第四話 不良娘と夢の国

 パパのピンク色のキャデラックは、絶妙なタイミングで校門に派手な音を立てて止まった。

 今日はブルージーンズに白いシャツと、シンプル・イズ・ベストなパパ。


「よう、さくら。ちゃんと彩乃ちゃんもいっしょだな」

「よう。じゃないでしょ! 娘とその大親友にサボりを命令するなんて、私達が不良になったらどうするのよ?」

「しょうがねえだろ! 河原で女子小学生をナンパしたんだけど、ジェネレーションギャップで話が合わないから、助っ人を呼ぼうと思ったんだよ」

「娘をナンパの道具に使うなぁ! それに女子小学生相手は犯罪よ!」


 キャンキャン怒ってる私を無視して、パパはあやのんに合図した。

 リアシートの女の子を見て、あやのんがパァッと笑った。


「やっぱり……まゆりん!」

「え? パパ、まゆりんをナンパしたの?」

「もう学校が始まってるだろうに、笑顔の可愛い子が一人で暗い顔して河原にいたからよ。……こんな時は、友達とはしゃぐのが一番だと思わないか?」


 ニヤッと笑って、ウインク。

 あやのんが右側の後ろのドアを開けて乗り込む。

 私は、左側から。やたらに大きいリアシートで、二人でまゆりんをサンドイッチにしちゃう。

 もう、絶対に逃さないんだから!


「さて……出かける前に、着替えだな。そんな、いかにも小学校をサボりましたって格好をしてたら、どこに行ってもすぐに補導されちまうよ」

「しょうがないじゃない。本当に教室から呼び出されたんだし。……ね~っ」

「ね~っ」


 まだノリの悪いまゆりんは、そのままにして、あやのんと二人で抗議。

 パパは顔をしかめて、どこかに電話をかけた。


「あ……。冬月さん? 香坂です。お店は週末にオープンですよね? 忙しい時に悪いんだけど、今から小五女子を三人連れて行くんで、とびっきりの不良娘に仕上げてくれないかな?

 ……そう、一人はさくらで、あとはその友達。学校をサボって遊びに行くなら、それなりのファッションで決めてかなきゃ! じゃあ、今からそっちに向かいます」


 話が決まったらしく、パパが振り向いて、私のサングラスを投げ渡した。

 何だか私の名前も出てたので、訊いてみる。


「冬月さんって誰? 私のことを知ってる人?」

「ほのかの……さくらのママのアイドル時代のスタイリストだった人だよ。表参道でキッズブランドの店を週末にオープンするんで、挨拶に行かなきゃと思ってたからちょうどいいや」

「あの……そんな時に行ったら、迷惑じゃないですか?」

「むしろ、大喜びしてるよ。モデルにして写真を飾りたいから、さくらを連れて来てって頼まれてたんだ。彩乃ちゃんに、まゆりちゃんもセットなら、なお良し」

「また、そういう事を勝手に決めてる!」


 シートベルトをしたら、派手にタイヤを鳴らしながら方向転換。

 教室で、うらら先生の目が吊り上がっていそうだよ……。


「それじゃあ……原宿表参道経由、夢の国行きとしゃれ込みますか?」

「わぁ……実は私って、夢の国……初めてなんです!」


 と、あやのんの爆弾発言。

 うそぉ……あそこって、千葉とはいえ東京の隣りで、ウチからなら高速道路を使わなくても、一時間もかからないのに……。


「あやのんの家って、遊園地嫌いな家だっけ?」

「ううん……遊園地というか、テーマパーク嫌いなのかな? 遊園地なら、浅草はもちろん、稲城のとか、河口湖の方のでジェットコースター乗ったこともあるけど、夢の国に行こうって話にはならないのよ」

