第20話 釣りとオーク

その後もゴブリンくらいしか出ないので、ハクに任せることにした。


戦いの才能があるのか、戦うたびに動きが良くなってくる。


これならそう遠くない未来、守られる存在ではなくなりそうだ。


そして、再びあの場所に戻ってくる。


「キャン!」


「ああ、戻ってこれたな。今思うと……ここは街道から外れているし、上にある森があるから見つかりにくいな。良かった、助けることができて」


だからこそ、アリアさんはクリーンニジマスが珍しいと言っていたのだろう。

ここは、いわゆる穴場というやつかもしれない。


「そうなると、ハンターとしては数を取り過ぎてもいけないか。ハク、少し川をたどって数を見てみよう」


「ワフッ!」


川沿いを上流に向かって歩いていく。

その間、俺は目に意識を集中して水の中を眺める。

すると、魚が泳いでいるのが見えた。

ここから十メールは離れているのに。


「……これがステータスの効果か」


「クゥン?」


「いや、あの時は分からなかったが、ズームされることがあってな。ここからでも魚が見えるんだよ」


「ワフッ!」


多分『すごい!』とか言っているのだろう。

考えなくても、少しずつ何が言いたいかわかってきたな。

そして、川を一通り見て回ると……数は多いので、これなら獲っても平気そうだ。

そうと決まったら、壺から買っておいた物を取り出す。


「よし、せっかくだし釣りをするか」


「クゥン?」


「すまんが、ハクにはできないな。そういや……さっき買ったボールがあったな」


ついでに、サッカーボールサイズの玉を取り出しておく。

何かに使えないかと買っておいたが正解だった。


「ほら、これで遊んでなさい」


「キャウン!」


すると嬉しそうにボールに飛びつき、転がっていくのを追いかけていく。

その姿は子犬そのもので、とても可愛いらしい。


「ハク、俺の近くから離れるんじゃないぞ?」


「ワフッ!」


「よしよし。どうやら、喜んでくれたみたいだな。さて、まだ時間はあるしのんびりと釣りをしますか」


ハクが戯れてるのを眺めながら、のんびりとした時間を過ごす。

もちろん、その間にも魚を釣り上げている。

警戒心が強いとか聞いていたのだが、そこまでじゃないような気がする。

俺の釣りの腕が良いってわけでもなし……なんだろうな。


「あぁー、それしても……こういう時間って良いよな、色々と整理されてくっていうか」


俺は今後、どうしたらいいだろうか?

もちろん、料理人として生きていくことができれば良い。

しかし、そのためにはこの世界のルールや常識は学んでいかないと。


「うん? 種族によっては食べられないものとかあるのか? 外国人が納豆を食べられないように……ありえるな」


都市には色々と種族がいるから、その辺りも考慮してメニューを考える必要があるか。

その辺は、種族ごとの意見を聞きたいところだ。


「ドワーフとエルフ、獣人の知り合いはできたし……頼んでみるのも手かもしれない」


そんなことを考えながら、無心で釣竿を引いていく。

気がつくとバケツの中には、六匹の魚が入っていた。


「おっ、結構釣れたな。これだけあれば足りるか。あんまり取り過ぎても行けないし」


「キャンキャン!」


「ん? ハク、どうした?」


何やら慌てた様子で、俺に駆け寄ってくる。


「ガウッ!」


「……敵か?」


「ワフッ!」


「わかった、すぐに片付ける」


まだ俺の目には敵は見えない。

だが確認するまでもなく、ハクの勘を信じることにした。

野生の勘というのは馬鹿にできないし。

俺は急いでバケツを壺に入れ、周辺を警戒する。

すると……俺の目にも見えてきた。


「ブルルッ!」


「……オークか?」


毛むくじゃらの豚が二足歩行で歩いていた。

身長は百六十程度、体型は肥満型、手には槍を持っている。



【オーク】


下級の魔物だが、ゴブリンよりは強い。

人類の雄を食べ、雌を捕まえて繁殖する。

なんでも食べ、家畜も食べるし畑も荒らす。

女性にとっての敵。



あぁー、なるほど。

ハンターとして、これは倒さないと。

何より、少しでもお金は必要だ。


「ハク、まだお前には早そうだから下がってろ」


「ワフッ!」


「良い子だ」


ハクが下がったのを確認し、剣を上段に構えて待つ。


「ブルルッ!」


「フシュー!」


「さあ、どっからでもかかってこい」


「「ブルル!」」


挑発に乗って二体が並んで走ってくる。

先頭の個体が槍を突き出してくるので……こちらに届く前に大剣を振り下ろす!


「ふんっ!」


「ブルァ!?」


槍の穂先を失ったオークが後ろに退こうとするので……。


「遅いっ!」


「ブガアァ!?」


上段斬りからの逆袈裟斬りにもって行き……相手を両断する。

その隙をついて、もう一体が横から槍を突き出してくる!


「甘いっ!」


「フゴッ!?」


大剣から左手を離し、刃のついた穂先を受け止める。

今の俺の動体視力なら、なんてことはない。


「セァ!」


「ブカァ!?」


相手は力を入れようともびくともしないので、そのまま右手で大剣を振り下ろして仕留めた。


「ふぅ、こんなものか」


「キャンキャン!」


ハクが俺の足元をぐるぐる回って、キラキラした瞳で見つめてくる。

どうやら『すごいすごい!』と言っているらしい。


「ありがとな、ハク。ひとまず、戦うことは問題なさそうだ」


環境適応のおかげもあるだろうが、俺は元々戦いの経験がある。


それに魔物ではないが、猛獣とも戦ったことも。


虐待を受けてきた俺に対する親父さんの荒療治だったんだけど……今はそのことに感謝しないとな。









~あとがき~


みなさま、いつも本作を読んでくださり誠にありがとうございます。


もしよろしければ、こちらの作品も投稿しているので、読んでくださると嬉しいです。


「田舎貴族の学園無双~普通のことしかしてないのに、次々と女性が寄ってくる~」


https://kakuyomu.jp/works/16817330666079944517/episodes/16817330666280823857









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