第16話 Baby love(16)
夜中じゅう、リビングで翔を抱きながらあやした。
時々、ウトウトするみたいなのだが
思い出しては泣く。
熱があるわけではなさそうなのだが、だらだらと泣いていた。
萌に電話してみようか・・
そう思ったがもう夜中の3時だった。
「も~~~~、なんで泣くんだよぉ・・」
徹夜には慣れているとはいえ、仕事とは勝手が違う。
どっと疲れた・・
そして
翔がスヤスヤと寝始めたのは明け方5時だった。
昨日は夜泣きなんかしなかったのに・・
斯波は翔の寝顔をジッと見た。
翔が生まれてから萌香と翔は隣の部屋に布団を敷いて別々に寝ていた。
いつもこんなに泣いてるんだろうか。
彼女は夜中じゅう抱っこしたりしてたんだろうか。
それに気づかない自分を猛烈に責めてしまった。
仕事もし始めてしんどいだろうに
グチひとつこぼさず。
子育てと仕事の両立は口で言うほど簡単ではない。
斯波はそれを実感した。
もちろん彼女も身にしみているだろうが
それでも泊りがけの出張に出かけるほど、仕事に打ち込んでいる。
スゴイなぁ・・
改めて萌香の根性に敬服した。
彼女とつきあうようになってから今日まで
彼女が弱音を吐いたりした姿を見たことがない。
子供のころから苦労をしてきて、我慢をするクセがついているのか
人に弱みを見せない。
翔の寝顔を見ながら
猛烈に萌香が愛しくてたまらなくなった。
「あ・・おはよーございますー、」
翌朝。 翔が起きてミルクを済ませた後、買い物に行こうと斯波はベビーカーを押して部屋を出た。
そこにあゆみと有吏も出てきたところに居合わせた。
なんだか斯波がベビーカーを押している姿がものすごい違和感で二人は一瞬固まった。
「ゆうべ。 すげー泣き声うるさくなかった?」
斯波は固まっている二人に言った。
「え・・?? 泣き声? ぜんぜん。 あたしも有吏もけっこう熟睡しちゃうから。 翔くんどうしたんですか?」
あゆみは心配した。
「なんかもう夜中じゅう泣きっぱなし。 おれも疲れた、」
ため息をついた斯波に
「すっごいごきげんそうなのに、」
有吏はおとなしくベビーカーに乗せられている翔を覗き込んだ。
「ったく。 赤ん坊ってわかんねーな、」
斯波の言い様があまりに実感が篭っていて、二人は目を合わせて笑ってしまった。
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