第25話 ギルドマスターと対面

待つこと数分後、ようやく終わったらしい。


「タツマ、話はついたわ」


「いや、ついてないだろうが。とにかく、ここじゃまずい。タツマとか言ったな? そこにいる相棒を連れてついてこい」


「は、はい」


わけもわからないまま、説明もなしに別室へと連れられていく。

そしてソファーに座って、ギルドマスターと対面することに。

隣にはカルラが座り、何故がニコニコしている。

ハクはというと、いつの間にカルラの膝上でお昼寝をしていた。

……どうやら、うちの息子は女性が好きなようです。


「ったく、お前は目立つんだから自重しろ」


「別に何もしてないじゃない」


「存在自体が目立つんだよ。それで……あんたがアリア様が連れてきた男か。そして、さっきの依頼達成も確認した」


目線を向けられたので、しっかりとお辞儀をする。

まずは第一印象が大事だ。


「はじめまして、タツマと申します」


「俺はギルドマスターのゼノスだ。一応、この辺境のまとめ役の一人でもある。ハンターになったなら関わることもあるだろう、これからよろしく頼む」


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


この方がギルドマスターか。

厳ついしガタイも俺以上にあって、まるでプロレスラーのような感じだ。

多分、かなり強いと見た。


「んで、要件はわかるが……こいつのランクを上げろってことだな?」


「ええ、そうよ。あの森で採取をして帰ってこれる人が最下級とかありえないわ。それに、フレイムベアーを倒したことは聞いてるでしょ?」


「ああ、確かにアリア様から聞いている」


「だったら、ささっとあげなさいよ。なんて言っても、アリアと私のお墨付きよ?」


「だぁー! そんな簡単にいうなっての! 強いからって、そうぽんぽん上げたら他に示しがつかん! そもそも、ハンターカードも持っていなかったから証拠はない……無論、アリア様が嘘をついているとかいう話ではない」


……ギルドマスターの言う通りだ。

強いのもそうだが、コネみたいので上がるのは個人的に好かない。


「いえ、大丈夫ですよ。時間はかかりますが、コツコツとやっていきます」


「えー!? つまらないわねぇ」


「確かに上がりたいですが、あんまり反感は買いたくありませんから。この先、ここで長くやっていくなら尚更に」


料理屋をやっていくなら、地元民との関係は大事になってくる。

一時は良いかもしれないが、そういうのは後々になって響いてくるものだ。


「ふむ、まともな考えの奴で助かった。だが、そういう奴こそ上に行って欲しいが……お主のランクをあげても良い方法がなくはない。反感も買わないし、ズルでもない」


「何よ、あるんじゃない」


「だから、順序があると言うとる。全く、エルフというやつはせっかちだ……違うか、お前がせっかちなだけだった」


「はは……俺としては、もしそんな方法があるなら教えて欲しいです」


「ふむ……それは単独での魔獣コカトリスの討伐だ。これなら、誰も文句は言わない」


コカトリス……となるとニワトリいうイメージがあるが。

……ニワトリ? ということは、アレが手に入るのでは?

商店街に行った時はなかったし、高級品で中々出回ってこないと聞いていた。


「……ちょっ!? コカトリスってB級上位案件じゃない!」


「ああ、そうだ。それくらいじゃないと一気にはあげられない。それにフレイムベアーを倒したなら問題はないはず」


「そりゃ、そうでしょうけど……危険度のタイプが違うわ。私みたいな後衛ならともかく、タツマは前衛だというし」


「なら、お主がついてやれば良い。いざという時は助けてやれ。上げたいと言ったのはお主だしな」


「そうね、どちらにしろパーティーは組むつもりだったし……って、タツマ聞いてるの?」


隣に座っているカルラさんに小突かれ、ふと我に帰る。

聞いてはいたが、何処か上の空だった。


「ええ、聞いてます。つまり、コカトリスを倒せばランクを上げることに違和感がないってことで良いですか?」


「ああ、そういうことだ」


「そして、コカトリスとは そいつに会えば、卵も手に入ると」


俺が聞きたいのはそれだ。

もしそうなら、色々な料理を作れる。


「あ、ああ、奴らは卵から孵るからな。今の時期なら、卵も手に入るはずだ。その味は絶品で、中々手に入ることはない。ただし、本体であるコカトリスは不味くて硬くて食えたもんじゃないが。というより、毒があって食えん」


「なるほど。コカトリスは何か倒す理由があるのですか?」


「ああ、奴らは毒を振りまくので他の魔獣や作物をダメにしてしまう。何より凶暴で人を襲うし、他の生き物も殺してしまう」


「それなら決まりです。是非、やらせてください」


「へぇ、良い度胸してるじゃない……ますます気に入ったわ! よし! 私がついて行くから安心しなさい!」


「ありがとう、頼りにさせてもらうよ」


「ふむ、それならすぐに手続きを済ませるとしよう」


コカトリスだかなんだか知らんが、別に今までと変わりはない。


前の世界だって美味い獲物を狩るために、危険を冒すことはあった。


コカトリスか……毒があるとか言ったが、加熱すればいけるのか?


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