六話
掘り炬燵式の、ゆったりとした和風テイストの強い居酒屋の個室。晴乃達四人の対面に、四人の女の子が座っていた。
「皆、敏也の友達なの?」
宏和が女の子四人を見渡す。
「友達は私だけで、三人はみんな会社の同期だよ」
一番左に座る女の子、確か茜という名前だった、が笑顔で応える。
「なるほど。で、皆さん何やってるんだっけ?」
「何やってるんだっけ? って随分イキナリだな」
晴乃が割り込み、窘めた。啓吾も苦笑いを浮かべていたが、ここで多少の笑いが起き、場の雰囲気が幾分和んだようだった。
「皆さん、薬剤師だよね?」
敏也が女性陣の職種を確認するように、茜の方に顔を向けた。
「そうそう。MRの子も一人居るけど」
茜は、一番奥に座る女の子を指差した。晴乃達から向かって、一番右奥に座っている女の子だ。
「MRって何?」
すかさず宏和が右端の子に質問する。
「営業。医薬品メーカーの」
と明るくハスキーな声で右端の子が答えた。
ここで個室の扉を叩く音が鳴り、失礼致します、と部屋の扉が開けられた。このお店特有のユニフォームなのか、黒い法被のようなものを来た男性店員が、全員分の飲み物がテーブルの上に並べていく。
店員が部屋から出て行った後、
「じゃ、とりあえず乾杯すっか」
敏也がお得意の気の利いた台詞を口にしてから、乾杯の音頭をとった。
開始後しばらくの間は、お互いの仕事や研修の話、大学時代の話で盛り上がっていたが、次第にお酒が循環してくると、砕けた話題に内容が移っていった。
「ていうか、そろそろ席替えじゃね?」
徐に宏和が誰に向かう訳でもなく、声を張り上げ挙手をした。
「賛成」
すぐに啓吾が乗っかる。女子側もまんざらではなさそうだったので、
「よし。じゃあ、席替えしよ、席替え」
と、またもや宏和は勢いよく立ちあがった。
乾杯。晴乃の隣に座った女の子がグラスを合わせてきた。彼も、
「乾杯」
と言って隣の彼女、確か京香という名前の女の子だった、に倣った。
「サワダ君て、こういうの初めてでしょ?」
京香が晴乃の目を見つめてくる。彼女の視線の闖入に、晴乃は一瞬たじろいだが、
「どうして?」
と、何とか笑顔で切り返す。が、かえってそれがぎこちなかったらしく、
「やっぱり。図星ね?」
と、逆に彼女に答えを与えてしまった。
隣からハスキーな笑い声が聞こえる。例のMRの子と、もう一人の女の子を相手に、宏和と啓吾が漫才のような会話をしていた。勿論ボケは宏和。突っ込みは啓吾だ。
「みんな、仲良いんだね」
京香が微笑みながら、グラスのビールを口に運ぶ。
「こういう飲み会、結構行くの?」
晴乃が彼女に訊ねる。
「まあ、それなり・・・かな」
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