「だから、あやのんってあんまりキャラクターグッズ持ってないんだ」

「うん、ウチにあるキャラクターグッズって、さくらちゃんパパのくれる香坂誠也グッズくらいよ?」

「俺はネズミやウサギと同じ扱いかよ……」


 ハンドル片手に凹むパパに大笑い。

 あ……やっと、まゆりんも笑ったよ。


☆★☆


「えっと……『レトロドリーム』って読むの?」

「正解。『懐かしい夢』って意味だと思ってりゃあ、間違いない」


 まだ開店準備中のお店の隣り、本当は荷物を下ろすトラックを停める場所らしいけど、そこにパパの車を停める。


「ちょっと……高そうなんだけど……」

「パパはもちろん、死んじゃったママも知り合いらしいから……」

「大丈夫かな……」

「パパの我が儘なんだから、気にしちゃダメだって」


 良く知ってる子供服専門店とはまるで違う、ブティックなお店の雰囲気にまゆりんはもちろん、あやのんまで引きぎみ。

 マイペースすぎるパパは、子供だって遠慮くらいする! なんて思いもしない。

 絶対に私たちを、最高の不良娘に仕立てることしか考えてないよ!


 カランとドアを開け、パパが店に入る。

 置いて行かれたら、自分たちでドアを開ける勇気なんて無い私たちは、しっかり手をつないで後について行く。

 気後れしたって、三人で手をつなげば大丈夫!

 まゆりんと手をつなぐの、久しぶりだ。


 とたんに、私はパパとお爺ちゃんの間くらいの歳の女の人に抱きつかれた。


「わぁ! やっと会えた。……あなたが、さくらちゃんね。本当にミニほのかだわ、この娘……」


 赤いニットに黒いデニムパンツ、髪を後ろでくくったキレイな人。

 私の顔をのぞき込んで、少し目がうるんでる。


「小学校時代のほのかって、きっとこんな顔してたのねぇ……。もっとも、あの娘と違って、あなたは元気いっぱいね」

「冬月さん、そのくらいで勘弁してやって。さくらが目を丸くしてる」

「ごめんごめん……初対面でこれじゃあ、私は変なおばさんね」

「いえ……ママのことが大好きだったんだなぁって、伝わりました」


 そんな感動的なシーンを横に、パパは店員さんらしき女の人に囲まれて、サインしたりツーショット撮ったりしてるし……。

 そんな様子に、私以上に冬月さんが呆れてる。


「しょうがないわね……しばらく休憩。開店スケジュールに無理矢理押し込んだんだから、香坂くんはウチの店員バイトたちが、素直に残業するようにサービスしてあげて」

「了解。……でも冬月さん、どうよ……その三人。イケてるだろ?」

「期待以上よ。 こっちの大人しそうな娘もいいし、この娘もなかなか……」


 にんまりと獲物を見る目でチェックされて、あやのんもまゆりんも冷や汗タラリ……。

 すっと半眼になったから、きっとどんな風に仕上げようかって考えてる。


「さて……まず誰から仕上げようか?」

「私から、お願いします。……まゆりんは、あまり慣れてないし、さくらちゃんは最後のお楽しみにしたいでしょうから」


 仕方がないと、あやのんが覚悟を決めた。


「うんうん……素材だけでこれだから、かなりのものね。ちょっと磨いたら、どうなるか見物だわ、この娘」

「気合が入ったね? たぶんお子様パンツだろうから、下着レベルから磨いてやってよ」

「パパ! 大声でそれ言うのはデリカシー無さすぎ!」


 ほら、あやのんも真っ赤になっちゃったじゃない。

 三人ともスカートを押さえてるから、パパの言う通りなのかも知れないけど!


「あやのん、どんなになっちゃうんだろうね?」

「元がキレイだからなぁ……。でも、ここの服って普段のあやのんと路線が違うような?」

「色使いも華やかだもんね……。いつもと違うあやのんが見られそう!」

「……うんうん!」


 七割くらい揃ってる商品の中を連れ回されて、服の上から似合うかどうか重ねられてる。

 そんな、あやのんの後を追いかけながら、ヒソヒソ話の私とまゆりん。

 そう言うまゆりんだって、あやのんの次に着替えさせられるんだぞ!


