第7話 帰還せし者は赤腕のプレデター...(其の2)
圧倒的技量によって圧倒されるアローン。
致命傷こそ避けれど少しずつだが小さなダメージが蓄積してきている。
といってもそこは治癒魔法でなんとかできる。問題はい相手に攻撃が入っていないことである。このまま耐久していけばいずれどちらかの体力が尽きるだろうが、動力変換をしているアローンのほうが先に倒れるのは自明。
とりあえず、逃げ腰にならず俺も攻撃に転じるしかない。
「不絶光速、超感覚。」
まずは速さで勝負。
相手は不絶光速を使ってこなかったということはおそらく高速しか使ってこないと踏んでの勝負。だが、
「不絶光速、超感覚でござる。」
そう甘くはないようだ。
常人が見ても何も理解できないほどの速度戦う2人。
常人から見れば差がないように思える。
—ステータスでは勝っているのにどうして追いつかれる?
実際はステータスが上であるはずのアローンが追われる側となっている。
「走り方でござるよ。」
?!この状況で話しかけてくるだと?
「拙者はククリ刀と忍者刀、貴殿は大剣と大鎌、走る体勢を考えると拙者の方が早く走ることができのは当たり前でござる。」
この余裕、速さ勝負は止めか?いや、ここは速さ勝負を止め、カウンター狙いに見せ移行したと見せかけておき、そこからの光速での一閃を狙おう。虚を突け。万能型に万能型で挑む必要などない。要所要所で最適解を使え!
「カウンター・カウンタースタート。」
死神がカウンターの構えを取ったと同時に距離を取る忍者。
「それならこれはどうでござるか?」
そうすると、忍者の頭上に大量の魔法陣が出現する。
「カウンターというのは近接で返してこそでござる。拙者の魔法いつまで耐えれるでござるか?」
瞬間大量の炎弾、水弾、雷弾、風刃、氷柱などがアローンを襲う。
カウンターのダメージスタックはどんどん増えていくものの当てる先がない。
「クソ、そろそろ限界値か...。」
死神は耐えきれなくなったのか
「カウンター・カウンターエンド...インパクト。」
カウンターを止め衝撃波を飛ばすも、忍者の魔弾に埋もれていく。
「単調な戦い方は相変わらずだな、俺は。頭を使え。」
忍者が魔法の使用をしながらついに近接攻撃も並行して始める。
自分の魔弾に当たらないようにしつつ死神の懐に忍び込み確実に一撃を狙う。護と疾に振ることでなんとか耐え忍んでいるが、本当に厳しい。
俺が勝るのは自損覚悟の技、だがそれを使ってはこの先も同じ手しか使えない。
だから、こうする。攻と護と疾へ振り、
「エストエクスプロ―ジョン。」
この闘技場の全体を覆うほどの爆発かと勘違いさせる詠唱、魔法発動時の魔法陣、誰もが自損覚悟の攻撃かと考えた。
「貴殿!正気でござるか?!」
忍者はスキルや魔法を使い防御態勢を取る。そして死神を中心に大爆発が...
