第5話 Baby love(5)
子供が生まれてからというもの
他の社の人達からも、子供の話題ばっかりふられて。
なんで今はこんなにも子育て熱心な父親ばっかなんだろって
その気持ちがわからなかった。
八神や玉田なんか
娘と風呂に入るのが楽しいとか、休みの日は子供と二人で出かけるとか。
スゲーよなあって思う。
まあ、ウチのはまだぜんぜん赤ん坊だから実感ねーのかもしらねえけど。
斯波はタバコに火をつけた。
タバコも。
萌香が妊娠してからは家で吸わなくなった。
子供が生まれてからは余計に。
こういうときは自分でも父親なのかなあ、って実感が沸くくらいで。
正直、子供の世話は100%萌香がしてるし。
おれは子供が泣いてても、ちょこっと抱っこするくらいしかできねえし。
斯波は今まで生きてきて自分の『子供』という存在が全く想像もつかず。
結婚さえ現実にあるのか、と思っていたくらいなので
なおさらだった。
赤ん坊はもちろんかわいいけれど、ペットさえ飼ったことがなかった彼にとっては
まさに『宇宙人』のような存在で
なんでこんなに泣くんだろうか。
と、大真面目に考えてしまうくらいだった。
そんな自分は果たしてこの先も父親らしいことなんかできるんだろうか。
と、自分の父を思い出してしまい不安になることもある。
真尋の子供たちは小さい頃から見てきたけれど、所詮は他人の子供であって
自分の子供とは責任が違う。
斯波が自分の父親の資質に疑問が沸いていた頃。
「え・・大阪にですか。」
「なんっかもう今度の舞台の製作。 大阪がやってんねんけども。 やらかしてくれちゃったみたいでさー。タレントのプロダクションからクレームついちゃって。 支社長が来てくれいうから・・」
志藤は渋い顔をした。
「ほんまは真太郎さんが行くトコなんやけど。 今、ホテルの方もかかりきりやろ? まあ、おれが行くことは異存ないねんけど。 3年前に東京で手がけた広告代理店と同じトコがからんでるから。 その時おれが担当やったから。」
「ああ、」
萌香はそのことを思い出した。
「今度の週末から行くことになったから。 休日返上で金・土・日や、」
志藤は仕方なく笑った。
萌香は少し考えた後、
「あたしもご一緒します。」
と言い出した。
「は??」
「あのときの資料はあたしが作ったものですし。 広告代理店の新星社の水森さんともよく打ち合わせしましたから。 少しは話がスムーズにいくかもしれません、」
「・・や、でも2日は泊まりになるで? 子供はどうすんねん。」
「それは。 北都のシッターの志奈子さんにお願いして、土日はウチに来ていただくしかないですけど・・」
萌香はうつむいた。
「そんなんできるんか?」
「わかりませんが。 ダメもとでお願いしてみます。もし・・ダメなら。 休日でも預かってもらえるところを探します、」
「斯波は?」
「たぶん今週も休みがないでしょうから。」
「そっかあ・・」
志藤は申し訳ないと思いつつ、萌香の力を借りたいのはヤマヤマだった。
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