「あ……お洋服が決まったみたい」


 ちょっと大きめの試着室に、あやのんと冬月さんが消える。

 カーテンの下に見える足元に、あやのんのワンピースが落ちた。

 靴下脱いで……肌着と……きゃあ~パンツも脱いじゃった。

 カーテンの向こうであやのん、丸裸?


「こんなシーン、男子が見たら大騒ぎだ」

「さくらちゃんって、ときどきオジサンっぽいこと考えてるよね」

「うぅ……っ。それは反省」


 そんな風にまゆりんに叱られてる間に、あやのんのお色直しが終わったみたい。


「カナちゃん、メイクしてあげて。その後はマキちゃんがヘアをお願い」


 ブランドロゴの入った紙袋に、あやのんが着ていた服をたたんでしまいながら、冬月さんがお店の人に声をかける。

 出てきたあやのんは……おぉ。

 上半身は、ぴったりフィットした黒のニット。ハイウェストのスカートは鮮やかなローズピンクなサテンのフレアスカートがふわり。

 凄く大人に見えるよ。……特に真珠のネックレスが揺れる、胸のあたり。

 あやのんなんだけど、あやのんじゃない!


「さくらちゃん、この服……変じゃない?」

「変じゃないよ! 初めて見るあやのんだけど、絶対に似合ってる!」

「そ、そう……自分じゃ絶対に選ばない色使いだから、気になっちゃって。でも、さくらちゃんが言うなら……似合うんだよね?」

「びっくりだよ……プロの人って、凄いんだね」

「本当に……。このままメイクとかしたら、どうなっちゃうんだろう?」

「あやのんの美少女ぶりが、限界を超えちゃうね」

「やめて……ドキドキし過ぎて、心臓が弾けちゃいそうなのよ」


 バラ色の頬で、目をキラキラさせたあやのんは、メイクをしなくてもキレイなんだよ。


「それにしても、あやのん……また大きくなってない?」

「シルエット重視で、胸にパットが入ってるのっ! 私だって、まだ小五の女の子なんだから、こんなにあるわけないでしょ!」

「ごめん、あまりにも自然に見えるから……」


 両手で胸を隠したあやのんは、カナちゃんらしき人に連れられて、メイクされに行く。

 まゆりんは、不安そうに試着室へ。

 私は仕方なく、一人でワクワクしながら待ってる。


 ほどなく、まゆりんも完成。

 まゆりんは、鮮やかなカナリアイエローのホルターネックのワンピース。大きな襟や袖口、ボタンなんかは白でアクセント。スカートはあやのんよりちょっと短めな膝丈の広がった襞スカート。

 大きく空いた背中が、かなり大胆です!


「わぁ……まゆりんが女の子してる」

「お、おかしくないよね? こういう格好あまりしないから、不安なんだけど……」

「おかしくなんか無いって! まゆりんらしい明るさと、まゆりんらしからぬお淑やかさが一緒になって、もの凄くカワイイ!」


 なんて歓声を上げてると、冬月さんに呼ばれた。


「ほら、次はさくらちゃん。……もう服は決めてるから、こっちにおいで」


 まゆりんはメイクに、私は試着室に、ついでにあやのんはヘアメイク中です。

 試着室に入った途端、ズバッと迷いなく服を脱がされる。……パンツも。

 ……これがまゆりんたちも通った試練なのね。


「パ、パンツまで替える必要あるんですか?」

「オシャレは気合よ。身につけるもの全部を変えちゃえば、開き直るしか無いでしょう?」


 冬月さんは、肩を竦めてクスクス笑う。

 私は生まれて初めてのシルクの下着に、ドギマギしてる。


「あぁ……ほのかと違って、まだ胸元は寂しい感じね」


 残念そうに、そんな事を呟かないでぇ……。

 ママはほっそりしてる割に、胸はボリュームあったといつもパパが言ってるし、私はそれで慰められてるし。


 淡い黄色のカットソーを被って、白いペチコートを履いて。私のスカートはサテン地の、眩しいくらいのスカイブルーに白い水玉の落下傘スカート。

 上に白と水色のストライプのシャツを羽織って、ボタンを止めずにウエストでギュッと縛るのは、やはり足りない胸のボリュームを補う為ですよね?


