第6話 アリア視点
「……うっ……」
身体の痛みからふと目覚め、ゆっくりと体を起こす。
「……ここはどこだ?」
周りを見ると、何やら狭い空間にいる。
「……そうだ、私は魔物に追われて……一か八か崖から落ちて……」
しかし、まさか……巡回中にあんな魔物に出会うとは思わなんだ。
何とか私が引きつけて、時間は稼いだが。
「仲間達は無事に逃げられただろうか?」
こうして私が生きているということは、仲間達が助けてくれたのだろうか?
生きているし拘束をされていないから、山賊や魔物の類に捕まったわけではなさそうだが。
「もし、私を探していたら……誰だ?」
外から足音が聞こえ、一人の男が顔をのぞかせる。
その男はビクビクしながら、こちらの様子を伺っていた。
見た目の男らしさとは、少し印象が違う感じだ。
「あっ、目が覚めたんですね。俺の名前はタツマと言います。川から流れてきた貴女を拾って、ここで保護させて頂きました」
「あ、ああ、感謝する。私の名前はアリアという……それより、どうして顔だけを覗かせているのだ? というか、目線が合わないが……」
「い、いえ……貴女の格好がアレなので、できるだけ見ないようにと」
そこでようやく気づいた……自分が下着姿であるということに。
とっさにタオルで自分の体を隠す。
そして、目の前の男が助けたということは……。
「っ〜!?」
「す、すいません! そのままだと冷えて死んでしまうかと思ったので……ただ、見てしまったのは事実です。俺の殴るなり蹴るなりしてくださって構いません」
そういい、男は私の近くで目をつぶって正座をした。
言葉通り、私が殴るのを待っている……こんな男もいるのだな。
本当なら殴る蹴るところだったが、その態度を見て落ち着きを取り戻す。
自分で言うのもなんだが、割と男達にはそういう目で見られることが多い。
なので、本来なら襲われても仕方ないくらいだ。
「いや……助けてもらったのはこちらだ。お礼をするならともかく、殴る蹴るなど考えられん」
「そ、そうですか」
「それより、ここはどこだろうか?」
「えっと……貴女が流れてきた川の近くです」
「むっ? この辺りに家があったのか? この辺りに村の類はなかったはず……危険な魔物や魔獣もいる場所だ」
「そ、それが………」
何やら言っていいのか迷っている様子だ。
しかし、今は問答している時間が惜しい。
「すまないが、礼は後でいいだろうか? 私は部下と合流しなくてはならない。もしかしたらまだ戦っているか、私を探して森を探索しているかもしれない。そうならば、早く無事を知らせないと」
「……なるほど、その方達が危険かもしれないと。しかし、その身体では難しいのでは?」
「なんのこれしき……っ〜!?」
身体を動かそうとすると、全身に激痛が走る!
幸い折れてはいなそうだが、すぐに動けるような状態ではなかった。
「……わかりました。それなら、俺が貴女を連れて行きます」
「なに? しかし助けてもらった上に、そのようなことまで……」
「いえ、これも何かの縁ですから。その代わりと言ってはなんですが……俺の頼みを聞いてもらえますか?」
「あ、ああ、私にできることなら」
助けてもらったこともそうだが、この状態で私を襲わない紳士な方だ。
ならば、私も真摯な対応をしなくてはいけない。
「よし、言質は取りましたね。それでは、急ぐとしましょう。まずは、着替えをしてください」
男の手元には私の着ていた騎士服があった。
しかも、すでに乾いている。
「す、すまない」
「では、俺は出ているので」
男が出て行ってる間に、体の痛みを堪えてどうにか着替えを済ませる。
護衛もいない状態で、男性が近くにいるのに着替えるなんて初めてだった。
「終わったぞ」
「失礼します。では、急ぎましょう」
「ひゃぁ!?」
いつの間か、男にお姫様抱っこをされている!
動きが全く見えなかったぞ!?
「あっ、すみません。先程はこの格好で運んでいたので……おんぶの方が良いですか? 」
「さ、さっきも?」
お姫様抱っこなんて、誰にもさせたことないのに……あぅ。
確かにそういうのに憧れはあったけど……まさか、こんなところでとは。
「も、申し訳ない」
「い、いや、よいのだ……それでは、このままでお願いする。腕も怪我をしていて力が入らないしな」
「そうですね。それじゃあ、こちらも細かい説明は後にします」
そう言い、男は部屋から飛び出していく。
私は咄嗟に抱きつき……あぁ、男性の腕の中ってこんな感じなのだなと場違いなことを考えていた。
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