第五話 うらら先生の授業
「はい、鈴本ですけど……」
「あ……光太郎? お姉ちゃんだけど、ママいる?」
「ママ? ……いないよ」
「いないって、何で?」
「さっき、お姉ちゃんの担任の先生に呼び出されて……『こう坂』っていうお蕎麦屋さんに行ったよ?」
「それ、マジ?」
「うん、マジ」
青い顔して、まゆりんがスマホの通話を切った。
あやのんも家にかけてみたけど、あやのんママもウチに呼び出されてるよ……。
まずい、怒られる……。と、頭を抱える不良娘たち。
雰囲気を確かめようと、私が家にかけてみたら……。
「とにかく、気をつけて早く帰ってらっしゃい」
と、ことさら優しい声で繰り返すだけのお婆ちゃん。
状況を何も教えてくれない所が、怖すぎる……。
「最悪。今晩の飯抜きは覚悟しておいた方がいいかもな」
渋滞にハマりつつ、一人だけ気楽な、大人のパパが脅かしてくれる。
もうすっかり遠慮の無くなった不良娘三人は、「女子とはいえ、育ち盛りの食欲をナメるなぁ!」と盛大に抗議して、車をドライブスルーに入れてもらい、てりやきバーガーセットを確保した。
うん、これで晩ごはん抜きの仕打ちにも耐えられる。
「あ……定休日なのに、お店に灯りがついてる」
「見なれた黄色い軽自動車があるね……」
「うらら先生もいるのか……仕事熱心だぁ」
みんながどこで待ち構えているのか、そしてそのメンバーまでわかってしまう。
車を降りたものの、なかなかお店に入る決心のつかない私たちを、パパがニヤニヤ笑いながら見てる。
三人で必死に拝み倒して、先に入ってもらった。
「ただいまぁ。今帰ったよ」
「何がただいまだ……。よそ様の大事なお嬢さんたちをいつまで連れ回してやがるんだ」
売り言葉に買い言葉の、パパとお爺ちゃん。
その隙にササッと店の中に入る。
「「「……ただいま。遅くなってごめんなさい」」」
目いっぱいの反省顔で、三人並んで頭を下げる。
なのに、怒られる前に笑われたよ……なぜ?
あやのんママが苦笑いしながら歩み寄って、あやのんを抱きしめた。
「もう……大人ぶるのはいつでもできるのだから、もうちょっと子供でいなさい」
「……叱られるのかと思った」
「自分で、何を悪い事をしたのかはわかってるのでしょう? ちゃんと良い事だってしてるのだから、お母さんが叱るのは、あなたの背伸びだけ……。もう少しの間は子供でいてくれないと、寂しいわ」
「ごめんなさい……今日は成り行きでこうなっちゃった」
「悔しいけど、もう似合っちゃうのね? そういう服も……」
まゆりんママは、腕組みしながらまゆりんを見てる。
「そういう女の子らしい服も似合うんだ……。ごめんね、気が付かなかったよ」
「私も、今日始めて知ったよ。プロのスタイリストさんって、さすがだねぇ」
「今度一着くらいは、彩乃ちゃんみたいなワンピースも買っておこうか?」
「もったいないよ! どうせ恥ずかしがって着ないもん」
「バカねぇ……。それじゃあ、もしデートに誘われたらどうするのよ?」
「で、デートって……それは無いって」
「それだけ可愛くなるってわかったら、男子が放っておかないわよ」
「からかわないでよ……ママ」
何だか、予想と保護者の反応が違う……。
私も何か言ってもらおうと、お婆ちゃんの前に行ったら
「さくらは……誠也が絡むとそんな感じだしね……」
の一言で、流されちゃった。
私だけ何だか、扱いが酷いんですけど……。
せめて、何でこうなっているのか知りたくて、うらら先生に尋ねる。
呆れ顔の先生は、タブレット端末を取り出して、見せてくれた。
「あのね、香坂さん。今の時代はSNSが発達していてね……」
一番メジャーな鳥さんアイコンのSNSで、『香坂誠也』と入力して、検索を始めた。
そうしたら、出るわ出るわ写真入りでいろいろと……。
「でもって、コレを時間順に並べると……。まず原宿の『レトロドリーム』という開店前のショップでドレスアップして、ファミレスでミニパーティーやって、夢の国で遊び倒してたってわかっちゃうのよ。……便利でしょ?」
パパと一緒にいると仕方がないとはいえ、いつこんな写真撮られたの?
