【第33話】火器暴虐レーセン
ハローィを縛った兵器レーセンの触手は樹木のように育った。
「なぜ持ち手である私を囚えるんだ…!」
縛られたハローィは下半身と両腕が触手の樹に埋もれて身動きができない。
「残念であったな、地下の我が細胞は既にワシの支配下にある。ワシのモンじゃ返してもらうのは当然のことじゃろう?」
───かつてこの世には二つの強国が凌ぎを削る時代があった。
古老の歴史深い王国と新興繁栄の帝国。
和を尊ぶ王国と力で数多を支配する帝国の二国が存在した。
最初は拮抗したパワーバランスだった。
しかし手段を選ばない帝国の隆盛は著しく、王国すら飲み込もうとする勢いで領地を拡大させていった。
誰しもが帝国の天下を確信した時代であった。
だが帝国は世界を手中に収める前に当時出現した魔王によって影も形もなく滅ぼされてしまった。
魔王は巨大に空を飛び、人の手の届かない空高くから地を埋め尽くすほどの焼夷弾をばら撒いて人を殺しに殺しまくった。
もしも最悪の魔王は?というアンケートがあれば一部マニアを除けば答えは一致するだろう。
推定殺害者人数、3.9億人───
最も人を殺した狂気の魔王、それが火器暴虐の魔王である。
そしてその魔王こそ黒の王の配下の一人、赤いゴブリンのレーセンであった。
「さて、男を縛り上げるのは趣味ではない。縊り殺すか」
グッとレーセンが手に力を入れた。
「ぐぐぐっ…」
首や体に巻き付く触手の圧力がきつくなりハローィは苦しくなる。
息ができない。
「ワシらは災害よ。出逢えば詰み。理解もできん。意味もない。蹂躙とはそういうモンだ」
レーセンにハローィを殺す理由はなかった。
ここで出会ったのも偶然。
むしろ黒の王が唯一「殺すな」と名指ししたラナといた王子だ。
後を考え体裁を取るならば殺さない事が得策であった。
しかし殺す。
レーセンは殺すのだ。
「う〜ん…」
その時だった。気を失い倒れていたラナが寝返りをうった。
チラリと太ももが露わとなる。
下着が見えるか見えないかのギリギリだ。そのギリギリさが男たちの理性を掻き立てた。
「ふむ…」
少しだけハローィを圧迫する力が弱まった。
「なんと極上な女だ。黒の王が欲すのも理解できるな」
「ラ、ナに…手を、出すな…!」
「お前の妹か?恋仲か?母ではなかろう」
「妻となる、人だ…!」
「なんとなんと…、ワシの好み100%ではないか!」
レーセンは意識のないラナに近寄った。
「ワシの最終兵器もピンコ起ちであるぞ。ガハハ!男付きの女以上に唆る者はない!それも夫婦となる前となれば!ガハハ!最高だ!」
レーセンはラナの胸を鷲掴んだ。ムニムニと柔らかさを堪能する。
これ見よがしにハローィにその様を見せつけた。
「むむ!ブラをしていないのだな!」
胸元から服の中を覗き込んだりする。
「や、やめろぉおおお!!!」
「風呂に入っていない様だがそれはそれでアリ、ワシはアリだ」
至る箇所からの匂い確認は男の嗜みだ。
パンツだって見てしまう。
ハローィがうるさかったので触手で口を塞いだ。
今はまだ殺さない。事が済み、絶望の中殺してやることにした。
黙って見ておれとレーセンはラナの顔を近づけた。
柔らかいプニプニした唇に舌舐めずりをする。
「弱さとは罪よ。己を断罪する咎だ。お前の弱さがこの娘を涜す」
「ムゥー!ムゥー!!」
言葉にならない叫びはラナには届かない。
「陵辱とは男の誉れと知れ!…れ?」
ナイフがレーセンの右耳上のこめかみに突き刺さっていた。
クガクのナイフだ。
鋭い、尖過ぎるクガクのナイフは脆弱なラナの腕力でも容易に堅い頭蓋の先まで突き刺すことができた。
刃は脳まで達していた。
ブクブクと血の泡を口にたててレーセンはラナに重なるように倒れた。
「ハァ…ハァ…。死んだ?」
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