入学式と勇者の旅立ち 4

なんやかんやで準備は整った。

・・・いや、準備万端ではない。


だが、明日は入学式。

今日決めなければ、明日の休日出勤が決まってしまう。

なんとしても勇者に名乗り出てもらうぞ!


作戦は簡単だ。

騎士団に下剤を飲ませる。

街にモンスターが侵入。

しかし騎士団は動けない。

逃げ惑う人々を颯爽と助ける勇者登場。

モンスターを蹴散らし、名乗りを挙げる。

そして俺が恐怖を煽るコメントをする。

これでミッションコンプリート。



仕込みは出来た。

昨日の夕方、街にリノアと俺が街に潜入した。

俺は商人のフリをしていた。

リノアは従者だ

そして騎士団の訓練所に大量の酒と食べ物を差し入れした。

若い女の子も多数雇って、いい気分で酒を大量に飲ませた。


そこに遅効性の下剤を仕込んだ。

この下剤は飲んでから、半日後に効果が出始める。

効果は強烈だが、発症してから約半日で治まる。

つまり、夜に飲めば朝からピーピーになって、夜には治まる、という感じだな。

これで騎士団はすぐには動けないだろう。


・・・もちろん、強い薬を飲めば治せる。

だが、飲み過ぎてお腹を下した程度に思っている時に、高級な薬は飲まないだろう。



よし、次だ!

次は勇者を連れ出すぞ。

勇者はお披露目まで騎士団で匿われている。

そこで身を隠しながら、トレーニングして過ごすことになっているらしい。


昨日の飲み会にも出て来なかった。

でも今日はトレーニング相手の騎士がいない。

そのチャンスを狙うぞ。


騎士のフリをして、騎士団の宿舎を探索する。もちろん騎士に会えばすぐにバレるけど、騎士はトイレに籠っている。


だいたい、こんな建物の構造なんて、どこも一緒でしょ。

来客用の部屋を探す。


「あった!」


中から気配を感じる。

たぶん、ここだろう。


しかし、勇者の顔も名前も知らない。。。

まぁ、いい。

出たとこ勝負だ!


コンコンコン

ノックをする。


タタタッ

小走りの音が聞こえる。


「はい」

ドアを開けて顔を出したのは少女だった。

高校生ぐらいかな?

まだ幼さを少し残す、金髪ショートカットの女の子。

クリッとした瞳が特徴的だ。


「今宜しいでしょうか?」


「はい。」


「実は昨夜宴会が開かれまして、恥ずかしながら、ほとんどの騎士が二日酔いで使いものにならないんですよ。」


「そうですか、、、」


「そこで、本日は気晴らしに街を散策されてはいかがでしょう。

私は護衛兼おサイフ担当です。」


「今日は訓練しなくていいんですか?」

少女の顔が明るくなった。

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