シンボルのお城を背にの記念写真も、別アングルからパパ入りで撮られてるし、アイスを食べながらパレード観てる所も撮られてる。
並べ替えたら、回ったアトラクションの順番までわかっちゃいそう……。
撮られてる方からしたら、怖いよ……。
「まあ、今日は目立つようにしたからな。予想通りだ」
「パパはいつも、こんな風に撮られてるの?」
「いつもはもっと目立たないようにしてるさ。……今日は目立った方が、安心する人が多いだろう?」
「もう! 怒られるぞって、さんざん脅かして!」
「あのね、香坂さん。本当は、担任としては怒らなきゃいけない所なのよ?」
うらら先生が腕組みして、軽く睨む。
でも、すぐ優しい笑顔に変わった。
「とはいえ、この写真……。久しぶりの鈴本さんらしい笑顔を見たら、怒るわけにいかないでしょう? むしろ、みんながお母さんたちに、怒られないようにしてあげるのも担任の仕事かなぁって」
「……お世話かけます。うらら先生が担任で良かった」
話が一段落したと見てか、お爺ちゃんが咳払いをする。
「そんなトボけた格好のまま、家に帰るわけにもいかないだろう? 風呂を沸かしてあるから、三人とも、その子供らしからぬ化粧を落としてこい!」
「ありがとうございます。……このまま家に帰ったら、弟に笑われるよぉ」
「私なんて、道場に連れ出されて、お父さんにしごかれるわ……絶対」
「お風呂こっちだよ。面倒くさいからいっしょに入ろう!」
「あ……彩乃、コレ持っていきなさい。メイク落とし用の洗顔石鹸」
三人で大騒ぎしながらお風呂に入って、初めてのメイク落としに挑戦!
髪も洗って、いつものお子様パンツを履き直す。
不良娘にさようなら。普通の小学五年生に戻った。
お風呂から上がれば、パパもうらら先生も、もう帰っちゃってた。
私たちの夢の一日は、もう終わっちゃたんだなぁとちょっと寂しくなる。
お爺ちゃんの打ち立てのお蕎麦を、お詫びにとお土産にして、あやのんとまゆりんもお母さんといっしょに帰って行った。
ちょっと寂しくなって、私も仏壇のママにご報告。
「あのねあのね、今日はママのスタイリストさんだった冬月さんにオシャレしてもらったんだよ?」
仏壇のママの写真は、やっぱり心配そうに私を見てる。
心配ばかりかけて、ごめんね。
その夜、スマホにパパからメッセージが届いた。
『あとは、浮橋先生に任せろ。悪いようにはしないはずだから。
先生のやることに協力してやるんだぞ?
それから、面倒くさがらずに、ちゃんと女子とも付き合っとけ』
☆★☆
「お早う! さくらちゃん、あやのん!」
集団登校の列が学校に到着すると、校門の脇でまゆりんと守谷さんが待っていた。
何だか照れくさそうな顔を見て、笑い合う。
「さては……照れくさくて教室に入りづらくなってるな?」
「ううっ……あやのんはともかく、さくらちゃんにまでバレバレとは……」
失礼なことを言いながら、オーバーに驚くまゆりん。
あやのんと頷きあって、手を差し伸べる。
「不良娘仲間だもんね。みんなで手をつないで行けば怖くない!」
「うん!」
「……私も入れてぇ!」
守谷さんも含めて四人で手をつないで歩く。
廊下なんて狭いし、ジャマになるから、横歩きしちゃったりして。
ちなみに昨日で気に入っちゃったのか、まゆりんの髪型はポニーテールになってる。
少し女の子らしくなって、いい感じ!
