入学式と勇者の旅立ち 6

「モンスターだーー」

女性の悲鳴が聴こえる!


・・・棒読み過ぎるよ、エリー。


だが、街はパニックとなる。


大きなゴーレムが何体も現れた。

突然の大型モンスターに住民は逃げ惑う。


用意したのは『バルーンゴーレム』。

最弱のゴーレムだ。

なにせ、ほぼ空気の風船ゴーレム。

鋭い刃物で攻撃すれば簡単に倒せてしまう。

大きいだけの見かけ倒しだ。


だが、そんなことを知らない一般人には十分恐怖だろう。



「心配するな!

俺たちにまか、、、」

ゴーレムを倒そうと出てきた冒険者がバタバタと倒れる。


グッジョブだ、メキラ!

メキラは冒険者たちを次々と気絶させ、路地裏に放り込んでいく。


更に、リノアは魔法を使い兵士たちを眠らせている。


エリーは棒読みながら、ワーキャー騒いで、混乱を拡大させている。



そんな中、勇者ティファは俺の横でオドオドしているだけで、戦う気配は無い。

早くしないと誰かがバルーンゴーレムを倒してしまう。


「ティファ!共に戦おう!」


「でも、、、私、弱いし、、、」


「勇者とは、勇気を持って困難に立ち向かう者です。

大切なのは何が出来るか、ではなく、何をしようとするか、です。」


「何をしようとするか、、、」


「大丈夫、私も一緒に戦います。

あなたは1人じゃない。」


「・・・やります。

勝てるかどうかわからないけど、、、

私、、、戦います!」


俺はニッコリと笑いかけ、

「ご立派です。

いきましょう!」



俺、魔王です。

魔王が勇者を励ます、、、

何してるんだろ??

勇者が勇気を持って立ち向かう相手が魔王なんだけど、、、


いや、冷静になるな!

娘の入学式のためだ!

今だけは勇者に頑張ってもらわないと!



俺は持っていた剣を抜き、ティファに渡す。

ティファは両手で剣を持つ。


ティファは刀身をじっと見つめ、覚悟を決める。


剣を握りしめ、バルーンゴーレムに向かっていく。


ティファは一気に駆け出す。

バルーンゴーレムに接近し、剣を大きく振り上げる。


ゴンッ


「あっ、、、」


ティファが剣を振り上げた反動でそのままコケた。

剣を握りしめたままだったため、受け身無しで、後頭部を強打している。


ピクリとも動かない。

凄い音したもんね。


とりあえずティファに駆け寄る。

ダメだな。

完全に気絶している。


まさか、こんなに弱いとは。

まさか、バルーンゴーレムと戦う前に気絶するとは。

想像を超えていた。


勇者が弱いのは魔王としては歓迎するべきなんだろう。

しかし!

今だけは頑張って欲しかった。。。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る