妖一握り(あやかしひとにぎり)

頭が痛い…

そんな思いで目が覚めた。

僕は空中にいた。

浮いているわけではなく、後ろにある棒に手を縛られているみたいだ。

足も棒とは別で縛られている。

まぁでも、人の体を手を縛るだけで空中に支えるなんて、普通無理だ。

それに、角度とかも相まって、手首がめちゃくちゃ痛い。

ここは…どこ?


改めて、周りを見てみてる。

球体の形をした…葉っぱ?

いや、茎…?

緑のものが沢山絡まってこの球体の大きな空間ができた、というわけか。

にしても…

かなり、大きい…

東京ドーム1個分ぐらいはあるでしょ…




「よう、起きたか」


気を失う前にも聞いた声。

前を見ると、この空間に入れる唯一の場所から、人の姿をした奴らが2人現れた。

…いや、人じゃない。

2人とも、同じ人外…

人間によく似ていて…この服装…


「あの…誰なんですか?」


思い切って聞いてみる。

この感じの人外は、色々いるから。


「俺達はなぁ?お前で儀式を行うために、お前をここに連れてきたんだよ!」


「儀式…?」


「血祭りの噂、知らないのか?」


さっきの荒っぽい人とは違い、静かに言う。


「血祭り…子供をさらう…」


「なんだ、知ってるじゃないか。」


その人は僕を鼻で笑い、そのまま続ける。


「俺たちは、あやかしの一部だ。けど、俺たちみたいな、ただ"子供をさらうことしか出来ない"奴らは弱い。だから、強いやつには逆らえない」


「…?」


話が見えてこない。

それと、血祭りや儀式はなんの関係があるんだ…?


「なんの関係が?って顔してるな。血祭りってのはとある儀式のこと。そして、妖の上の奴らは人間を喰らう…ここら辺で、わかってきたんじゃないか?」


…なるほど。


「上に逆らえないから…僕みたいな子供をさらって、自分達より上の妖に捧げてる。そして、妖が人間…さらってきた子供を食べることを、儀式という。」


「ほう。物分かりのいい奴は嫌いじゃない。」



………

そして…

恐らく彼らは…隠し神

夕方ごろまで遊んでる子供をさらう、妖だ。

上ってのは、どんな妖なんだろう…

というか、ここはどこにあるんだろう…?

柚子達に…迷惑かけてるかな…


「なんだ?死が怖いのか?w」


最初の荒っぽい人が言う。

いいや…真逆ですよ。


"僕はずっと、死にたいから"






<柚子視点>

「どぉ〜りで見つかんねぇと思ったら、なるほどな」


「ま、"別の空間"にあったら、見つかるわけがなかろうな」


悪夜とアノルの言葉に頷く。

奴らの基地は、私達の城と同じ、別空間にあった。

守が匂いでここまで分かったから良かった…


「にしても…変な形ね。」


梓ちゃんが言う。

目の前の敵の基地は、緑のもので囲まれている。

しかも、普通に防御力も高い。

そして、1番は形…

球体が何個もくっついていて、まるでぶどうみたいだ。

けど恐らく、雪がいるのは一番奥。

僕は息を吸って叫んだ。


「よし…皆、行こう!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る