「ママの昔の写真だと、あまり派手な色を使って無かったような……」

「だって、ほのかはちょっと目を離すと、消えて無くなっちゃいそうな女の子だったのよ? 色は控えめにしないと、服ばかり目立っちゃうの。……本当に勉強になったわ、あの娘の衣装選びは」


 懐かしい目をした冬月さんに押し出されて、メイクをパタパタ。

 眉毛を描いたり、睫毛まつげを盛られたりして、どんどん私じゃなくなっていくみたい。唇をピンクに染められて、ヘアメイクに。

 セミロングの髪を内巻きにして、ボリューム加えて……おお、前髪を全部上げられて、黄色いヘアバンドで決めっ!

 耳飾りなんてつけられて、ちょっとくすぐったい。


「は~い、さくらちゃんも完成です!」


 青いエナメルのパンプスを穿いて、お店の奥へ。たった三センチとはいえ、踵のある靴が、大人って感じをアピールしてくるね。

 まだマネキンが並べられる前の、白い床と壁があるだけの場所で、もうあやのんとまゆりんの撮影が始まってる。

 七年くらい大人になった感じのあやのんが素敵過ぎる!

 背中にたらしたロングヘアを巻き髪のアップにして、真っ赤なルージュを引いた美貌は、もうすっかり大人!

 対するまゆりんも、毛量が多いと悩んでるボブの髪を、ボリューム感のあるポニーテールに括られて、スポーティーな美少女に化けてる!

 そんな二人においでおいでされて、私も間に並ぶ。


「さくらちゃん、カワイイっ! ちょっと生意気そうで、小悪魔風味?」

「まゆりんのポニーテールには負けるよ。 元気さ倍増で、今度学校でもすれば?」

「ウンウン、まゆりんの髪型は学校でもいけそうよね」

「あやのんは、そのまま学校に行ったら大変だ。それでランドセルを背負ったら犯罪だよ?」

「からかわないでよ! 恥ずかしいんだから……」


 そんな風に褒め合ってる間も、シャッターは切られ続けてる。

 服装が大人びてる分、子供っぽい普段の表情が新鮮だもんね。


「はい、さくらちゃん。サングラスを下にズラしてこっち見て……うん、いい表情だよ」


 最初は照れていても、上手に煽てられて、だんだんノッて来る。

 ポーズや表情作ったりと、何やっても褒めてくれるから、最後の方は悪乗りしすぎた気がする。

 パパも一緒になって、スマホで撮影してるし……。


「こういうの、ロカビリーファッションって言うんだって」


 くるっとターンして、楽しそうにスカートをひるがえしつつ、まゆりんが笑う。いつもボーイッシュだから、まゆりんのスカート姿は珍しい。

 すっかりお姉さんな感じになっちゃったあやのんは、ちょっと色っぽく微笑む。


「こういう踵のある靴のコツコツって足音、ちょっと憧れてたんだ」


 ちなみにパンプスの色は、あやのん赤、まゆりん黄色、私は青の信号機状態。

 みんなでサングラスかけちゃって、ちょっとコスプレ風味?


「さて、不良娘たち。食事はちょっと早めに、どこかのファミレスで済ませてから行くか? それとも夢の国のレストランがお好みかな?」


 夢の国未経験なあやのんは置いておいて、まゆりんと私で徹底討論。

 結果は……。


「あそこは高いから、途中のファミレスで食べていこうよ。それに行くからには色々楽しみたいし、食事の時間で待たされるのはもったいない!」


 黄色い看板のファミレスは、まだ時間が早いせいか、席にも余裕がある。

 今日のランチは……と悩んでいたら、パパにメニューを取り上げられた。

「ええっと……マルゲリータピザに、スパゲッティボロネーゼ、ハンバーグは……二種類くらい必要か……」


 と、メニューを片っ端から頼み始める。

 あやのん、まゆりんが目を丸くする中、私は冷静にツッコむ。


「パパ……ちゃんとサラダも頼まなきゃダメだからね。いくら自分が嫌いでも、女子はお野菜必須なんだから」


 渋い顔のパパを残して、ドリンクバーへ。

 パパはアイスコーヒーで良いはずだからね。

 

 注文が届くと、テーブルはパーティー状態になった。

 取り皿をお願いして、みんなでシェアして食べるのが最高なんだ!

