第3話

結局、小鳥は次の日もその次の日も木に伝えることはしなかった。いや、できなかった。今日は言おうと決めていても、木を見ると、言えなくなってしまった。そのうち小鳥はあの話は、ひょっとすると自分の聞き間違いではないかと思うようになった。それにこの木のことを言っているわけではないだろうと思うようにした。それなのに小鳥にはまだ、鉛を持っているような感覚があった。


その日は突然だった。小鳥が木のところへ行くと、木は倒されていた。小鳥は最初、見間違いかと思ったがそんなはずはなかった。紛れもなくあの優しく大きな木だった。小鳥は一目散に飛んでいった。

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

小鳥は必死に謝った。本当はきっと、心配の声をかけるべきなのだろうが、そんなことはこの時の小鳥の頭の中にはなかった。

ただただ

「ごめんなさい!」

と謝った。

すると木が

「どうして謝るんだい?」

といつもの優しい口調で尋ねてきた。小鳥はもう限界だった。

「ごめんなさい!本当は知っていたの。あなたが切られてしまうってこと。でも、僕は嘘をついた。隠し事をしていた。あなたと約束したのに!」

小鳥は無我夢中で言った。木はそんな小鳥の言葉を静かに聞いていた。そして、言った。

「確かに君は私に嘘をついたかもしれない。隠し事をしていたかもしれない。でも、それは私を傷つけないためだろう?

 いつか、君が私に聞いたね。どうして嘘をつくのだろう、と。確かに嘘は良くないこともある。しかし、誰かを思う嘘は悪いものではない。それは思いやりに溢れた素敵な言葉だと、私は思う。」

小鳥は泣いた。たくさん泣いた。木の葉っぱは暖かくて、小鳥の鉛のような冷たさも溶かしていった。

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