起こらない。
魔力空っぽで詠唱だけ。魔法陣も出現するが起動だけができない。
刹那死神は忍者へ詰め寄る。
「光速、アンチディフェンス。」
防御貫通と光速の乗った攻撃、忍者の胴体にしっかりと決まるが、
ガキンッ
ククリ刀と忍者刀で致命傷は避けられる。
「魔法陣を出しておいて発動しないなぞ初見でござるよ。」
すると華麗にアローンから距離を取り回復を魔法を使い、戦況は仕切り直しに。
あと一歩だった死神。
「こんな勝負久しぶりでござるよ。」
忍者の方はとても愉快な表情をしているが、死神の表情は死んでいる。
だが勝算は見えた、ステータス調整を間違えれば一巻の終わり。魔力ゼロと魔力極振り、攻、護、疾、魔のバランス型の三つで魔法防御の選択を三つに分ける。躱すか、防ぐか、そもそも来ないのか。
再スタートを切る死神。
大爆発がおこったり小さな爆発が起こったり何も起こらなかったり、大量の魔法陣が出現するもどれがどれかの判別などつかない。忍者にも乱れが出てきた。
ここで満を持して死神の武器が合体し大剣鎌へと変貌する。さらに、レイジも発動。
それに対応して、忍者もレイジを発動し隠密レベルと速度を上げてくる。
死神の魔法に翻弄され続ける忍者、ついに忍者も魔法の乱打を始める。
が、ステータス調整によるかく乱は不可能。死神の『アンチ』によってすべて消される。
死神の脳のリソースは限界ギリギリ、これ以上の小細工は不可能。
忍者も回復する暇がないため下手な攻撃は喰らえまいと決定打を打てずにいる。
そして、戦況は動き出す。
死神がついに忍者に攻撃を仕掛ける。一か八かの超光速。
一気に詰め寄り、頭上から大剣鎌を振り下ろす、そして何かをブツブツと呟く。振りかぶった大剣鎌は忍者を捉えることはできず地面へ深く突き刺さる。
「決着を急いだでござるな、これで王手でござる。」
地面に突き刺さった大剣鎌を抜こうとする死神を忍者の刃が捉える。
ガチンッ
しかし刃は通らず、
「カウンター・カウンターエンド。インパクトォ!!」
まさかのカウンターが忍者を襲う。
完全な攻撃体制から防御体制へ切り替えようとしたものの追いつかず、
ドガァァァン
と吹き飛ばされる忍者、すかさず高速で詰め寄り大剣鎌を首にかける、
「チェックメイトだ。」
「...。」
と、今にも死にそうな状況でも無反応の忍者。
「カゲロウ、反応無し。よって勝者はアローン!!」
どうやら死神の勝ちなようだ。
大ブーイングとその中でかすかに聞こえる大歓喜の声。
決してアローンの勝利が嬉しいのではなく賭けに勝ったのが嬉しいのである。
「霊妙なる治癒。」
アローンはカゲロウへ治療魔法をかけた。数秒後...
「拙者はどうやら敗北したようでござるな。貴殿、天晴でござる。これならプレデターの座は譲る他ないでござるな。万能者同士の対決、地形を配慮した二戦目はなしでいいでござるよ。」
お前との戦いは疲れると言った念が沸々と感じられる。
「そうか。」
「そうでござる。」
うむうむと首を縦に振るカゲロウ。
「ただ、拙者がいつ挑んでも負けないよう努々努力は怠らないように!」
「ああ。」
カゲロウが手を差し出してくる。アローンも手を出し、硬い握手を交わした。
こうしてアローンの昇級試験は幕を閉じた。
一方とある元ハンター冒険者は...。
「わたしさぁ!せっかくハンターになれたのにさぁ!アローンとかいう造反者のせいでまたただのプロ級にさがっちゃったじゃん!どうしてくれんのさ~。」
と泣き喚いていた。
とある元キラー級冒険者も
「造反者の野郎のせいで、ハンター級に降格じゃねぇか。ふざけんなよ。」
と悪態をついていた。
協会の受付に行くと黒色の冒険者プレートと書類が用意されていた。
要約するとお前は今日からプレデター級だ、ということだった。
「赤い腕輪はについては造反者であることには変わりないので引き続き着用をお願いいたします。」
「わかった。」
そうして、迷宮より神を殺して帰還したものは赤い腕輪のプレデター級冒険者—赤腕のプレデターとなった。死神がプレデター級冒険者になったという話は四国全域に速攻で伝わった。上層部のことを非難するもの、死神が味方となったことで安心するもの、
そうして、盗賊退治へと向かう道中、
「よぉ、おっひさ~。つっても一週間ちょいぶりだけどね~。」
「兄者、オエンがプレデター級になったって聞いた瞬間バカ喜んでた。」
「そりゃあねぇ、長年の俺の計画がついに本格的に始動し始めたって感じだしね~。」
審問官なのにオエンとトューンは暇なのだろうか。
「用事はそれだけか?」
と聞いてみたところ、
「いいや、お前がこれから盗賊退治しに行くんだろう?ちょっと厄介な冒険者もそこに向かっててな、お前とはすこぶる相性が悪いと思うからまあ、頑張ってくれや!」
「要はコミュ力鍛えろってことだな。」
馬が合わないという意味での相性が悪いか、どんな奴がいるのだろうか...。
(作者の小言)
なんと私にしては珍しく第七話は其の二で終わりです。
そしてまさかの連続投稿。課題終わるまでまだまだかかりそうなのでしばらく空きますがご了承くださいまし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます