第5話 救助活動

 まずは火の近くの地面を、両手を使って綺麗にする。


 邪魔な石などを退かし、出来るだけ平らにする。


 葉っぱを集めて、そこに敷いていく。


「よし、これでよしと……次はアレか」


 なるべく見ないようにして、女性の衣服を脱がせていく。

 幸い、ボタンで留めるタイプだったので難しいことはなかった。

 そして、どうにか下着姿にまでたどり着く。

 その姿は美しく、思わず息を飲んでしまった。


「さ、流石に下着は脱がせないな……というか、情けないことにやり方もわからん」


「クゥン?」


「……ハク、お前がいてくれて良かったよ」


「ククーン……」


 ハクの頭を撫でて、心を落ち着かせる。


「もちろん、寝ている女性に手を出す気はないが……うん、感情はそうもいかん」


 気持ちを切り替えたら、女性の身体をタオルで拭いていく。

 次に抱きかかえて、草の上に優しく乗せる。

 その周りに木を突き刺し、中央で支えあうように置く。

 最後に俺の上着を被せれば、即席テントの完成だ。

 こうすれば、多少は熱も逃げにくいし風も当たりにくいだろう。


「後は、持っていたタオルを彼女にかけて……ひとまず、これでよしと」


「ワフッ!」


 するとハクが彼女のそばに寄り添う。

 どうやら、見張りをしてくれるらしい。

 俺がいるよりはいいので、その場をハクに任せて俺は少し距離をとる。

 

「さて、どうしたもんかな。まずは、無事に目覚めてくれることを願うとして」


 もし目覚めたら、聞きたいことはたくさんある。

 ここはどことか、貴女は誰ですかとか。

 彼女を見る限り、西洋人に近い容姿をしていたけど……言葉は通じるのか?


「日本人じゃないけど、とりあえず人がいて良かった。というか、日本人とか言ってる場合じゃないか」


 どう考えても、ここは俺の知る世界とは違う。

 俺にはこんな能力はないし、今時女騎士などそうそう居ない。

 ……あの説が有力だよな。


「そうなると……やっぱり、そういうことになるよなぁ」


 知らない世界に来た可能性が高い。

 ここに至っても不思議と、俺は落ち着いていた。

 それから火を見続けること数十分……トコトコと、ハクがテントから出てくる。


「ワフッ!」


 「おっ、彼女が目覚めたのかな?」


「キャン!」


「わかった。さて……とりあえず、言い訳を聞いてくれると良いが。ひとまず、平手打ちくらいなら甘んじて受け入れるとしよう」


「クゥン?」


「ハク、お父さんは頑張ってくるよ。お前は、ここにいなさい」


「ワフッ!」


 まるで『よくわからないけど頑張って!』とでも言うように、俺の足をポンっと叩く。


 俺はそれに背中を押され、テントの方に向かうのだった。

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