「「「「おはようっ!」」」」
四人揃って、教室に元気で挨拶。
ホッとしたのか、教室の雰囲気が解れるのがわかって嬉しくなる。
その教室に、すでにうらら先生が来ていて、何やら機械をイジってるよ。
黒板にスクリーンが広がっていて……
ピント調節が……なかなか難しそう。
その隙に、素知らぬ顔で黒板に歩み寄って『サボリ 大川、香坂』の文字を消した、あやのんナイス!
「窓側の人は、暗幕を引いておいてね。……今日はちょうど良い教材が入ったので、時間割変更。一時間目の算数と六時間目の道徳を入れ替えます」
ようやく満足のいく画面になったのか、嬉しそうにうらら先生は教壇へ。
今日は誰の欠席も無い出席を取ってから、イタズラっぽく笑った。
「じゃあ、さっそく道徳の授業を始めようか……まず、可愛い写真を見せちゃおう」
タブレット操作で映し出した写真に、何故か笑い声(?)と歓声が起きた。
……って、これ昨日の私の不良娘バージョンの写真!
冬月さんのお店で撮った、気取ってポーズを決めてるヤツ!
「先生、何でこんな写真を持ってるの?」
「不正はしていません。ちゃんと夕べ、香坂さんのお父様からいただきました」
クスクス笑いながら、数パターンを映し出す。
みんな、なんで笑うのよ?
もう何とでもして下さい!
「こうしてみると、やっぱり香坂さんは可愛いわね……。でもって、香坂さんがあるということは……大川さんのもあるんだな」
出た! あやのん大人バージョン。
こちらの反応は、どよめきと男子のため息。……ずいぶん違うんじゃないの?
その視線はどうもあやのんの胸に集中してるようで……。
「やっぱり、大川って……」
「すげぇ……デケえ……」
「パット! ニットにパットが入ってるの! さすがに小学五年生でこんなに大きかったら、困っちゃうわよ……」
素直過ぎる男子の反応に、たまらず真っ赤な顔で机を叩いて抗議するあやのん。
笑いながらも、うらら先生が釘を差した。
「こらっ、男子。それを口に出すのは、セクハラよ。……今日の授業は、そっちじゃないから慎みなさい。
それから、もう一人……」
映し出された美少女に、みんなきょとんと。誰だかわからないのかな?
「えっ? これって、まゆちゃん?」
「うそぉ!」
「鈴本って、こんなに可愛かったのか?」
さすがに一発でわかった守谷さんの声に、男子が驚く。
プロ(修行中)のメイクさんとヘアメイクさんが、見事に引っ張り出したまゆりんの魅力に、男子ならず、女子もビックリしてる。
「……と、まあ。昨日学校をサボって遊び倒してた不良娘三人は、こんな事をしてましたという報告第一弾ね。じゃあ、順を追って見て行きましょうか?」
なんと、うらら先生ってば。
昨日見せてくれた写真を、ちゃんと時間順に整理してるよ……。
「校門の所で待ち合わせして行ったのは、みんな見て知ってるよね? あの車には、すでに鈴本さんが乗ってたらしいの。それから、原宿の『レトロドリーム』という開店前のブティックに行って、この格好! これ、店を出た所ね?」
「昔、死んじゃった母の、スタイリストをしてくれていた人のお店なんです」
「なるほど……そういう関係ね。それから、近くのファミレスに移動して……」
「お前ら、食い過ぎだろう!」
テーブル一杯に、お料理が並べられた写真まであるのか!