 いろんなお料理をちょっとずつ味わう。つい、ピザに唐揚げを乗せちゃったりして……。

 こんなに食べられるか! のはずが、いつの間にか無くなっちゃうし……。

 パパがいっぱい食べたことにして、気にしないようにしよう!

 ウエストがきついのは、きっと何かの間違い。


 お会計の間、先に店の外に出たら、お巡りさんに出くわしちゃった!

 ちらっとこっちを見たけど、何も言われずにセーフ。

 びっくりしたよぉと騒いでいたら、パパが一言。


「そのくらい、ぶっ飛んだ格好をしてりゃあ、学校をサボってるように見えないって……。バカバカしすぎて、何かの撮影だと思ってくれるだろう?」


☆★☆


「ここが噂の夢の国かぁ……」


 シンボルのお城をながめて、感動してるのはあやのん。

 パパにスマホを渡して、まゆりんと二人であやのんを挟んでポーズ。

 あやのん初の夢の国、記念写真だ。

 でも、平日の昼間なのに、この人出は何? お休みの日ほどじゃないけどさ。

 他のお客さんたちも、ネズ耳カチューシャとかを付けてニコニコ。

 でも、私たちなんて到着前から、仮装パーティー状態なんだからね!

 はしゃぎ具合で負けるはずがないのです。


「まず最初は……景気づけにジェットコースター?」


 謎のあやのん理論に乗って、水に飛び込むやつから行ってみようか。

 私もまゆりんも、どんな順番でも楽しめちゃうタイプだし。

 水に飛び込む時の写真で笑って、記念に買ってもらっちゃう。

 お休みの日よりお客さんが少ないから、行列が短い。行列が短いから、早く乗れる。早く乗れるから……いろいろなアトラクションを一気に楽しめる!

 うっかり置いていかないように、忘れずにパパの手を引っ張って。

 ほら、そうすればこうして、アイスクリームも買ってもらえるもん。


「俺は、おサイフ係か?」

「いいじゃない、美少女三人侍らせてるんだから」

「まぁ……普通のデートに比べりゃあ、安いもんだけどな」


 渋い顔して、まゆりんとあやのんを抱き寄せる。

 仲間はずれは嫌なので、そのままパパに寄りかかってやった。

 ちょうどパレードが通りかかったので、しばらく休憩して眺める。

 楽しいよぉ……。カワイイよぉ……。


「ねえ、まゆりん」

「なあに、あやのん?」

「もう、悩んでるの……すっかりバカバカしくなったでしょ?」


 一瞬、きょとんとした顔したまゆりん。

 でも、すぐに笑い転げた。


「そりゃあそうだよぉ……。こんな、あり得ない時間に、あり得ない場所で、あり得ない格好をしているんだよ? 少しは悩ませてよと、言いたくなるくらい!」

「あ……こいつ、すっかり忘れてたな?」

 

 パパを挟んでの、あやのんのくすぐり攻撃。

 確かに、夢の国のど真ん中で、こんなド派手な格好して悩むなんて無理!

 鏡を見たって、自分に似た別の人としか思えないよ。

 まゆりんも私と同じで、冬月さんのお店でパンツと一緒に、自分を脱いで着替えちゃったんだよ、絶対。

 あやのんに加勢して、まゆりんをくすぐりまくる。

 逃げるまゆりんを、二人でキャアキャア言いながら追いかけ回して笑った。


 でも、おバカで不良娘なシンデレラたちの夢の時間も、永遠じゃない。

 夢の国の街灯がポツンと点いた瞬間、真顔になったまゆりんが息を呑んだ。


「いけない! 全然、家に連絡してないよ!」

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