入学式と勇者の旅立ち 5

「もちろんです。

すいません。お名前をうかがっても宜しいですか?

上官から聞いてくるのを忘れてしまって。

ハハハ、お恥ずかしい。」


「私はティファです。」


「ティファさん、

私はアインと申します。

今日は宜しくお願い致します。」


「宜しくお願いします!」

勢いよく礼をするティファ。


「それではドアの外で待ってますので、準備が整いましたら、お声かけください。」


そう言ってドアの外に出た。


斎藤一、で偽名が『アイン』。

偽名なんて単純な方がいいじゃん。



しばらく待つと、ティファが出てきた。

うん。

田舎の町娘って感じだな。

たぶん、勇者に選ばれて地方から出て来たんだろう。

都会のお嬢様はもう少しおしゃれに着飾っている。


「それでは参りましょう。」


騎士団の宿舎を出て、お店の集まるエリアに向かった。


瞳をキラキラさせながら服や小物を眺めている。

まぁ田舎町には無いから仕方ないな。

さすがに服を買ってやるのは後々目立ち過ぎるし、この小物屋で何か買ってあげよう。


「良かったら、お1つどうですか?

安い小物ぐらいならプレゼント致しますよ。」


「えっ!?

でも、、、申し訳ないし、、、」


口はちゃんと辞退しているが、目は商品を物色している。


「大丈夫です。

今日はティファをアテンドする為に、多少は経費を預かっています。

心配はいりませんよ。」


「ありがとうございます!!」


それから延々と悩み、小さな髪留めを選んだ。

全体はピンク色で小さな石が飾られている。

もちろん宝石ではない。

ただのきれいな石だ。


「かわいい♪」


ニコニコしながら、何度も見つめている。


「着けてみてはいかがですか?」


「はい!」


少し子供っぽい。が良く似合っていた。


「よくお似合いですよ。」


「アインさん、本当にありがとうございます!」


子供のお小遣い程度の買い物でこれだけ喜んでくれると、こちらまで嬉しくなってしまう。


その後、カフェに入った。

名物がシフォンケーキらしい。

シフォンケーキと紅茶のセットを2人分注文した。


「美味しい~~~。

甘くてフワフワ♪

雲を食べてるみたい♪」


ティファは上機嫌。

俺は、まぁ付き合いで食べているだけだな。


正直に言って、食べ物は断然元の世界の方が美味しい。

圧倒的な差がある。

この異世界は物流も保存技術も、まだまだ遅れている。

それに野菜や果物も品種改良がまだまだ遅れている。単純によく似た果物でも甘さは段違い。


さて、そろそろ頃合いだな。

何もティファを楽しませる為に連れ出した訳ではない。

ティファに活躍させる為だ。

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