盛大に笑われ、からかわれる。
もちろん乙女の意地として、言い返してるよ。
「みんなでシェアして食べたもん!」
「それにしても……」
「ほら、パパは大食いだから……」
「とりあえずは、そういう事にしておきましょう。それから……夢の国に繰り出したのね」
シンボルのお城を背景に記念写真のポーズを取る私たちと、それを収めようとするパパの写真。
その先はきっちりと、乗ったアトラクションの順番までわかるくらいに写真が続いていく。
家に電話して、青い顔しているまゆりんの写真を最後に、写真による不良娘たちの公開処刑は終わった。
ひとしきり笑いが治まるのを待って、先生はみんなに質問した。
「……さて。みんな、今の写真を不思議に思わなかった?」
「……?」
「ほら、どの写真も香坂さんのお父さんと、不良娘三人が写っていたでしょう? だとしたら、あの写真は誰が撮ったのだと思う?」
「あ……」
「……もしかして、SNS?」
この手のことは女子の方が敏感。
首を傾げながらの答えに、うらら先生が頷いた。
「はい、正解。私がネットで追跡しやすいようにという配慮で、香坂さんのお父様がわざと目立つように振る舞ってくれていました。……それに、個人情報が漏洩しないように、子どもたちにお化粧までして、ちょっと印象を変えてくれてたの」
おっと、あのフルメイクにはそんな意味があったんだ?
さっきのまゆりんを、幼なじみの守谷さんにしか見抜けなかったはずだよ……。
「インターネットは便利だけど、怖いよね。こんな風に他の人から撮影されていることを三人とも、まったく気づいていなかったそうよ」
「マジかよ……」
「うん……今、大人の人達はみんなスマホを持ってるからなぁ……。ネットを見てるのか、アプリで遊んでるのか、写真を撮ってるのか分からないもん」
「そりゃあそうだ。いちいちチェックしてられないよなぁ……」
「しかもネットに上がっちゃった写真とかデータとかは、完全には消えないって、前に授業でやったよね?」
そう、この写真をうらら先生のように保存してたりすると、恥は一生。
大昔のように『旅の恥はかき捨て』なんて言えない時代だ。
フルメイクしてくれた、用意周到なパパに感謝。
「それから……このクラスの子供達には逆に、撮影して個人情報をばらまいてしまう可能性があることを、改めて注意して欲しいの?」
「……?」
うらら先生の言葉に、みんな何でって顔してる。
私は……パパのお友達とか、芸能関係の人と会うこともあるから厳しく言われてるけど。
「ピンと来てない様子ね……。ウチのクラスには、香坂さくらさんがいます」
「あぁ……香坂誠也が来る可能性もあると……」
「それもあるけど、香坂さん自身も扱いが難しいのよ……。実はね、香坂さんがこの学校に入学する時に、職員やPTAが集まってガイドラインを作ったくらいなのよ?」
みんなでこっちを見ないでよ。
私だって、そんな事は初耳なんだから!
優しく微笑みながら、うらら先生が言葉を続けた。
「香坂さん自身は、普通の女の子です。……でもね、今でも芸能ニュースの語り草になってるご両親の件。それに、香坂さんのお父様自身も娘さんがいる事を隠してません。
香坂誠也の実家が墨田区の生蕎麦屋さんであることもファンの人はよく知ってます。だから、ネットで墨田区の学区を調べれば、香坂さんがこの学校に通ってることも、すぐ特定できちゃうのよ……」
「あちゃあ……。しかも私、みんなにママそっくりって言われてる……」
「それについては、先生も同意見なの……。だから、名前を知らなくても、香坂さんのお母さん……元アイドルの涼原ほのかさんの顔を知っていれば、バレバレなのよね」
改めて言われると、頭を抱えちゃう。
ネットって、便利だけど怖いよ。調べる気になれば、そこまでわかっちゃうんだ。
私目当てで来て、あやのんみたいな他の可愛い子が目をつけられることだってあるかもしれないし……。
いっそ芸能界デビューしてしまえば、パパみたいに有名税と割り切れるかもだけど、そんな気はないよ。早く誰か六代目を見つけないと、『生蕎麦処 こう坂』が後継者不足で途絶えちゃうもん!
