連休は命がけ 5
プログレアントは渓谷の底に穴を掘って巣を作っている。地下に広がる巣は広大で、かつ迷路のように入り組んでいる。
そこに大量の水が押し寄せたのだ。
瞬く間に巣は水没してしまう。
そして巣にいた蟻たちもその大半が溺れ死んでいく。
運良く外にいた蟻たちは避難する為に高台を目指した。
しかし、高台には俺たちがいる。
タコタンクの放水を受け、崖を登っていた蟻が落ちていく。
大雨と水撃を耐えられる蟻はほとんどいなかった。
だが、まったくいない訳ではなかった。
プログレアントは女王蟻が食べた物によって、異なる能力を手に入れられる。
高い知能を持った蟻が戦略的に餌を与えれば、多様な戦力を整えられる。
空を飛ぶ蟻。
泳ぎの上手い蟻。
そういった特殊能力を持った蟻たちが洪水を逃れて、攻撃してくる。
ドゴォッ!
バキッ!
バコォーン!
メキラが飛行する蟻を叩き落としていく。
蟻の強みは数と組織力だ。
それが今はない。
洪水の生き残りがバラバラに散発的な攻撃を仕掛けてくるだけだ。
そんなものはメキラの敵ではない。
瞬殺。
そして泳ぎの上手い蟻たちも次々に仕留められていく。
泳ぎの上手い蟻対魚人。
水中での勝敗は明らかだろう。
いくら泳ぎが上手いと言っても所詮は蟻。
水中で生活する魚人。
その勝負は一方的だった。
もう勝負は決まった。
正直なところ、洪水をおこしたところで戦いは決まっていた。
女王蟻が全滅したからだ。
卵を産めるのは女王蟻だけ。
女王蟻は何の特殊能力も持たず、また、体が大きく、動きも遅い。
洪水から逃れるすべがない。
なお、女王蟻は時々、メスの卵を産む。
そのメスが巣を出て新しい女王蟻となる。
そういう増え方をするプログレアントだから、女王蟻を全滅させた時点で、もう滅ぶ運命にあるのだ。いくらオス蟻が残っても、もう数は増えない。減る一方だ。
蟻たちの最後の悪あがきを相手にしながら、
「女王蟻を失った時点で、お前らの負けは決まってるんだよ。
今更俺たちに攻撃したところで、もうどうにもならん。
さっさと諦めろ。」
「魔王様、誰も聞いてませんよ。」
リノアがつっこむ。
まあね、
メキラは飛び回って戦っているので聞こえないし、
エリーは夢幻の水瓶を使用中。
水の轟音で何も聞こえない。
「いいじゃん。
決め台詞ぐらい言わせてよ。」
「魔王様はモンゴラ渓谷に来てから、
何もしてませんよ。
眺めてるだけです。」
そんなこと言わないでよ~。
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