第5話 『古代語』
「緊急会議を始めます」
二コの重々しい言葉を出す。
円卓に座った五人のレジスタンスの面々は、今までにない緊張感の中で始まった会議に不安と期待を持ち合わせる。
「議題は『アンノウン』ね」
お姉さん的存在のロニが口火を切る。
「ええ、そうよ。稀人『
二コが立ち上がり、みんなの顔を順番に見る。
おとなしそうなココが手を上げる。
「わかったことがあります」
「なに?ココ、教えて」
二コがココの方を向く。
「天外の『アンノウン』ミクの『栄養摂取』と『排泄処理』を見たら……大きくなりました」
「そんなとこ見せたの?ミク」
イタズラっぽくロミがミクに聞く。
「見せたくて見せたくてわけじゃ!!……天外が勝手に……」
うつむくミク。
その様子には気にもとめず、ココは話を続ける。
「その『アンノウン』の名前がわかりました」
「え!なんて名前なの!?」
ロミが元気よく立ち上がる。
「座りなさい、ロミ」
ロニがロミを座らせる。
二コは一息ついてからココに聞く。
「……いいわ、教えて」
ココは少し顔を曇らせながら答える。
「それが……発音できないのです」
「発音できない?禁じられた言葉『古代語』か!!」
ロミが再び立ち上がる!
「古代語?」
不思議そうな顔をしているミクに二コが説明する。
「何千年も前の言葉で、禁じられた言葉よ。声を出そうとしても首輪から阻害音が流れるわ」
「試しに言ってみて!」
ミクがココに強い眼差しを向ける。
「わかった……」
ココはスッと立ち上がり。息を大きく吸ってから、古代語を叫んだ。
「お『ピー』んちん!!」
ココの言葉を遮るかのように首輪から阻害音が鳴り響く!
「お……んちん?ココ、もう一度言ってみて!何度も言えばわかるかも?」
ロニがココに言う。
「わかった……おち『ピー』ん!」
「お、おい!阻害音がずれたぞ!」
ロミがココに駆け寄る。
「おちん『ピー』……」
二コが呟く。
「みんなで言ってみるか!」
ミクの提案に全員が頷く。
「おちん『ピー』!!」
「『ピー』んちん!」
「おちん『ピー』――!!」
「おち『ピー』ん――!!」
何度も……何度も叫ぶ。
失われた『古代語』は調べるだけで罪になる世界。
彼女達はそれでも知りたかった。
自分達はなぜ生きているのか。
生まれた意味、生きる意味。
人間とは……AIとは……。
暗闇の中、手探りで大事なものを探すかのように、彼女達は一心不乱に叫んだ。
やがて、彼女達の声にならない声は、重なりあって一つの奇跡となって『言葉』に現れる。
それは、何千年も前に失った言葉にもかかわらず、どこか懐かしく、どこかお腹の奥がムズムズする言葉だった……。
『おちんちん――!!!!』
「い、言えた……お『ピー』ちん」
二コが腰を下ろし安堵の溜め息をつく。
「あとは、おちん『ピー』をどうするかね」
ロニは腕を組ながら悩む。
「ひ、ひっぱるとか?」
「ミク、真面目に考えなさい」
ロミがミクを叱る。
「待ってロミ……彼のおちんち『ピー』触ったら固くなったわ」
ココがふと思い出す。
「確かに」
ロニが呟く。
「ココ!ロニ!あんた大切な『ピー』ちんちん触ったの!?」
二コが立ち上がり激昂する。
「ごめんなさいね。ちょっとね」
ロニが頭を下げる。
「みんなで……触ってみる?」
ロミの提案に……全員が黙って頷いた。
【会議室 入口付近】
会議室の出入口で様子を伺っていた主人公、天外は「おちんちん」「おちんちん」叫ぶ彼女達を覗きながら、不思議そうな顔を浮かべた。
「……痴女ってやつか?」
<つづく>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます