第4話 いちばん最近、受けた模試は?
授業のあと、
最初に会ったとき、教子さんは一人で農学部のキャンパスのベンチに座っていたけれど、それはそちらのほうが人が少ないからで、学部は文学部だという。
じっさい、そこからさらに進んで文系エリアに入ると、学生たちがいっぱいいた。ごった返している、と言っていいほどいっぱいだった。
そのごった返しているエリアにあるカフェテリアで、教子さんは、自分にはソーダフロートを買い、菜津子にはミルクコーヒーをおごってくれている。
上品にソーダフロートを一口吸ってから
「どうだった? 大学の授業」
と菜津子にきいた。
「あ、おもしろかったです!」
その答えでいいのか、と思ったけど。
思ったときには、遅かった。
それにたしかにおもしろかった。
高校の授業よりも、ずっと。
教子さんが上機嫌で言う。
「じゃあ、うちの大学来ればいいじゃない!
聖菜先生というのは、さっき、教子さんに連れて行かれた「ゼミ」という種類の授業の先生だった。
「い、いや……」
菜津子はうつむいてしまう。
その授業で見学者の菜津子は特別扱いではなかった。
七人の学生がいる授業に菜津子が八人めとして加わり、二チームに分かれる。テキストというのを読んで、一チームのメンバーが疑問を
菜津子が付箋に書いた解答がその聖菜先生の目に留まり、
でも、それはたまたまだし、だいいち、授業に出てみたから入学できるほど、超難関大学は甘くないのでは?
教子さんは、気取ったように体を動かすと、またソーダフロートをストローで吸った。それから、ぱたぱたぱたっと自分のバッグを開き、タブレットを引っぱり出す。
教子さんはあんまり活発な印象はなかったけど、その体は「小回りがきく」という感じでよく動く。
「
倉野菜津子。教子さんは「倉野さん」と呼んでくれる。
菜津子からは「教子さん」。
さっき、教室でもみんなから「教子」と呼ばれていた。
「
菜津子は先回りして言った。
「
「六月にやったやつだよね? うーん、っと」
教子さんはタブレットの表面を叩いている。さっき使っていたノートパソコンとは別のものだ。
「何の科目で何点取ったか、覚えてる?」
言って、軽く菜津子の顔を見る。
菜津子は、正確には覚えていなかったけど、だいたいの点数を言った。
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