第46話 幽霊撮影コンテスト(2)
「幽霊撮影コンテスト」はオカルト業界を揺るがした。特に「ゴーストマター派」と呼ばれていた過去を持つ科学者たちの目の色が変わった。ようやく「オカルト」を科学にすることが出来るのだ。賞金?そんなものはおまけに過ぎない。今までの研究成果を、形ある「映像」で知らしめるチャンスが目の前にあるのだから。
彼らは自分たちのとっておきの「心霊スポット」で、嬉々としてSSDカメラを回す。人気のない深夜のトンネルや廃墟、森の奥地や墓地で歓喜の声が暫し上がることとなった。
「プロミナレンズHD(Promina Lens HD)」はSSDカメラの地球での製造元だ。長年にわたり光学技術の分野で革新的な研究と開発を行ってきた企業で、通信、情報技術、宇宙探査、医療イメージング、教育などの分野で優れた成果を上げていた。プロミナレンズはISCO加盟企業である。そのため今回の「幽霊撮影コンテスト」の主催者代表となり、コンテスト参加者から送付されたSSDカメラの検証を、本社地下室で行っていた。同席しているのはISCO幹部と「オカルトサイエンスリサーチセンター(通称:OSRC)」の科学者数名。それからSSDカメラを製造した、ISCOに加盟していない光学企業の技術者たちだ。
プロミナレンズの地下室には100を超えるSSDカメラケースが山積みされていた。 ISCOの幹部の一人が感嘆の溜息を吐く。
「コンテストを発表して、SSDカメラ販売開始からまだ1ヶ月。応募受付開始から一週間なのに、もうこんなに応募があったんですか。すごい反響ですね」
「購入した時のケースに入れて業者に出せば、そのまま応募できるようになってますからね。応募者の送料は無料にしたし、応募しやすかったんですかね?」
「いやいや、『イリュミナ』さんの功績も大きいと思いますよ」
「イリュミナテック(Illuminatex)」はISCOに加盟していないながらもSSDカメラの製造販売を担っていた光学企業の一つだ。イリュミナテックは光学工学者とエンジニアのチームによって設立された企業で、彼らの技術はゲーム、深海探査、バーチャルリアルィティ、エンターテインメント技術などの幅広い分野で応用されている。
「弊社のSSDカメラはISCOの要求事項を満たしつつ、徹底的なコストカットでユーザーがお買い求めしやすくさせてますから」
イリュミナテックの技術者が誇らしげに言うと、プロミナレンズの技術者が苦笑しながら答えた。
「いやあ、そう来るとは思いません出した。ウチは逆に装備てんこ盛りにしちゃったんですよ。ウチのSSDカメラ1台でイリュミナさんのSSDカメラ5台買えますから」
「そうか。プロミナさんのをSSDカメラを1台購入して1回応募できるのに対して、イリュミナさんのなら同じ金額で5回応募できるんですね。イリュミナさん、思い切ったことしましたね」
「カメラが安い方が、応募が集まると思ったんです。解像度もギリギリまで下げて、ほとんど使い捨てカメラみたいなスペックにしました」 「それが、このケースの山なんですね。確かにイリュミナさんのSSDばっかりだ」
「逆にプロミナさんのSSDは高性能すぎて、手元に置いておきたいのかもしれませんね。何か所か撮り貯めしてるかもしれませんよ」
「あり得ますね」
ISCOの幹部は感心しかしていない。
「問題はこのSSDカメラの山から、本物の『幽霊』が映し出されていることと、実際に我々が現地に行って再現できるか、です」
OSRCの科学者が冷ややかに言った。
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