第4話 Baby love(4)

「こっちは斯波さんと栗栖さんちの赤ちゃんの翔くんよ。柊よりちょっと大きいでしょう?」



絵梨沙は翔を抱き上げた。



「え! 斯波っちのトコの赤ん坊???」



真尋は事情が全く飲み込めておらず、ただ驚くばかりだった。



「栗栖さん、仕事に復帰するんで。 ウチで一緒に預かってシッターの志奈子さんに見てもらってて。」



「へー。 そっかあ柊と同級生だもんな~~。」



真尋は感心した後、二人を見比べた。



「ま~~~、どっちかっつーと。 ウチの柊のがかわいいんじゃねーの??」


それには絵梨沙は笑ってしまって



「翔くんはママにソックリで、目がぱっちりで鼻筋も通ってるし。 あの二人の赤ちゃんならきっとすっごくかっこよくなるわよ、」



「今から斯波っちみてーな怖い顔だったらどーしようもねーもんな。萌ちゃん似で助かったよな、」



真尋はもう首が据わってキョロキョロする翔のほっぺたをつついて



「しかし。 まさか斯波っちの子供とウチの子供がこーやって並べられるとは夢にも思わなかったけどな~。」



しみじみと言った。



「ほんとね。柊は竜生たちと少し年が離れているから、こうして同じ年のお友達がそばにいるのは嬉しいわ。」



絵梨沙も笑った。





真尋が戻っているということは



「も~~、また泣かれちゃったしさ~。 なんなんだよ、もう~。」



八神はまたも久々に会った愛娘・桃に泣かれたことを散々グチった。



「もう1歳過ぎたんやろ? 一番、ひとみしりする時やん。」



志藤はあまりにいつも同じことで悩む八神に笑った。



「おれは毎日携帯に入れた桃の写真を眺めてるっつーのに。 ほんっと美咲はどーでもいいんだけど、桃に会いたくて帰ってくるのに・・」



八神はそう言いながら携帯を取り出して、写真を見てため息をついた。



「ほー。 かわいいやん。 美咲ちゃんにも似てきたなあ・・・」



志藤は覗き込んだ。



「いや! おれに似てるって実家ではみんな言ってますから!」



「アホなこと張り合って。」



八神はそこにいた斯波に目をやり、



「斯波さんとこの赤ちゃんもかわいくなったでしょう? 写真とかないんですかあ??」



と、いつものように無神経な問いかけをした。



斯波はペンをピクっと止めた。



「スマホの写真、たまに見たりしてニヤけてるんじゃないですかあ?」



能天気に言う八神に



「おまえなあ、ムダ口ばっか叩いてねえで! 真尋がいる時間は限られてんだぞ! この間に今度のCMの話も進めておかなくちゃなんねえんだからなっ! スケジュールはだいじょぶなのかよ!」



斯波はいつものように怖い顔でそう言った。



「あ、や・・ハイ・・」



またも地雷を踏んでしまったことに気づいた八神は幽霊のようにその場からさーっと立ち去った。



志藤はそんな彼を見て笑いをかみ殺しながら



「あんな顔して。 スマホの待ち受け、ヨメと子供やで~~~。」



八神にスーッと近づいて囁いた。



「え! ほんとですかあ?」



「おれこの前偶然見ちゃってさあ。 慌てて隠してんの!」



「やっぱ斯波さんもただの親バカなんですねえ、」



二人はコッソリそう言って笑い合った。


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