺は出来る限り分かりやすく、カルラに説明をする。

 同時に、カルラからもエルフのことなどを聞く。

 どんな種族で、どんな性質があるのとか。

 基本的に風魔法や弓を得意として、森の奥地に住む一族らしい。


「それじゃあ、結構平和な世界なのね?」


「俺の国に限って言えばだけど。他のところでは、そうでもないよ」


「それは、どこの世界も一緒よ……この国は割と平和だけど、戦争をしてる国もあるし。さて、それじゃ報告に行きましょ。いい加減、お腹が空いてるし」


「ああ、ハクも待ってるしな」


「ええ、アリアも心配してそわそわしてるわよ」


 そして、二人でハンターギルドに向かう。


 お互いの秘密を知ったので、少し距離が近くなった気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る