「だから、学校内では香坂さんも、そのお父様も、一般の人と同じに接しようとガイドラインを作ったの。他にも、不審者がいないかを、まわりの商店の方々が見てくれていたりするのよ?」
「それで、この間の授業参観の時も……」
「はい。お母様方は、苦労して気持ちを抑えていて下さいました。でもねえ……」
「パパ、そういうのお構い無しで、サービス精神旺盛だからなぁ」
「そうなのよ……実は先生も昨日、サインを頂いちゃいました」
てへペロをする先生に、「ずるい!」って、みんなの非難が……。でも、学校の外ならセーフ? 一応、勤務中だからアウト?
そんな中、まゆりんが何かを思い出したように後ろの棚からランドセルを取り出す。
「そうだ忘れてた! 姫ちゃん、これ……昨日うちのママがもらってきたの! ほら、ちゃんと『姫香ちゃんへ』って書いてもらったよ!」
嬉しそうに守谷さんに渡したのは、去年の夏のパパのコンサートのパンフレット。ちゃんとサインしてある。
そう言えば……守谷さん母娘は、パパの大ファンだって、自分で言ってたよね。
「ダメだって、まゆちゃん……またそんな……」
「だって、姫ちゃんが欲しがってた物じゃない! そもそも、私はそれほど香坂誠也のファンってわけじゃないし……って、さくらちゃん、ごめん!」
流れでまゆりんにサインしちゃったのは知ってたけど……。
パパには絶対に聞かせられない、まゆりんの告白に教室は大爆笑だ。
「鈴本さん、本当に成り行きでもらっちゃったサインだったんだ……」
「そうよぉ……だからよけいに、何で私がこんなに責められなきゃいけないの? って気になっちゃうでしょぉ。 みんな、ちっともわかってくれないし……」
「それは……まゆりん、いろいろごめん」
笑い転げながら、怒ったふりをするまゆりんに謝っておく。
まあね……私の同級生なら、本当に親子ほどに年の離れたのをアイドル視できないよね。
と言ったら、今度はパパの大ファンの守谷さんに
もう……どうしろっていうのよ!
「はいはい……世代的にも、お母様方より、子どもたちの方が普通に接しやすいのかもしれないわね」
「……実は、うらら先生って香坂誠也のファンだったりする?」
女子の質問に、うらら先生はケラケラと笑った。
「ウチはもっと複雑なの。……私には、三つ下の弟がいるんだけどね。弟が涼原ほのかのファンで、私が香坂誠也のファンっていう状況だったんだから!」
「先生、それは……」
再び教室は大爆笑。
その二人が駆け落ちしちゃったんだから、互いのファンの心境はいかに……。
私はもう、頭を抱えるしか無い。
はい……その大スキャンダルの結果、生まれたのが私です。
「香坂、出番だ! 行って、先生の弟に謝ってこい」
「なんて謝ればいいのよ! 生まれてしまって、ごめんなさいとか?」
「こらこら、変な気を回さないの。……私が香坂さんの担任をしていることさえ、弟にはナイショにしてるんだから。個人情報は守らないとね」
「悪いお姉さんだ……」
「香坂さんが卒業したら、弟にも教えてあげるわよ。さっきの不良少女写真を見せて」
「消そうよ、先生……あの写真は!」
声を上げたのは三人だけ。
あとは爆笑の渦だ。
あまりに騒がしいから、隣の教室の先生が文句を言いに来ちゃった。
この時間、他のクラスは算数の授業だもんね。
うらら先生、平謝り。あまり生徒で遊ぶからだよ~だ。
「ネットも怖いけど、現実の学校でも慎重にやらないとトラブるから、怖いのよ」
ペロっと舌を出しながら、うらら先生。
お願いだから、これ以上笑わせないで……。
でも、うらら先生凄い。
おおごとになんてすることもなく、まゆりんの事も、女子間のわだかまりも、みんな笑い話にしちゃったよ……。
夕べ、パパがメッセージをくれた通りだ。
私はこの先生と一年間、一緒に過ごすのが、何だかとても楽しみになってきた。
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