魔女、覚醒

<雪視点>


パキッ…


「!?」


何かが割れた音がした。

その瞬間、俯いていた柚子が黒いモヤに包まれた。

これ…もしかして…


「覚醒!?」


人外は、覚醒することがある。

覚醒時…

人外は、とてつもなく強い力を手に入れる事ができるが…

自分を…抑えられなくなる


柚子はそのまま、敵を容赦なく殺し始めた。

殺すためなら、手段を選ばない…

そんな風に。


「覚醒…か…」


声がした。

柚子ばかり見ていて気づかなかったが、ヴァルさんと守さんがいた。


「よし…解けるよ、主」


どうやら、僕を縛っていたやつを取ってくれていたらしい。

完全に取れると落ちるかと思ったが、ヴァルさんが支えてくれた。

けれど、この短時間のうちに、後から来た敵も全員柚子の餌食になっていた。

敵がいなくなった今、柚子はおかしくなっていた。


「殺す…誰を…?死ね…誰が…?殺すな…なんで…?あ…あ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



「…ヴァルさん」


僕は、ヴァルさんが支えてくれているのを自分で解いて、柚子の元にジャンプした。

そして、正面から柚子を抱きしめた。


「…ごめんね。柚子」


柚子が落ち着いた。


「僕のせいで、苦しめて。僕が、足引っ張ってさ。…ごめん。柚子は…苦しむ必要ないよ。」


「…違う。」


柚子を包んでいたモヤが消えていく。

そして柚子が、僕を抱きしめ返す。


「違う…みんな…僕が悪いんだ…僕が…あんなこと、言わなければ…僕が…」


柚子は…泣いていた。


「ごめん…なさい…」


「もう、いいよ。苦しまなくて。」


そのまま柚子は、声を出して泣き始めた。









<守視点>


「おいおい…こりゃあ、どういうことだ?」


悪魔、悪夜達皆が来た。


「雪が、柚子の覚醒を解いたのだよ。」


主がそう説明する。

俺っちは、床に落ちていた柚子のバクライドを取った。

周りには、割れたような破片があるのに、バクライドは割れていなかった。

不思議だな…本当に


バクライドは、割れると持ち主が覚醒する。

けど、覚醒からもとに戻ると、バクライドも元通り。

まぁ、俺っちにはそんな難しいこと、考えてもわかんないや!

それにしても…


「雪は…俺っちより、強いじゃないか…」


「?まもるん、何か言った〜?」


美紀ちゃんにそう言われる。


「ん〜ん?何も言ってなぁ〜いよっ!」

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人間と人外の現実 ゆず @yuzu_sousaku

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